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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第六章 いじめの解決法

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連帯責任


 鬼塚の折れた腕を見て、堪えきれなくなった俺は単身乗り込んだが……何も出来ずに終わってしまった。

 結局、被害者である鬼塚が3年生の先輩を連れて来てくれてたから、俺はどうにかなったけど。


 元々、天ヶ瀬(あまがせ)先輩と今回助けに来てくれた元バスケ部の先輩たちは、同級生だった。

 それもあって、先輩のプライドはズタズタになり、我を忘れて大乱闘の騒ぎになってしまった。

 あんなに暴れたら、そりゃ先生たちから「何が原因だ?」と理由を問われる。

 しかし、誰も理由を話さない。

 プライドが邪魔しているのだろう。

 

 事件から数日後、担任教師の”ねーちゃん”先生が俺ひとりを職員室へ来るように言われ。

「誰も今回のことを話してくれないのよ。水巻、あんた何か知らない?」

 と言われたが、周りに中年の上司らしき男性教師が何人も俺を囲んで話を聞いている。


 仕方なく、俺は知っていることを全て先生へ話すことにした。

 

 ~一週間後~


 俺がバスケ部で起きているいじめを担任の教師に話したことで、先生たちの間でも話し合いが行われたようだ。

 とりあえず、今回ケンカを起こした天ヶ瀬先輩と元バスケ部の先輩たちは、全員2週間の謹慎処分が言い渡され……。

 教師たちの間で一番、問題になっていたことだが、それは「どこでいじめが起きていたか?」らしい。


 クラス内で起きたいじめならば、担任教師の問題になるが……。

 今回はバスケ部に所属しているメンバー内で起きた事だから、話はまた別になるそうだ。

 バスケ部の顧問をしている教師が責任者になる。

 しかし、俺が疑っていた鬼塚の折れた右腕だが、これは本人たちから聞き取りしたところ。

 本当に鬼塚が部活終わりに誤って階段から落ちてケガしたらしい。

 つまりは俺の勘違い。


 大人たちが話し合った結果。

 今回の出来事はバスケ部内で起きたトラブルとして、学校はいじめを隠蔽することにした。

 教育委員会に報告すれば、学校の評価が下がるからだとか……。

 だが、それだけでは生徒や親たちからの信頼を無くしてしまう。

 そこで行われたのが、バスケ部内での連帯責任だ。



 朝、下駄箱で上靴に履き替えていると。

 後ろから声をかけられた。


「よう、水巻」

「え? 誰?」


 そこには、坊主頭の少年が立っていた。

 褐色肌で片腕を白い三角巾で巻いている。

 この大きなブラウンの瞳、どこかで見たことあるような……。


「やっぱり、この頭じゃわかんないか」と苦笑いする少年。


「あ! ひょっとして、鬼塚?」

「そうだよ。この頭、似合わないかな?」


 と照れくさそうに笑う。

 そう言えば、クラスで噂になっていた。

 中学校である日、丸坊主にしてきた男子が複数人いると……。

 

 バスケ部内でいじめが発覚しため、顧問の教師が提案したのは、部員みんなで丸坊主にするという話だった。

 だが、生徒だけを坊主にするのは示しがつかないとして、なぜか先生自身も丸刈りにしたらしい。

 しかし、鬼塚は被害者で、今回は何も悪いことをしていない。


「なんで鬼塚まで、坊主にしたの? 先生に言われた?」


 そう言って、彼の頭を撫でてみる。

 あのツンツン頭が見られなくなった寂しさがあるのかな。


「言われてないよ! 俺が自分で決めたんだから、勘違いしないでくれよな水巻」

「うん……」


 強がる彼を見ていたら、なんだか目頭が熱くなってきた。

 

「いやだってさ。先輩や同級生もみんな坊主にしたんだぜ? 俺だけ普通の頭じゃ浮くだろ?」

「うん、そうだね……ごめん、私のせいだね」

「そんな……泣くなよ、水巻。お前のせいじゃないって……」


 彼はまだ何か言いかけていたが、これ以上彼が喋れば、俺は泣き叫んでしまいそうだ。

 鬼塚の小さな口を塞ぐため、彼を自身の大きな胸に抱き寄せる。


「んぐぐ……水巻?」

「何も出来なくて、ごめん」

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