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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第十章 冬休み

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京都からやってきた女


「京都大学ってあの京大のこと? 京都芸術大学じゃなくて……?」


 目の前のテレビに映る俳優を指差して「受けえ」と言い続けるお姉ちゃんを見て、俺は納得できなかった。

 

「何を言ってんの? 藍ちゃん、お姉ちゃんは間違いなく京都大学の法学部出身だよ」

「えぇ……見えない」

「まあ、そうだよね。お姉ちゃんが入りたくて目指したわけじゃないから」


 と優子ちゃんは珍しく暗い顔をして、視線を畳に落とす。

 なんか暗い過去でも聞いたのかな。


「ひょっとして、就職先のためとか?」


 俺がそう言うと、急に優子ちゃんの顔がパーッと明るくなる。


「そうなの! お姉ちゃんはずっと前から夢があってね。そのために京都大学を卒業したんだよ!」

「へぇ~ じゃあ今は福岡に帰って来て、そのお仕事をやってるの?」

「うん、毎日楽しそうだよ」

「ちなみにどこで働いてるの?」

「えっとね。今は”アニメ●ト”と”メ●ンブックス”の掛け持ちだよ」


 俺は思わず耳を疑った。


「ごめん、もう一回言って。よく聞こえなかった……」

「藍ちゃんたら、ちゃんと聞いてよ。お姉ちゃんが今働いているのは、アニメ●トとメ●ンブックスのバイト掛け持ちだってば」

「え? その二つに京都大学の知識がいる……?」


  ※


 その後、俺はなぜお姉ちゃんが約8年間も遠く離れた京都で勉強していたか。理由を聞かされることになった。

 なんでも随分と前からお姉ちゃんの就職先は、アニメ●トとメ●ンブックスに決まっていたらしく。

 中学生時代にお父さんとお母さんへ相談したら、大反対されたそうだ。


 当然、お姉ちゃんも夢を諦めることはできないので、お父さんと三日三晩大ゲンカしたらしい。

 お姉ちゃんの強い熱意に、お父さんも負けそうになったけど「日本で1番の大学に入って卒業したらいいだろう」と難しい条件を突きつけてきたそうだ。

 それからお姉ちゃんはすぐに京都へ向かい、高校から長いこと勉強漬けで見事、京都大学に入学して現在に至る……。


 俺はその話を聞いてさすがに同情した。


「優子ちゃんのお父さん、鬼畜すぎない? 京都大学の法学部を卒業しないと好きな仕事をさせたくないとか……」

「あはは、実はうちのお父さん。若い頃に京都大学の受験に失敗してるんだよ。だから娘に入って欲しかったんじゃない?」

「でも、お姉ちゃんが合格できたからいいけど……失敗して浪人してたらどう思う?」

「え、それは……」


 優子ちゃんが答えようとしたが、お姉ちゃんが横から遮る。


「そんなん変わらんわ。うちがなんべんでも受験するだけや」

「え? でも辛くないですか? 何年も偏差値の高い大学受験なんて……」

「全然つらないわ。大学の受験なんて創作活動に比べたら大したことない。数字で見える分、うちからしたらおままごとやわ」

「お、おままごとですか?」

「今アニメ●トとメ●ンブックスで働いているけど、新作が出る度にその作品を書いた先生たちのひらめきやら工夫、想像力に『この8年間なにしてたんや、うちは……』って思ってしまうんえ」


 そりゃ京都大学の法学部で育ったのなら、そう思うでしょうよ。

 なぜ芸術大学に行かなかったんだ?


 しかし気になるのは、今のお姉ちゃんの仕事だ。聞いた感じでは働いていると言ってもバイトの掛け持ち。

 正社員ではない、フリーターという立場だろう。

 ならば、あんなに学歴にうるさかったお父さんが黙っていないのではないか?


「あの……お姉さんって今アニメ●トとメ●ンブックスの掛け持ちじゃないですか? お父さんは反対されていないんですか?」


 俺がそう問いかけると、優子ちゃんとお姉ちゃんはお互いの顔を見て笑い声をあげる。


「ハハハッ、そんなのお父さんが反対できるわけないじゃん! 藍ちゃんてば」

「そやなぁ~ うちのおとうはんがそんなこと言えへんわなぁ」

「え? なんでですか? その仕事に反対したから、京都大学という条件を出したんじゃ……」

「せやから、うちが一発で合格したんえ。そしたら、おとうはん何も言わんようになったわぁ」

「そ、そうでしたか……すごいですね」


 確かにぐうの音も出ないな。

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