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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第二章 それでも気になる

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メシウマ状態?


 目の前にいる少年は、とても背の低い男の子だった。

 あれほど恐れていた男は華奢な身体で、転生した今の俺なら、ひねりつぶすことさえ出来そう。

 元々、俺は前世でも成長が早く、13歳の頃には160センチ以上あった。


 そのデータは今も引き継いでいて、165センチという高身長な女子。

 だが、鬼塚 良平という男は、150センチも無い。

 その証拠に胸ぐらを掴んだ俺が、軽々と両手で持ち上げられるほど。


 髪型はツンツン頭だから、少しヤンチャに見えるけど……。

 前世で俺をおもちゃのように、いじめていた冷酷さは感じられない。

 逆に鬼塚の方が、睨んでいる俺を見て震えていた。


「鬼塚……」


 長年の憎しみで、俺の両手にも力が入る。

 首を締め上げた為か、鬼塚は苦しそうにしている。


「ガハッ! ちょ、水巻。いきなり……」

「何が水巻だ……お前、俺にずっとなにをやってきたか、忘れたと言うのか?」


 とまたドスのきいた声で、彼を睨んでいると。

 クラスにいた生徒たちがざわめき始めた。

 一気に周囲の視線が、俺と鬼塚に集まってしまう。

 

 ヤベッ! 前世でこいつにいじめられたからと、この世界の鬼塚に憎しみをぶつけてしまった。


「なにやってるの!? 藍ちゃん!」

 

 騒動を聞きつけた優子ちゃんが駆けつけてくる。

 彼女の顔を見て、ようやく我に戻ることが出来た。

 ゆっくりと、この世界の住人。鬼塚 良平を下ろしてあげることにした。


「み、水巻……久しぶりに登校したと思ったら、いきなりなにすんだよ?」

「えっと、その……ごめん」


 なんで、俺がこいつに謝らないといけないんだ!

 でも……今の俺は、水巻 藍という女の子だ。

 前世とは色々と違う世界、パラレルワールド。つまり元の世界とは、過去も違う可能性がある。

 だから、まだこの鬼塚 良平という少年に、憎しみを抱くのは違うのかもしれない。

 一旦、俺の怒りを抑えておくことにした。


  ※


 クラスでも一番静かな女子、水巻 藍がクラスに入った途端。

 鬼塚の胸ぐらを掴み、軽々と持ち上げたことで、教室はパニックに陥っていた。


「見たかよ? いくら鬼塚がクラスで一番チビでもさ……」

「怖~い。私、もう水巻さんに話したくない」

「ていうかさ、あの子。あんなキャラだったけ?」


 うっ……、色々と居心地が悪いな。

 だって、俺が締め上げたその少年、隣りの席なんだよ。

 優子ちゃんに言われて、仕方なく鬼塚の隣りに座っているけど。

 俺はずっと反対側の窓を見つめている。

 鬼塚の方は知らんけど。


 教室の扉が勢いよく開かれたので、担任の教師かと思ったら。

 少し背の高い学ランを着た生徒だ。

 髪の色が明るく、耳にはピアスが見える。この時代にもヤンキーっているんだな。


「おい、鬼塚。ちょっと来いよ!」

「ハァ!? なんで俺が行かないと……」


 と言いかけている際中だが、教室の中にわらわらとヤンキーの取り巻きが入って来て。

 左右から鬼塚の腕を担ぎ上げ、無理やり教室から連れて行かれた。

 一体、何だったんだ?


 すると後ろに座っていた優子ちゃんが、俺の肩を指で突いてきた。

 振り返ると、こう説明してくれた。


「藍ちゃん。もう、鬼塚くんには関わらない方が良いと思うよ?」

「え、なんで?」

「だって、鬼塚くんってヤンキーの人に狙われてるじゃん」

「それって……あいつが、いじめられているってこと?」


 マジかよっ!? メシウマ状態はこのことだ!

 ざまぁみやがれ、鬼塚の野郎。

 この世界も案外悪くないかもな。


 だが優子ちゃんの話は、それだけで終わらなかった。


 それは鬼塚がいじめられる、きっかけになった過去の話だ。

 小学生時代にひとりの男子を数年間に渡って、凄惨ないじめを繰り返し……。

 いじめが怖くなった少年は学校を休むようになり、引きこもってしまった。

 親同士の話し合いもむなしく、その子はこの土地から引っ越したそうだ。


 なんか、”その子”にすごくデジャブを感じてしまうのだが……。

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