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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第四章 大嫌いなあいつとデート

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痛恨のミス


 それぞれお土産も買ったし、水族館を出て帰ることになった。

 と言っても、行きと同じく。鬼塚が運転する自転車の後ろに座らないといけない……。

 正直、尻が痛いから嫌なんだよなぁ。


 駐輪場に着いて、鬼塚が自身の自転車を見つけると「ああっ!」と大声で叫ぶ。

 一体何をそんなに驚いているのか、本人に聞いてみたら。


「悪い、水巻。この自転車、後輪がパンクしてるわ……」

「え? じゃあ自転車に乗って帰れないってこと?」

「本当にごめん。俺が交通費をケチったから……」


 つまり、このマリンワールドから徒歩で帰れってことだよな?

 マジで苦行だ。

 自転車で片道1時間近くかかったから、歩いて帰ればその倍はかかる。

 

  ※


「水巻ぃ~? 大丈夫か、ちょっと休んでもいいけど」

「はぁはぁ……いや、まだ大丈夫。もうちょっと歩こうよ」


 水族館を出てまだ20分程度だが、この海ノ中道(うみのなかみち)という道路は地味にしんどい。

 緩やかな坂道を歩いているだけと言うのに、疲労感が半端ない。

 唯一の救いは、付近の海岸から流れてくる潮風が気持ち良いってことだ。

 

 俺の前を数歩先にパンクした自転車を押して歩く、鬼塚の背中が見える。

 普段から鍛えているというだけあって、体力はかなりあるようだ。

 しばらく歩道を歩いていると、汗だくになる俺とは違い、隣りの車道を走る車を見かけると。

 車内では軽快な音楽と共に、若者たちが楽しそうに踊っている。片手にジュースを持って……。


「のど、乾いたなぁ……」


 俺がそう呟くと、前を歩いていた鬼塚が「休憩にしよう」と提案してきた。

 休憩すると言っても、歩道の隅に自転車を置いて、アスファルトの上に腰を下ろすだけ。

 

 持参してきたハンカチで、額に流れる汗を拭く。

 

「はぁ……秋だってのに、あついなぁ~」


 寒いかもしれないと羽織ってきたカーディガンは、もう脱いで腰に巻いている。


「本当に悪い。水巻、俺のせいで……」

「別にいいよ……わざとパンクさせたわけじゃないし。ハプニングでしょ?」

「そうだけどさ。あ、そういえば水筒にお茶が少し残っていたと思うんだ! 飲むか?」

「え、マジ!? 飲む飲む!」


 この時ばかりは、鬼塚が天使に見えてしまった。

 自転車の前かごからナップサックを取り出すと、中からキャラものの水筒を取り出す。

 そして、コップにお茶を注ぐと俺に渡してくれる……はずだった。

 

「なんだこれ……?」

 

 お茶を俺へ手渡す前に、鬼塚はある物が地面に落ちていることに気がつく。

 よほど気になるようで彼は、地面に落ちていたそれを手に取ってみる。

 そこでようやく、俺もその物体に気がつく。


 ヤベッ!

 朝、お姉ちゃんが俺に渡してくれたコンドームだ……。

 さっき地面に座ろうとした時、カーディガンのポケットから落ちたんだ。

 このままじゃ、鬼塚が俺に変な期待をしてしまうんじゃないか?

 嫌だ嫌だ! いくら身体が女の子になったと言っても、絶対痛いに決まっている!


「すごくキラキラしている……」


 いかん、かなり興味津々のようだ。

 鬼塚のことだ。女の俺がデートにコンドームを用意していたと知ったら、このままラブホ行きだろう。

 強制連行されちまう。それだけは防ぎたい。


「あ、あの……それってさ。私が落としたものなんだよねぇ。大事なものだから返してくれる?」

「え? 水巻が落としたの?」

「そうそう、うっかり落としちゃってさ」

「へぇ~ ところでさ、これって何かのお菓子だろ?」


 突拍子もない言葉に思わず、その場でずっこけそうになった。


「お、お菓子じゃないって!?」

「いや、このサイズ。飴かグミだろ? 休憩も兼ねて一緒に食べようぜ……」


 とコンドームの切り口を数ミリ開けてしまう、鬼塚。

 それを見た俺は咄嗟に立ち上がり、コンドームを奪い取る。


「こ、これは食べ物じゃないから! 食べちゃダメ!」

「え? そうなのか……じゃあ、なんに使うんだ?」

「……」


 このあと、鬼塚から質問攻めにあったが、俺は無言を貫いた。

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