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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第二章 それでも気になる

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お姫様抱っこ


 憎くて仕方ない男、鬼塚 良平にお姫様抱っこをされて、グラウンドから退場する俺。

 もちろん、体育の教師にも保健室へ行くことは報告してくれた。全部、鬼塚が。

 お姫様抱っこされた状態で「水巻、咳が止まらないんで、俺が連れていきます」と。

 

 もう、死にたいよ。転生して間もないけど……こんな仕打ちをされる覚えはない。

 熱くなる頬を隠すため、両手で顔を隠す。

 すると鬼塚が言う。「水巻、大丈夫か? 熱でもあんのか?」って。

 誰が望んだんだ? こんな展開。


  ※


 保健室へ入ると、ようやく床に脚を下ろしてくれた。

 グラウンドから校舎へ戻るには、長い階段もあったから、正直重たかったと思う。

 しかし、彼は平然とした顔で保健室の先生に、俺の症状を伝えている。


「あ~ 風邪じゃないと思います。ひょっとして、ぜんそくじゃないっすか?」


 と鬼塚が話したことで、思い出した。

 朝、お母さんが言っていたことを……。

 俺に「発作が起きたら、これを使え」とカバンに吸入薬を入れられたんだ。


 

「じゃあな、水巻。俺、まだ授業残ってるから、無理すんなよ」


 クソ、いじめられっ子のチビなのに。身体は頑丈なのか。


「う、うん……ありがとう」


 俺がお礼を言っても、鬼塚は無言のまま保健室を去っていった。

 残った俺は、保健室のベッドで横になる。

 

 気がつけば俺の発作は、少しずつ治まってきている。

 あれか、激しい運動をしたせいで、発作が起きたとか?

 やはりこの肉体は、虚弱体質で間違ってないのかもな。

 文字通り、か弱い女の子になっちまった……。


  ※


 保健室の先生が気を利かせて、ベッドの周りをカーテンで隠してくれた。

 体操服にブルマ姿の俺は、先ほどの光景を思い出して親指を強く嚙んでいる。

 本当は叫びたいけど、近くに先生がいるから。


 クソがっ! なんで、俺が鬼塚なんかにお姫様抱っこされるんだよ!

 あいつ、チビのくせしてこういう時は、俺を女扱いしやがって。

 でも、確かに鬼塚の腕。結構、筋肉ついてたな……。


 ベッドの上でしばらく休んでいると、保健室に誰かが入って来た。


「あの、水巻さんに制服を届けに来たんですけど……」


 この声、優子ちゃんだ。


 カーテンがゆっくりと開かれると、眼鏡をかけたブルマ姿の中学生が立っていた。

 心配そうにこちらを見つめている。


「藍ちゃん、大丈夫? 発作が出たんだよね? カバンから吸入薬を持って来たけど……」


 と白くて小さな容器を差し出す。


「あ、ありがとう……」

 

 一応、受け取ってはみるが、使い方が分からん。

 吸えばいいのか?

 でも、症状は自然と治まってしまったんだよな。


「でも、本当にビックリしたよ。藍ちゃん、ぜんそく持ちなのに……いきなり走り出すんだもん」

「そ、それは……」


 鬼塚に負けたくないから、全力で走ったとは言えないよな。


「それから制服も持って来たよ。体調が良くなったら、着替えて教室に戻ってきなよ」

「うん」

「あ、体操服の上から着るんだよ。さっきみたいなことになっちゃうよ! 女の子なんだからね!」

「はい……」


 中身は37歳のおっさんなのに、13歳の中学生に叱られるとか。


「でもさ、鬼塚くん。意外と男らしいんだね? 藍ちゃんのこと、お姫様抱っこして保健室まで連れて来るなんて……」

「うっ!」


 思い出すだけで、胸が痛む。


「ひょっとして、藍ちゃんのこと。好きだったりして?」

「ないない! それだけは絶対に無いって! 鬼塚だけはっ!」

「そんなに否定しなくても……。ていうか、呼び捨てなの?」

「……」


 また墓穴を掘ってしまった。

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