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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第三章 1995年の休日

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29/84

門限は夕方の5時まで


「ねぇ、藍お姉ちゃん。ゲーム出来る? バトルして欲しいんだけど」


 と翔平くんがコントローラーを持って振り返る。


「まあ古い格ゲーは苦手だけど……」


 ブラウン管のテレビ画面に映し出されたのは、大人気アニメ”トラコンボール”の格闘ゲームだ。

 昔、兄さんと闘ったことあるけど、技を出すのが難しかったんだよなぁ。


「なに言ってんの、お姉ちゃん。これ最近出たばかりの新作だよ?」

「あ、ごめんごめん」


 いかんな、まだ25年前というアナログな時代に慣れていない。

 俺もこの時代の人々に合わせないと、正体がバレちゃいそう。



 翔平くんに言われて、しばらくバトルしているが。

 どうにも注文が多い。

「もっと本気出して」「少しは手を抜いてよ!」などなど……。

 まだまだお子ちゃまだなぁ。

 

  ※


 気がつくと、鬼塚の姿がない。なんだろ? トイレかな。

 まあいいや。ちょうどこのゲームのコツを掴めてきたところだ。

 

 ”今”の自宅には、女の子ぽいものばかりでゲーム機なんて無いし。

 ストレス発散のためにも、遊ばせてもらおっと。

 なんて考えていると、どこからか旨そうな香りが漂って来た。

 この匂いは……。

 俺より前に、翔平くんがその名前を口にする。


「あ、今夜はカレーだ!」


 そう言うと、ゲームコントローラーを床に投げ捨てて、リビングへ走り去る。

 夕飯時か? ていうか、今何時だろ?

 部屋の壁にかかっていた時計を見て驚く。


「げっ! もう5時じゃん」


 さすがに帰らないと、お母さんに殺される。

 そう思った俺は静かに立ち上がり、部屋から出る。

 玄関に置いてあった自身のスニーカーに足を通そうとした瞬間、背後から声をかけられた。


「おい、水巻。なにしてるんだよ?」

「へ? だって今から晩ごはんなんでしょ……悪いから帰ろうと思って」


 俺がそう言うと鬼塚は「プッ!」と吹き出す。

 

「ハハハッ! そんなの気にするなって! 今日はお前がいるからいつもより多めに作ったし、一緒に食っていけよ」

「そ、そうなの……? じゃあお言葉に甘えて」


 ~1時間後~


 リビングには俺の家より小さなテーブルがあり、イスは三個しかない。

 もう一個は、冷蔵庫の隣りに置かれて物置きと化している。

 何故だろう?


 俺と翔平くんが横に並んで座り、反対側の席に鬼塚が座っている。

 肝心の料理、カレーライスだがめっちゃうまい!

 もう二杯もおかわりしてしまった……。


「うわぁ~ 藍お姉ちゃんって本当に食いしん坊なんだねぇ」

「こら、翔平。女の子に失礼なことを言うな!」

「あ、ごめんなさい……」


 そのコメントは前世のお前に言って欲しかった。


「いやぁ、私って。本当に食べ物には目が無いっていうか。食べるのが大好きだから、美味しいものには素直になっちゃって……」

「別に良いことじゃん、作る側からすると嬉しい言葉だよ」


 なにをサラッと、カッコつけているんだよ。

 でもよく見たら鬼塚の目て大きいし、輝いてみえる。

 前世の記憶さえ無ければ、仲の良い友達になれそうかも?


「ところでさ、お父さんとお母さんは帰って来ないの? 私がいたら、お邪魔じゃないかなって……」


 俺がそう言った途端、二人のスプーンの動きがピタッと止まる。


「父ちゃんはもう帰って来ないよ……」


 気がつけば、翔平くんの目には大きな涙が。

 げっ! なにか地雷を踏んじゃったのかな?


「悪い、水巻。話してなかったけど。うち片親なんだ。母ちゃんはいるけど仕事が忙しくて……」

「そうなんだ……ごめん。変なこと言っちゃったね」

「いいよ。もう何年も経ってるし、どう考えても親父が悪いし」

「?」


 なんだ? 鬼塚の家庭ってこんな複雑だったか?

 前世で小学校の時、いじめの問題で鬼塚の母親にも会ったことあるけど。

 すごく態度の悪い水商売をしているママって感じだったような……。

 こいつの家庭も、あべこべ状態なのか?

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