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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第六章 いじめの解決法

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正当防衛


「いい? いじめなんてものは犯罪なんだから、黙って我慢する必要はないの! もしやられたのなら、こっちもやり返すのよ! 相手が嫌だって泣くぐらいに。これは正当防衛なんだから、そんな奴らに気を使う必要はないのよっ!」

「せ、正当防衛なのかな……そこまでやったら、過剰防衛にならない?」

「ならないよっ! お姉ちゃんだって、小学生の時にいじめられたから、学校の屋上に呼び出してボコボコにしてやったわ」


 考え方が本当に不良なんだよなぁ……。

 でも、あんな卑劣ないじめを黙って我慢する必要がないのは分かってる。

 やっぱり、力で相手を黙らせるのが一番のかな?

 そんなことがやれるなら、鬼塚もやっていると思うけど。


 ~翌日~


 朝、優子ちゃんと学校へ登校すると、いつもなら朝練終わりの鬼塚が赤いユニフォームを着て、下駄箱に現れるのだが。

 なぜか俺たちと同じ制服を着ている。

 

「よう、水巻」


 なんて苦笑いしているが、その異変に気がつかないバカはいないだろう。

 鬼塚の右腕は学ランの袖に通しておらず、白い三角巾で巻かれている。

 どう考えても、この状態は腕が折れている……いや、折られたに違いない!


「鬼塚! どうしたの、その腕!?」


 隣りに立つ優子ちゃんを無視して、俺は鬼塚の肩を掴んで揺さぶる。


「あ、これは……階段から転んで落ちちゃって。2カ月ぐらいかかるみたい。ドジだよな、ははは」

「笑いごとじゃない!」


 俺の怒鳴り声が、下駄箱に響き渡る。

 優子ちゃんも俺のただならぬ気配にたじろいでしまう。


「み、水巻? 本当に転んだんだって。バスケ部とか、天ケ瀬(あまがせ)は関係ないって……」

「ある! 絶対、あるに決まっている! 今の私にウソをつかないで! すごく怒っているんだから!」

「その……本当に事故なんだよ。確かにバスケ部のみんなと階段付近で練習してたけど……ちょうど俺が端っこにいたから」


 と言いかけた頃には、俺の怒りは頂点に達していた。

 もう我慢できない。

 これはいじめの範疇(はんちゅう)を超えている。明らかに彼の腕をへし折ってやりたいという悪意を感じる。


 鬼塚だってわかっているはずだ。その腕じゃ、しばらくバスケットボールを手に持つことはできない。

 ここまでやられたのなら、もう耐える必要はない。

 俺の中で何かがブツンと切れる音がした。


  ※


 一度、死んだ身だ。

 何を怖がっている? 中身はアラフォーのおっさん。

 相手は14歳ぐらいのガキだ。例え力で負けても、俺には長年の知恵と経験があるじゃないか。

 やってやる。


 優子ちゃんにカバンを渡すと、俺は自分の教室に上がることはなく、渡り廊下へ向かった。

 一年生の教室ではなく、二年生と三年生の教室がある反対側の棟へ向かうためだ。

 頭に血がのぼっているため、今の俺は歯止めがきかない。

 このまま、殴り込みにいってやる!


 二年生の教室は、二階にあることだけは知っていたのでとりあえず目に入った教室の扉を開けて見る。

 すると、見慣れない女子を見た上級生が驚く。


「うわっ……君、誰?」


 眼鏡をかけた真面目そうな男子生徒だ。

 この人なら、きっと俺の質問に答えてくれるかもしれない。


「あの! 天ヶ瀬 ウィリアムていう先輩が二年生にいるみたいなんですけど。この教室にいますか!?」

「え……あ、天ヶ瀬さんか。あの人なら、たぶん1組だったと思うよ」

「どうも! ありがとうございます!」


 お礼を言いながらも、勢いよく扉を閉めて、1組に向かう。

 ただ、この先どうなるか、俺もわからない……。でも今何もしないのは、違うと思う。

 このままでは、鬼塚の命さえ危ぶまれている。そう感じているから。

 きっと俺の選択は正しいと信じたい。

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