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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第十章 冬休み

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変わり果てたあの子


 いつも通り、学校へ向かう時に利用する交差点まで来た。

 優子ちゃんと一つのマフラーを使って歩いているから、正直歩きづらかった。

 でも隣りに立つ彼女は、鼻歌交じりで嬉しそうに信号が青に変わるのを待っている。


 たまには、これぐらい良いか。

 そう思った時だった。優子ちゃんがいきなり叫び声を上げたのは。


「あぁっ!? あれって……」


 顎が外れるぐらい口を大きく開いて固まっていたから、俺は心配して彼女に尋ねてみた。


「どうしたの? なにかあった?」

「藍ちゃん、あれを見て気がつかないの!? あのバイクの近くで座ってるの、鞍手(くらて)さんだよっ!」

「え……あゆみちゃん?」


 優子ちゃんが指差す方向へ視線を向けてみる。

 俺たちが立っている信号の隣りには、細い道路を挟んだあと全国チェーンのコンビニ店がある。

 その駐車場に一台の派手なバイクが停められていた。


 車体はキラキラと輝く紫色に塗り替えられていて、見ているだけで目が痛い。

 どう考えても暴走族のバイクだろう。”15代目 真島連合”と車体にペイントされているし。

 運転手は不在なようで、バイクの下にひとりの金髪少女がうんこ座りして、タバコをふかしていた。


 

「あれがあゆみちゃん!? ウソでしょ……? 確かに最近学校を休んでいたけどさ」


 信じられないと、俺は視線を優子ちゃんの顔に戻すが、彼女は隣りからいなくなってしまった。

 さっきまで一緒にマフラーを使っていたのに……と辺りを一生懸命探していたら。

 だいぶ前に俺が鬼塚の弟、翔平くんを守った時にトラックが近くの壁へ衝突したため、大きな穴が空いたのだが……。

 そのまだ塞がっていない壁の近くに、優子ちゃんは隠れていた。


「な、なにをやってるの? そこはまだ危ないよ?」

「藍ちゃんこそ、あの鞍手さんがグレたのに怖くないの? 私たちは絶対恨まれているから、見つかったら半殺しに会うよ!」

「そんなぁ~ そこまで私たちは恨まれて……」


 いや、恨まれているな。

 鬼塚を俺に奪われたと思い込んで、嫌がらせまでしたけど。

 その惚れてる鬼塚に犯人として特定されたし、彼女のプライドはズタズタのはずだ。

 俺がこの世界に転生しなければ、彼女は今頃ちゃんと学校に通えていた……。

 じゃあ、あゆみちゃんが学校に来られなくなったのは俺のせいじゃないか?

 

「優子ちゃん、ちょっとここで待っていて。私、あゆみちゃんに声をかけてくるから」

「や、やめておきなよ! 藍ちゃんはこの間まで鞍手さんに狙われてたんでしょ?」

「それならもう大丈夫だよ。少し挨拶してくるだけだから……」


 震える優子ちゃんを残して、俺はコンビニの駐車場まで足を進める。

 バイクの前に立ったところで、変わり果てたあゆみちゃんの姿を目にすることになった。

 以前はオールバックのポニーテールが彼女のトレードマークだったのに……。

 金色に染め上げた長い髪は括ることなく、左右に垂れ流していた。しかもパーマをかけている。

 着ている服もセーラー服から、おそらく男物の派手なスカジャンを羽織っている。大きな龍の刺繍が印象的だ。

 スカートもやめて、ダボダボのジーンズを履いている。足元はなぜか健康サンダルだ、真冬なのに。


 怖い……でも、勇気を振り絞って声をかけなきゃ。

 前世じゃ毎日彼女が俺にしてくれたことだ。鬼塚のイメージ回復のためだったが。

 

「あ、あの……あゆみちゃん。鞍手さんだよね?」


 俺の声を聞いて、ようやく彼女がこちらに視線を向けてくれた。


「……」


 ただし、視線を向けてくれただけ。

 大きな瞳が可愛かったのに、もう彼女の目には生気がない。

 心ここにあらずといった顔だ。


「最近、学校に来られてないから分からないかな? 私だよ、同じクラスの水巻 藍」

「……」


 黙って俺の話は聞いているようだが、返答が無い。

 口を開いて出てくるのは、タバコの白い煙だけ。

 これって、シカトされてる?


「あゆみちゃん……色々とあったけど、また学校に来ない? みんな心配しているよ?」

「……」


 返されるのは、臭くて目に染みる白い煙だけだ。

 一体、どうしたんだ? あゆみちゃん。

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