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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第十章 冬休み

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生まれつきの呪いと才能


「じゃあ、そろそろ牛丼を食いに行くべ」


 そう言うと、リーゼント頭の青年はバイクのシートに跨り、エンジンをかける。

 するとあゆみちゃんは無言で後ろに跨って、小さな手で彼の腰を掴む。


 って……俺は空気扱いか?

 このまま、彼女を行かせていいのだろうか。

 あんなに優しくて可愛い女の子だったのに、この世界ではヤンキー。いや”レディース”になってしまった。


「あゆ。飛ばすから、ちゃんと俺につかまってるべ?」

「うん」


 そうは言ってるけど、二人ともヘルメットを着用してないぞ?

 事故を起こしたら、即死だろうな……。


 このままバイクが発進したら、もう二度と彼女と会う事は無いだろう……そう思った時だった。

 あゆみちゃんがバイクを運転する彼に「用事を思い出したから、待ってて」とシートから降りる。

 デリカシーの無い彼は「小便か? 早くして来いよな」と笑うが、あゆみちゃんは無視して俺を睨んでいた。

 

 ゆっくりこちらに向かって歩いて来る。

 もしかして、俺と遭遇したことで学校に対する未練ができたとか?

 それなら嬉しいな。


 目の前まで来るといきなり俺の胸ぐらを掴み、彼女はドスのきいた声でこう言った。


「あんたのことだけは……死んでも許さないから!」

「え?」


 俺がその場で固まっていると、彼女は気が済んだようでまたバイクの方へ戻っていく。

 そしてリーゼント頭の彼があゆみちゃんをバイクに乗せると、旧三号線の道路へと走って行った。


「死んでも許さないって……この世で俺が一番嫌いってことだよな」


 気がつけば、熱い涙が頬を伝っていた。


 この並行世界に転生して数ヶ月経つけど、なんか俺に関わる人たち大半が不幸になっているというか……。

 不登校児だった俺が学校に通って、前世で学校に行けてた人が不登校児になってないか?

 なんて皮肉な世界なんだ。


 きっとあゆみちゃんは、もう学校に来ることはないだろう……。

 コンビニの駐車場でひとり立ち尽くしていると、隠れていた優子ちゃんが俺のもとへ駆け寄る。


「大丈夫? 藍ちゃん、鞍手(くらて)さんに何かされたの?」

「え? 特に何もされてないよ……」

「じゃあ、なんで泣いているの?」

「こ、これは……あゆみちゃんのせいじゃないよ」


 そう答えると、優子ちゃんは首を傾げていた。

 

  ※


 あれから優子ちゃんは俺に気を使って、いろんな話をしてくれた。

 ほとんどが腐女子のお姉ちゃんの話だが……。

 でも、今はそんな話を聞いているだけでも気が安らぐ。


 二人して旧三号線の歩道を歩いていると、古いラーメン屋の看板が見えてきた。

 そこで優子ちゃんは足を止めて、黄色い看板を指差す。


「ここだよ」

「え? このラーメン屋?」

「そうじゃなくて、この坂道を登ったところが私ん家じゃん」

「あ、そうなの」


 ラーメン屋の前に細い坂道があり、そこを登った上に優子ちゃんの自宅があるそうだ。

 しかし、真島という場所は本当に坂道が多いな。

 この前鬼塚とイタリアンレストランへ向かう際も、傾斜のある坂道を歩かされたし。


 そんなことを考えていると、和式の豪邸が見えて来た。

 高い壁で頑丈に守られているから、中はよく見えないけど、家の下にある駐車場も3台は停められるんじゃないか?

 優子ちゃんてお嬢様だったのか。


 俺がその場で固まっていると、優子ちゃんが優しく肩を叩く。


「なに突っ立てるの? 早くお家に入ろうよ~ 何回も来た事あるでしょ」

「あ、そうだったね……」


 家の門扉をくぐると、大きな庭が見えて来た。色んな植物が育ててある。

 白い石で作られた道を奥に進むと、ようやく優子ちゃんの自宅が見えてきた。

 すごい、三階建ての家とか初めて見た……。


 驚く俺を無視して、優子ちゃんは俺の手を掴んで玄関に入る。


「もう初めてじゃないんだからぁ~ あ、この音は……お姉ちゃんが部屋にいるみたい!」


 何の音だ? 二階から、激しいロックミュージックが聞こえてくる。

 優子ちゃんに背中を押されながら、階段を無理やり登らされる。

 扉の前に”幸子(さちこ)と優子の部屋”と書かれたネームプレートがかかっていた。

 これが優子ちゃんの自室なのかな?


「じゃあ、藍ちゃん。私のお姉ちゃんを紹介するね!」

「え? あ、うん……」


 満面の笑みで優子ちゃんがドアノブを回す。その扉の先にいたのは……。


『”まかない”だぁ~!』


 懐かしい音源だと思ったら、伝説的なロックバンド”(ワイ) JAPAN(ジャパン)”の名曲だった。

 だが、俺の目の前にいるお姉さんは激しく首を上下に揺らして、白い原稿紙にインクを垂らしている。

 音楽にのっているだけかと思ったら、創作活動の真っ最中だったようだ。

 しかも、白目でペンを動かしている。


 あの同人誌は、こうやって作られていたのか……。

 常人ではできない所業だな。

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