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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第六章 いじめの解決法

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問題は後回し


 結局、鬼塚への”水攻め”は止めることが出来なかった。

 たぶんあれは、バスケ部の朝練が終わったあとのことなんだろう。

 いじめの主犯である天ヶ瀬(あまがせ)先輩を含めたみんな、同じユニフォームを着ていたから……。


 つまりバスケ部内で行われている、いじめということにもなるのか。

 顧問の教師はなにをやっているんだ? このままじゃ、鬼塚が死んでしまう。

 いじめが行われている事実を知っているのに、黙って見ている……こんなの前世の俺が見たら、どう思う?

 被害者からすれば、傍観者さえも加害者と同等の罪だ。

 でも、非力な俺が何をすれば、この状態を良く出来るというのだ。


  ※


 朝礼が終わっても、鬼塚がなかなか教室に入ってくることはなかった。

 きっと、まだ天ヶ瀬先輩に可愛がられているのだろう……。

 

 担任の”ねーちゃん”先生が、俺に声をかける。


「ねぇ、水巻さ。鬼塚を見てない?」

「あ、あの鬼塚……鬼塚くんなら、さっき中庭で見ましたけど」

「そっか。じゃあ、あんたさ。鬼塚のことよろしく頼むよ~」


 そう言って、俺の肩をバシバシ叩く先生。

 一体、何が言いたいんだ?


「え? なんのことですか?」

「もう~ しらばっくれなくても良いって! この前、”マリンワールド”で見たよ~ 二人とも仲良さそうだったじゃん!」

「なっ!?」


 ヤベッ、先生にあの場を見られていたのか。


「先生もさ。鬼塚のことはなんとなく、知っているから。何かあったら教えてね」


 そう言うと、ウインクしてみる先生。

 これは……なんとなく、いじめのことを把握しているが、証拠が無いってことなのか。

 だったら、すぐにでも俺が先生に今から……。


「すみません! 遅れました!」


 と先生に相談しようと思ったら、その本人が教室の扉を勢いよく開ける。

 なぜか体操服姿で。つまり半袖半ズボンというわけだ。

 ユニフォームはずぶ濡れだから、仕方ないけど。

 制服はどうしたんだ?


 鬼塚に気がついた、ねーちゃん先生はその姿を見て驚く。


「あ、鬼塚。あんた何で体操服なの?」

「それはその……制服をベランダで干していたら、雨でびしょ濡れにさせてしまって」

「しっかりしてよね? バスケ部の先生から聞いているよ。一年生の中じゃかなり期待されてるんでしょ?」

「はいっ! 俺も期待に応えたいと思ってます!」


 威勢だけはあるんだけどな……。

 どうせ、さっきの制服がびしょ濡れになったものも彼が考えた嘘。

 きっと天ヶ瀬先輩か、その取り巻きが制服を着られないようにしたのだろう。


 彼らのやっていることは嫌がらせのレベルを超えている。

 しかし、バスケ部が絡んでいるとなると……目的は鬼塚をバスケ部から追放したいのか?


  ※


 寒いのに一日隣りで、半袖半ズボンの彼が一生懸命、授業を受けている姿はとても見ていて辛かった。

 それでも、鬼塚はいじめのことを「先生たちに黙っていて欲しい」と俺に頼む。

 全てはバスケのため。あと半年したら終わるからと……。


 だが、そのあとも鬼塚は、授業以外の時間になると、天ヶ瀬先輩たちから必要に狙われていた。

 体操服を着ていたのが、ムカついたのか。奴らは鬼塚をブリーフ一枚にさせて廊下を歩かせていた。

 彼の着ていた体操服は取り巻きの奴らが持ち去り、どこかに隠している。

 普段は反抗する鬼塚もこれには恥ずかしさから黙り込んでいた。


 なんて卑劣な……俺もさすがにかわいそうに思い、彼に声をかけることにしたが。


「鬼塚、大丈夫?」

「ごめん……今は話しかけないでくれ」


 そう言って俺に背を向ける。

 なんて弱弱しい声なんだ……かつて前世で俺をいじめていた彼の姿はどこへ行った?

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