はじめましての異世界人
何もない空中にに突然"口"が出現し、段々大きくなってボトリと何かを吐き出した。
塊はうめき声を上げ立ち上がる。
その塊、斗真は魔力を出しすぎて倒れ伏した後のことを思い返してみた。
(「魔力をワームに通してあげればそれなりに戦闘できるはずです。先ほどの地点に戻すので自由に探索なさってくださいね!
後、私の名前!考えておいください、ワームばかりずるいのです!」
と一息でまくし立てた少女に答えようとした斗真は返事も待たれずワームに食われ先ほどの草原に落とされたのだった。)
「やっぱりあの娘いろいろと雑だなぁ。
でも名前かぁ、どうしようか。
こいつは…ブックワームとでも名付けるとして」
自分を吐き出したワームを見ると、気持ちよさそうに草の上を這っていた。
まぁぼちぼち考えようと思い直し斗真は探索に意識を入れ替えた。
しかし彼に探索に使えそうな能力はない。
「まぁ取り敢えず歩くか!」
しかし当てもなく歩くのは手持ちぶたさなので、魔法の練習をしながら歩くことにする。
こうして人を食い殺せそうな虫を引き連れて服に血をたっぷりと付け鼻歌交じりで散歩する不審者が完成したのである。
そうして2キロほど歩き回って疲れ果た頃遂に道のようなものにぶつかった。
「おぉ久々に人間の生活の痕跡を見たな。アスファルトとかじゃなく人がたくさん通って自然にできたみたいなものだな。」
考え込む斗真は近づいてくるものに気づいていなかった。
「あの、大丈夫ですか?」
と声をかけられ目線を向けると厚手のコートをかっちり着こなし黒髪をオールバックにまとめた爽やかイケメンな青年が立っていた。
「おぉ〜〜ニンゲンだぁ!」
とよくわからない喜び方をする斗真に対して青年は最初の質問を繰り返す。
何を聞かれているのかと逡巡して自分の今のあまりにも不審者然とした格好を思いだし、どう説明しようかと口ごもってしまった斗真に青年は冷静に尋ねる。
「血がついていたので、ケガでもしているんじゃないかと尋ねたまでです。返り血でないことは見れば分かりますから。」
「見ればわかるってどうして?」
「魔力の波長ですね。まあ私以外に見て取れる人なんて一握りしかいませんけどね。」
優男のような見た目でかなり傲慢な返しである。しかしそこには確かな自身が滲み出、聞くものを不快にさせない。やっぱり顔だろうかとセンチな気持ちなる斗真だが初めての異世界人との出会いを無駄にしまいと気持ちを切り替える。
「心配ありがとな!俺は橋本斗真!でかい乗り物に轢かれて気を失って…気づいたら知らないところにいたんだよ!」
身振りを交えできるだけ劇的に話し、助けてと目線で訴えかけてみるが青年の気質は見た目に反して飄々としているようであまり響いた様子はない。
「私はアルベェータ マルトスです。珍しい響きの名前でしたがハイマート王国の方ではないのですか?」
「あぁ俺は日本ってとこ出身なんだ。
なぁ、初めて会ったアルベェータにこんなコト頼むのは気が引けるんだが街まで案内してくれないか?」
こんな不審者の願い自分なら怖くて聞けないなと思っていた斗真の考えに反し
「いいですよ。」
と願いはあっけなく承諾された。




