王都ケーニッヒスベルク
「あれはビギナーキラーでしたがどうしてあんなところにいたのでしょうか?」
アルベェータが呟く。
先程倒した生き物たちの死体処理は彼がテキパキと終わせてしまい、歩き始めた2人は先ほどの生き物について話し合っていた。
「おい何だよその物騒な名前は?」
「もしかしてご存じなかったのですか?先ほどからトウマはたまに常識が欠けているときがありますね」
本気で驚いたという様子に心をえぐられた斗真だが知らないことは仕方ないと割り切り聞いてみることにした。
「そこをなんとか教えてくれよ、俺が倒したビギナーキラー1頭分くらいはさ」
「いいですよ。この魔獣は正式にはホッパーカウと言うそうです。大きさに似合わない跳躍で敵を撹乱し初心者冒険者を多く殺してきたとか。」
「なるほどそれでビギナーキラーか。」
「えぇ、とは言えそれは何百年以上前の話で今では情報が出回りやられる人は多くないそうです。慣れれば討伐は簡単ですし乳もそれなりに高く売れます。一部では"臨時収乳"とか呼ばれているとも聞きました。」
「おいなんだよそのかわいそうな名前は…」
しかし、それなりの金になると言われ一文無しだということで戦果の五分の四を譲渡してもらった斗真も人のことは言えず、背中で揺れるホッパーカウの肉もとい異世界で初めての収入に対し合掌をした。
「見えてきましたよ。あれがこの国の首都にして私たちの目的地、王都ケーニッヒスベルクです。」
先ほどから差し掛かっていた舗装道の先、アルベェータの指差す先には見上げんばかりの巨壁があり等間隔で並ぶ尖塔の先に勇ましく国章のようなものがはためく。大河に繋がる幅広いお掘りに囲まれた戦う城のような見た目である。
馬車が横に何台も並列できるような大きな跳ね橋を渡ると検問所のようなものが合る。
「トウマ、ついてきて下さい。都市に入る手続きをしますよ。」
「おぉ〜い待ってくれ!」
先刻まで2人で歩いていたのにそこにはごった返すような人がいて首都の栄え具合がうかがえた。
並んでいる人々を無視しアルベェータは小さな扉から城壁の内部に入り込む。
近くにいた兵士に彼が何かを見せるとその兵士は少し慌てて奥に引っ込む。一体何者なんだコイツ?と言う疑問を反芻していると厳ついヒゲを生やした隊長と呼ばれる人がやってきて何やらアルベェータと話し始めた。
出る幕は無いと思った斗真は周囲を観ながら待っていると兵士がふとこちらを向き尋ねた。
「さて、そちらの方、出入の許可が欲しいとのことですがお名前と理由を伺っても?」
「俺は橋本斗真。行く当てがないのでここで暮らしを建てたいですね。」
そう言うと隊長は目を細め訝しげに問いかける。
「なるほど結構な理由です。しかし身元を保証できるものはお待ちですか?」
怪しまれていると斗真は思った。
しかしそれも当たり前である。ここは王都で彼はその一番大きな門の責任者なのだ。
身元の分からない者をそうポンポンと入れられるわけはない。
しかし口ごもる斗真に思わぬ助け舟が出た。
「彼は僕の友人です。残念ながら身元を保証できるのは僕だけですが、それで十分じゃないですか?」
あまりに独断的な物言いである。しかし隊長はどこか納得したようでそれなら問題ありませんと通してくれた。
こうして斗真はなんとか異世界での生活の打一歩を踏み出したのであった。




