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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第二章 それでも気になる

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嬉しくない


「はぁ、はぁ……」


 俺の隣りを現役の女子中学生が、ブルマ姿で走っている。

 前世でなら、素晴らしい光景なのだけど……。

 なんでかな? あまり興奮できない。

 相手が腐女子の優子ちゃんだからかな。


 3時間目と4時間目は、2時間続けて体育なのだが。

 教師のやる気が無いのか。軽く体操をしたあとは、ずっとグラウンドを走ることになった。

 男時代の俺ならば、体重は3桁を超えていたけど。

 転生したこの身体は、かなり身軽だ。昨晩、風呂上りに体重を計ったけど、前世の半分以下。

 50キロぐらい。

 だから、マラソンするのも楽だ。


 友達の優子ちゃんがいるから、ペースを合わせているけど。

 正直、余裕で追い越せちゃう。


「ほっ、ほっ」


 しかし、こんな身体を持っているのに虚弱体質ってのが分からんな。

 そんなことを考えながら、走っていると、背後から誰かが俺を追い抜いていく。

 男のくせに、小柄で華奢な身体の少年。

 

「あ」


 その後ろ姿を見て、すぐにわかった。

 褐色の肌にツンツン頭だから、鬼塚で間違いない。

 クソっ……。そう言えば、元の世界のあいつも運動神経は良かったな。

 この世界でも追い抜かれるとか、許せん!


 本当なら、優子ちゃんと並んでゆったり走るつもりだったけど。

 鬼塚だけに追い越されるのはムカつく!

 負けてたまるか。この肉体なら、あいつにも勝てる。


「フンっ!」


 地面を力強く蹴って、全力で走り始める。

 女の子走りとか可愛いことは無視。

 とにかく鬼塚に勝つため、手をピンと伸ばして、ブンブン振って走る。

 俺がいきなり全力で走り出したので、後ろをのろのろと走る優子ちゃんが、「あっ、藍ちゃん?」と驚いていた。


 悪い、優子ちゃん。

 この世界でもあいつだけには、負けたくないんだ。

 にしても……胸が揺れて痛い。

 さすが巨乳の持ち主だ。走れば走るほど、激しく揺れて邪魔で仕方ない。


 周りを走っていた他の生徒たちも、バインバイン揺れる俺の姿を見て驚いていた。

 だが、そんなことより今は先頭を走っている鬼塚だ。

 ようやく、彼の後ろ姿が見えてきた。


 バタバタという足音が聞こえてきたのか、鬼塚が振り返る。


「え? 水巻?」


 かなり驚いてるようだ。

 そうだ、お前は負けるんだよ。か弱い女の子にな。

 今の俺なら勝てる。そしてクラスで笑い話にされて恥をかき、ずっと引きずっていろ。


「お先に……」


 そう言って、鬼塚を追い抜いた瞬間だった。

 身体に違和感を覚えたのは……。

 

「げほっ……かはっ……」


 息が出来ない。

 風邪なんか引いていないのに、咳が止まらない。

 苦しい。


「げほっ! げほっ!」


 あまりの苦しさに、走るのをやめてコースから出てしまった。

 胸に手を当てて謎の咳を抑えようとするが、一向に止まらない。

 なんなんだ? この症状は……。


 

「おい! 水巻、大丈夫か!?」


 そう声をかけてきたのは、ツンツン頭の白い体操服を着た少年。

 さっきまで先頭を走っていた鬼塚だ。

 なんで? 俺を置いていけば、ずっと一位だったのに。


「かはっ……咳が、止まらなくて……」

「え? お前、顔色悪いぞ。保健室まで連れて行ってやるよ」

「……は?」


 なんで、こんなクソ野郎に心配されてんだよ!

 どの口さげて、保健室まで連れて行くだと?

 絶対に嫌だね。優子ちゃんに連れて行ってもらうわ。


「げほっ……大丈夫。私はへい、き……」

 

 と言いかけたが、俺は次の瞬間。

 この世で最も憎い男の手によって、抱えられていた。

 つまりお姫様抱っこというやつだ。


「そんな状態じゃ、歩けないだろ? 俺は平気だから、このまま連れていくよ」


 はあぁ!?

 こいつ、なにを考えてんだ。

 まさか女体化したからって、嫌らしいことをしたいとか?

 ないない! こいつだけは絶対ないから。


「俺、じゃなくて……私、重たいし」

「は? 全然軽いけど。俺、バスケ部だし。日頃から鍛えてるから、水巻みたいな女。楽勝だね」

「……」


 クソすぎるだろ! この世界!

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