バルロ兄弟
窓から身を乗り出して斗真とアルベェータが突入すれば、中にいた二人は即座に反応した。
太っちょな方が短剣を抜きながら声を荒げる。
「おいおいおい、俺らの談笑に割って入りやがるのは何処のどいつだ?!俺達がバルロ兄弟と知っての無礼か!」
あまりの剣幕にケンカ慣れしていない斗真は面食らって一歩引いてしまう。
それに対してアルベェータは煽るような表情で前に出る。
「談笑?しょうもない悪だくみの間違いでしょう。斗真、恐れる事はありません。バーロー兄弟なんて聞いたことないですから。
所詮は弱者からカツアゲする剣幕だけの三下でしょう。」
味方である斗真でさえ若干引くレベルの口撃に煽られ慣れていないチンピラ二人が耐えられる訳がない。
「「バルロ兄弟だ!!!」」
二人できれいなハモリを決めながら短剣を抜いて襲いかかってくる。
アルベェータの口撃で調子を取り戻した斗真は油断なく魔術を顕現する。
前にいたアルベェータに太いほうが襲いかかるが、華麗なステップで迫りくる凶刃をヒョイヒョイかわしてしまう。
しかし斗真にそんな肝の座った真似はできない。
刃物を待ち自分より優に頭一つ分大きい男が自らの懐に入ってくることを防ぐため間にワームを割り込ませる。
男は右へ左へ飛びながらワームを切ろうとするが硬い外皮に弾かれしまう。
そんな攻防が何度か続き遂に疲れた男の体をワームが捉え縛り上げた。
何とか倒したという安堵で顔を伏せてしまった斗真の意識を男の大声が現実へと引き戻した。
「よそ見してんじゃねぇぞ!」
怒声を飛ばしながら拘束の甘かった腕から短剣が投げられる。
生半可な速度でない短剣が己を貫く場面を幻視し居竦んでしまった斗真を救ったのはタコ足だった。
「大丈夫ですか、トウマ君?」
斗真の目には手を差し伸べてくるその魔法の使い手たる少女に救いの女神が透けて見える。
自分を転生させてくれたのはメッチェンでは無いだろうかと思考の波に飲まれた斗真にメッチェンは不思議そうに尋ねる。
「どうしたんですか?私の顔に何かついます?」
「あぁいや別に…ありがとう!」
どう返そうか思案していた斗真は既に相手を倒したアルベェータが彼女の後ろでニヤニヤしているのを見て強引に会話を終わらせ彼に問いかける。
「さぁ…ここからは尋問だろ?」
「ええそうですねできれば平和的にしてあげましょう。」
尋問で得られた情報はあまり大したものでなかった。
金に困ったバルロ兄弟が謎の女に声をかけられギルドカードを盗んでくれば金をやると言われたというが肝心の女の外見について全く覚えていなかった。
カードの受け渡しも含め何度も会ったと言っているのにだ。
兄弟も斗真達に指摘され初めてその事に気付いたらしく首を傾げていた。
「嘘をついているようには見えませんね。」
「そうだな… そう言えば俺を吹き飛ばした魔法はお前たち力だろ?どうして使わなかったんだ?」
「あれは例の女に貰った魔道具だよ。魔力を流せば敵を追っ払えるって聞いて、あんなになるとは思わなかったが。」
そう言ってカラカラと笑う太い方の男に斗真はふつふつと怒りがこみ上げてくる。
「お前この…俺は危うく死にかけたんだぞ!つーかカード返せよ!」
と怒りをぶつける。そちらにあるとでも言うように二人は顎をしゃくる。
言ってみれば確かに小箱のようなものがあり何枚かのギルドカードが入っていた。自分のものを見つけ喜ぶ斗真の横ではまたアルベェータとバルロ兄弟の舌戦が始まる。
「これっぽっちでいくらになるんですか?」
と腰に手を当ててアルベェータが呆れたように聞くと男も挑発的に笑い返す。
「聞いて驚くなよ、5枚集めれりゃ大銀貨1枚と交換だ。」
ソレを聞いた斗真以外の2人は信じられないと息を呑んだ。
「そんな、うちのお店の一年分の全利益くらい…」
「その女ただ者ではないですね。」
と表情を硬くする2人に価値が良く分からないと言えなくなってしまった斗真も合わせて何とも言えない表情で驚くふりをする。
「まあそれはさておき取り敢えず戻ろうか?」
そう皆に言おうとした斗真の意識に少女の声が割り込む。
(主様〜!何も見つからなかったのですが……
ってもしかして決着ついちゃった感じですか?)
(まぁ、そうだね)
(ええぇ〜〜〜!)
なんとも間抜けな叫びを聞いて苦笑する斗真を見て2人は首を傾げるのだった。




