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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第六章 いじめの解決法

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繰り返しを終わらせたい


 一日中、ずっと考えていた。

 それは隣りに座っている鬼塚のことだ。慣れない左手で悪戦苦闘しながら、ノートを取っている。

 この腕が折れていなかったら、俺が突っ走ることもなく、あんな大きな問題にならなかったんじゃないかって……。


 でも逆に彼の右腕が事故で折れていなかったら、バスケ部を辞めさせられた天ケ瀬(あまがせ)先輩が今も鬼塚をいじめていただろう。

 なら、仕方なかった……。そんな一言で片付けても良いのだろうか?

 俺が天ケ瀬先輩と揉めていた時、鬼塚と”元同級生”の3年生たちが助けに来てくれた。

 あまり覚えていないけど大乱闘になる前、3年生の先輩たちは天ケ瀬先輩の顔を見てニヤついていた。

 確か「久しぶり、天ケ瀬さん」とか嫌味な言い方をしていた気がする。


 2年生の教室でも、彼のことは天ケ瀬くんじゃなくて、さん呼びしていた。

 元同級生からは下級生扱い、でも今の同級生からは上級生扱いされている。

 いじめは犯罪。だからやり返すのは正当防衛……でも、天ケ瀬先輩にも何かいじめをやってしまう原因があったのではないか? と考えてしまう。

 俺が彼のような立場だったら、居場所が無くて不登校だろうな。


 

 鬼塚は「天ケ瀬のことは放っておけ。もう近づくな」と言っていたが……。

 俺が先輩へ放った「鬼塚の腕を折った」という言葉だけは謝りたい。

 確かに彼やその取り巻きが鬼塚に対して、毎日のように繰り返していたいじめは許せない。

 でも、それ以上に俺の勘違いも天ケ瀬先輩を退部へと追いやってしまった原因だと思う。


  ※


 放課後、優子ちゃんには「また数学の先生から呼ばれている」とウソをついて、先に帰ってもらった。

 俺はそのまま職員室へ向かい、バスケ部の顧問を務めている男性教師を探す。

 あまり知らない先生だが、今ならすぐに見つけられる。

 頭が丸坊主だから。


 先生に声をかけると鋭い目つきで睨まれる。


「あ? お前、どこのクラス?」

「え、えっと……1年7組の水巻 藍です」

「7組? なんのようだ?」


 ここで俺は返答に困った。

 バスケ部のマネージャーでもない俺がいきなり「天ケ瀬先輩の住所を教えてください」じゃ、不審者すぎるもんな。


「えっとですね。この前バスケ部の天ケ瀬先輩が、私の生徒手帳を拾ってくれたらしいんですけど……」


 先生は天ケ瀬という名前に、敏感になっているようだ。眉間に皺を寄せる。


「あの天ケ瀬がか!?」

「はい、それで貰いに行こうとしたら、謹慎と聞いて。私としては早めに貰いに行きたいので……」

「それで住所を知りたいのか?」

「あ、そうなんですぅ~」


 と笑って嘘をつく。

 坊主頭の先生は近くにあったメモ紙を一枚取ると、ボールペンで雑に住所を書いてくれた。


「水巻だったな。お前もあいつにはあまり関わらない方がいいぞ」

「……」


 それに関してだけは、何も言いたくなかった。


  ※


 制服で歩くのは、どうも目立つ気がするので。

 一旦、家で私服に着替えてから、メモ紙に書かれた住所へ向かうことにした。


 天ヶ瀬先輩の住んでいる家は、閑静な住宅街にあった。

 俺たちの真島中学校からすぐ近くにある坂道を登ったところ。

 どこも大きくて広い2階建ての一戸建てばかり。お金持ちが建てたんだろうな。


 インターホンの前に立ってみたが、ベルを鳴らす勇気が出ない。

 つい、この前泣きながら先輩と言い合いになったばかりだもんな……。

 でもここで何もしないのは、きっと間違っている。

 人差し指を震わせながら、インターホンを鳴らした。

 すると家の中から出て来たのは、若い女性だ。


 門扉越しに俺の顔をギロッと睨み、上から下まで見つめる。

 なんか俺の着ている服が良くなかったのかな?

 寒いからダウンとチェック柄のロングスカートを着てみたのだが……。


「ねぇ。あんた、誰?」

 

 なんて冷たい声なんだ。

 ひょっとして、先輩のお姉さんかな?

 髪色もかなり明るいし。


「あ、私。同じ真島(まじま)中学校で1年の水巻 藍って言います。先日のバスケ部でのことで謝りたくて……天ヶ瀬先輩はいらっしゃいますか?」

「なんだ……そっちの方ね」

「へ?」

「別にあんたは知らなくていいよ。ちょっと待ってて」


 そう言うと、その女性は家の中に戻っていった。

 一体、どんな家族構成をしているのだろう?

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