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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第二章 それでも気になる

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一番憎いもの


「だからね、藍ちゃんも鬼塚くんにあまり近寄らない方が良いと思うよ?」

「……」


 優子ちゃんの話を聞いて、なんとなく理解できた。

 散々、俺のことをいじめて笑っていた奴だ。「ざまあねぇな」と言いたいところだけど……。

 なんかこう、胸に小さな針が引っかかるような痛みを感じる。


 鬼塚がいじめられるようになった理由として。

 被害者の少年が引っ越したあと、クラスで担任の教師が問題として、加害者たちを問い詰めたところ。

 先ほどのヤンキーの取り巻きたちが鬼塚を裏切り、彼だけを犯人とした。

 そこから、いじめっ子がいじめられることになったそうだ。


 また中学へ進学したと同時に、先ほどのヤンキーも加わり、いじめは更に悪化したらしい。


  ※


 因果応報と言えば、そうなんだけど。

 やっぱり見ている側かるすると、とても気持ちが良いものではない。

 俺が美少女に転生したってのに、モテモテって訳じゃないし、嫌な過去を見せられているようだ。


 中学の勉強なんてしたことないから意味も分からず、ボーっとハゲの先生の話を聞いていると。


「はい、じゃあこの公式を解ける人いるかな?」


 と言われても、みんな黙り込む。

 こういうのは小学校と変わらないな。

 しかし、その光景を見た先生はため息をついて、俺に向かって指をさす。


「水巻、毎度で悪いな。お前なら解けるだろ?」

「いいっ!?」


 いきなり指をさされて、心臓が飛び出るかと思った。

 解けるわけないだろ……。

 震えながら、黒板に向かってゆっくり歩き出す。


 先生からチョークを渡されて、黒板に書かれた問題を読んで見るが、さっぱり分からん。

 中学生ってこんな難しいの?


「どうした、水巻。遠慮せんでいいぞ?」

「あ、いやその……」


 クソがっ! どこが美少女に転生したら、人生イージーモードなんだよ?

 ハードモードすぎるわっ!


 その時、チャイムが鳴って授業の終わりを教えてくれた。

 助かったぁ……。


「あ、終わったか。じゃあ仕方ない、宿題にしておくから、明日まで解くように……」

 

 と先生が、生徒たちに話し始めたところで、俺が黒板から離れようとしたら。


「おい、水巻。お前さ、どうかしたの?」

「え? なんのことですか……」

「お前は学年でトップの成績なんだから、こんな公式とか一瞬で解けるだろ?」

「そうでしたっけ?」


 どうやら、この世界の俺はとても成績優秀な女子らしい。

 そのおかげで、各授業の教師から指をさされることが多く、死ぬかと思った……。


  ※


 1日中、ずっと考えていた。

 それは前世で毎晩、苦しむ姿を望んでいた相手。鬼塚 良平のことだ。

 俺の頭が悪いからってのもあるけど、授業を受けても全然、頭に入らない。


 休み時間。優子ちゃんに誘われて女子トイレへ向かおうとしたら。

 男子トイレの窓から、見えてしまった。

 無理やり制服を脱がされパンツ一丁にされた褐色の少年を。


 他にも掃除の時間、廊下でほうきを使って床を掃いていると。

 校舎裏で鬼塚のカバンを使って、ヤンキーがサッカーしていた。

 当然、あいつも抵抗していたが……。他の取り巻きの奴らが動けないように押さえている。


 そんな鬼塚の姿を見ても、クラスのみんなは黙って見ているだけ。

 異常な光景だった。なかには笑って見ている生徒もいた。

 過去にいじめたから、あいつもいじめられて当然。

 だが、本当にそれで良いのだろうか?


 確かに、俺もあいつがこんな風にいじめられたら、どれだけ清々しいだろうと考えない日は無かった。

 でも今見ている光景は、過去に俺が受けたものと同じだ。

 だからこそ、見ていると自分と重ねてしまう。


 一番憎かったのが、鬼塚だったのに。

 今では、彼がいじめられている光景をあざ笑う奴が一番ムカつく。

 あれ……俺は一体何を考えているんだ?

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