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平穏をかき乱すモノ

ゴースティ帝国とハイマート王国の緩衝地帯"大平原"。

かつてその大地の肥沃さと魔獣が少ないというあまりに好条件なこの地の覇を争い、隣接する二国が抗争を重ね多くの者がこの地で散っていった。

争いに終止符を打とうとした先王たちの約定によりこの地にはどちらの軍隊も不可侵領域となったのだが、人の手が入らなくなってなお魔獣がほとんど出ないことがこの土地がどうしてそこまで求められてきたのかを物語っている。

そんな平和の象徴たる穏やかな平原を二人の青年が歩く。

アルベェータが背筋を正しキビキビと歩くのに対しそれに続く斗真の歩みは余りにも頼りない。


「お〜〜ぃ、まだなのかよぉ。もう十キロは歩いたろ。」


「もう少しですよ。本当に後少しですから。」


2人の会話に初対面の遠慮は無くここまでの移動でそれなりの会話を重ねたことが伺えた。


(マジかよこいつ体力バケモンなんじゃないのか?さっきからずっと姿勢がシャンとしてるし。

でも優しいやつでよかった。)


(協力的でよかったですね!)


(あぁホントに…ってなんで君が!)


(私は主様の眷属なので!今主様の脳内に直接話しかけています。それより名前!名前は決めていただけましたか!?)


(あぁそれなんだが…リーブルとかどうだ?フランス語かなんかで本って意味だった気がするんだが)


(っ…!ありがとうございます!リーブル感激です!)


表情は見えないがぱぁと明るくなり喜ぶ様子が手に取るようにわかる声が届き、気に入ったならよかったと安堵した斗真はアルベェータに呼ばれていることに気付く。


「ぼーっとしていましたが大丈夫ですか?

なにか近づいて来ています。私から離れないでくださいね。」


先ほどまでの優しさの滲み出た柔和なものとは打って変わり、周囲を油断なく見回す彼の表情を見て斗真も息を呑む。

近づいてくる何かというよりは眼前の男から発せられる圧倒的なオーラ、それが先程までの平穏な草原の雰囲気を塗りつぶし闘気で埋め尽くしてしまう。

近づいてきたのは五頭の牛のような生き物だった。しかしそれは余りにも筋骨隆々で巨大、ヤギのような角を生やし、目を血走らせて走ってくる姿は心臓の弱いものを容易く震え上がらせる。

斗真も無論その一人だった。ついこの前まで現代日本でぬくぬくと暮らしていた彼にはとても耐えられるものではないのだ。


「おい!あれはヤバい、絶対ヤバい!逃げるぞ!」


そう言って肩を揺すればアルベェータはまた柔和な表情に戻りただ大丈夫だと言った。

ソレだけで何故か焦りが引いていくことを感じた斗真は


「あ〜もうどうなっても知らないからな!

ワームッ!」


そうい言って二人を守るように己が眷属を顕現する。

だがその間にも牛たちは信じられない速度で接近している。

この距離ならまだ大丈夫と思っていた斗真は言葉を失った。

先頭の一頭がその巨軀からは想像もし得ない跳躍を見せ二人に飛びかかったのだ。

ワームでは止められないそう悟った斗真は牛の体躯に己を轢き殺したトラックを重ね見、動けなくなってしまう。


だが落ちてきたのは牛の頭だけだった。

アルベェータは手すら動かしていない、そもそも彼は丸腰なのだ。

体が死んだことをやっと思い出したかのように遅れて血が噴き出す。しかしそれすら空中に留まり二人を汚すことはない。仲間のあまりにあっけない最後を見たことで牛たちの動きが止まる。

その機を逃すまいと斗真はワームを地中に這わせて牛たちを急襲する。残った4頭の内逃げ遅れた1頭を捕らえ、締め上げる。


「やったぜ。飲み込んじまえぇ!」


ワームはそのまま口を大きく開け、何度か斗真をそうしたように丸ごと飲み込んでしまった。

アルベェータはどうなったかと振り返ると3体の死体に囲まれた彼が立っており、もれなく全て首がもがれている。

圧倒的力を前に勝利の喜びをも忘れかけていた斗真だったが


「何とか勝てましたね」


と笑顔で言われ。破顔して頷き会った。




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