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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第一章 転生

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校則違反とポニーテール


「藍ちゃん? 一体どうしたの? 私を忘れるなんて……しばらく学校を休んでたけど、まだ体調悪いの?」

「あ、いや……その」


 まさか女子中学生の中身が、中年のおっさんと入れ替わった。なんて言えないもんな。

 どうしよう?

 その場で固まっていると、後ろからお母さんが声をかけてくる。


「藍っ! あんた、まだパジャマ姿なの? ちゃんと制服を着てきなさい! 優子ちゃんを待たしているんだから」

「あ……」


 そう言えば、そうだった。

 可愛らしいキャラクターのパジャマを着たままだ。

 中学生なら、制服を着て行かなきゃ……。


 急いで階段を駆け上がる。

 自室の扉を開くと、クローゼットを開けて制服を探す。

 んと、女物だからな。どれから着たら良いんだ?


 と考えてはいるが、俺は今大きな問題を抱えている。

 それは学校という場所に、かなりの抵抗があるからだ。恐怖、トラウマしか残っていない場所。

 いくら転生したからと言って、いきなりたくさんの生徒と勉強なんて出来るのだろうか?


 でも、せっかくのやり直しが出来る人生なんだ。

 やるだけ、やってみよう。


 真っ白なワイシャツ……いや、ここは福岡だから”カッターシャツ”と表現すべきか。

 袖に腕を通し、紺色のジャンバースカートを頭から被る。

 最後は白いリボンがついたセーラー服を着て、完成!

 じゃなかった……靴下も履かないとな。


 ドレッサーの前でくるりと回ってみる。


「おお……これが現役JCてやつか」


 前世でこんな子が、目の前を歩いていたら”おかず”にしちゃいそうだけど。

 なんでかな? 転生したせいか、何も思わない。

 だって自分自身だし……可愛い女の子とは思えるけど、それ以上の感情がわかない。

 あれ? これって性自認まで女体化したってこと?


 そんなことを考えていたら、一階からお母さんの声が聞こえてきた。


『あ~い! 早く降りて来なさい!』


「ヤベッ」


 机の上に置いてあった黒いカバンを手に取ると、急いで一階へと駆け下りる。


「ご、ごめん……優子ちゃん」


 久しぶりに若い女の子と話して、めっちゃ緊張する。


「いいよ。私も藍ちゃんと一緒に学校へ行かないと、友達いなくてつまらないし」

「そう、なんだ……」


 かなり仲が良いんだな、俺とこの子って。

 玄関に置いてあった白くてダサいスニーカーを手に取ると、その場で履いて見る。

 よし、これで準備OKだな。それにしても、こうして隣りに並んで立って見ると、優子ちゃんとの身長差がすごいな。


「藍ちゃん、その髪で学校へ行くの?」

 

 優子ちゃんに指をさされるが、何を言いたいのかさっぱりだ。


「え? 髪ってなんのこと?」

「だって、そのままじゃ……校則違反で怒られるし、反省文かもしれないよ」

「は……?」


 玄関の壁にかけられていた鏡で、自身の顔を見つめてみるが、特に問題なし。

 普通に可愛い女子中学生だが?


「藍! 優子ちゃんの言う通りだよ! これで髪を括りなさい」


 と母さんが持って来たのは、茶色のヘアゴムだ。

 

 あ、そっか。髪型のことか。

 普通に長い髪を肩に下していたから、校則違反だって言うのか。

 なるほど、中学校は行ってないし知らなかった。

 とりあえず、人生初のポニーテールといきますか。

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