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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第十一章 ウインターデート

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腕の見せ所


 観覧車から出て来て、すごく重たい空気が漂っていた。

 その理由は俺が先ほどのツーショット写真を購入しなかったからだ。

 あれ以来、隣りを歩く鬼塚はすっかり落ち込んでしまっている。


 なんだか自分から誘っておいて、これはさすがに悪い気がしてきた。

 本来の目的であるプリクラ撮影に行くとするかな?

 確かスペースワールドにもゲームセンターがあって、そこにプリント俱楽部があるとお姉ちゃんが行っていた。


「ねぇ、鬼塚」

「な、なんだ? 水巻」


 大きなブラウンの瞳からは生気を感じない。

 見かねた俺は、彼の細い手首を掴んで強引に引っ張る。

 

「お、おい……水巻?」

「実はさ。今日、スペースワールドに来た理由は、遊びに来たかったこともあるんだけど。もう一つあるんだ」

「なんのことだ?」

「それはね……」


 と言いかけたところで、とある場所で足が止まってしまう。

 観覧車から少し離れたところに小さな屋台がたくさん並んでいた。

 射的、バスケットボールビンゴ、輪投げ、くじ引きなど。

 

 その屋台の上に飾られていた商品に目が行く。

 カエルやコアラ、ラッキーくんのぬいぐるみなどが並べられている。

 しかし、俺が気になったのはそんな人形じゃない。


「ちゅ、チュロスが賞品なのっ!?」


 どのゲームでも、高得点を取ればチュロスが10本もらえると書いてある。

 一回のプレイ金額が100円だから、一発で決めれば膨大な量のチュロスがもらえるぞ!

 そう思った俺は一旦プリクラのことは後回しにして、屋台に挑戦することにした。

 落ち込んでいる鬼塚を放置して。


 ~20分後~


「だあぁ~! 全然ダメじゃん!」


 全ての屋台に挑戦したが、どれも見事に外れてしまった。

 これじゃ美味しいチュロスを安くゲットできないじゃないか……。

 1000円以上使っても取れなかったから、その場で落ち込んでいると近くで見ていた鬼塚が声をかけてきた。


「なあ、水巻。お前、こういうの苦手なんだろ? 俺が試してみようか?」


 なんだ? さっきまで落ち込んでいたのに、元気になっているぞ。

 変な奴……でも、鬼塚がここまで自信に満ち溢れた顔をしているんだ。ひょっとしたら、チュロスをゲットできるかも?

 俺が「じゃあお願い」と言おうとした瞬間、屋台から少し離れた所にいたおじさんが鬼塚に向かって叫び声を上げる。


「お~い、そこの彼氏さん! こっちの方が彼女ちゃんにカッコイイところを見せられるよ~!」


 そう言うおじさんの背後には、柵に覆われたハンマーゴングが設置されていた。

 入口付近に長机があって、机の上にたくさんの賞品が並んでいる。

 さっき見たぬいぐるみたちとチュロスの10本セット。


 俺と鬼塚はおじさんに呼ばれるがまま、屋台を離れてハンマーゴングに向かう。


「このハンマーを力いっぱい振り下ろして、てっぺんの鈴を鳴らしたら、そこに並んでいる商品をひとつあげるよ。一回300円」


 あちらより高いな。

 しかし、ハンマーを使って鈴の音を鳴らせば、賞品は手に入れられる。

 さっきより簡単だ。

 財布を取り出して、俺が挑戦しようとしたその時だった。気がつけば、鬼塚がおじさんにお金を払っていた。


「水巻、さっき払った1000円分以上、俺が賞品を当ててやるよ」


 かなりやる気のようだ。自身の手の平に唾を吐いて、おじさんからハンマーを受け取る。

 小柄な鬼塚だがやはり女の身体とは違い、力は強いようだ。

 重たそうなハンマーを軽々と持ち上げると、勢いよく振り下ろす。


 すると一瞬で鉄球が空高く舞い上がり、鐘が鳴り響く。


「おお! すごいね彼氏さん、頑張ったね。賞品、一つ持ってていいよ!」


 すかさず、おじさんの発言に否定する鬼塚。


「俺はまだ彼氏じゃないです。それから、あと9回分やらせてください」


 このあと、鬼塚の快進撃により、俺はチュロスを100本も貰えることができた。


「やったぁ~! こんなにチュロス当てるなんて、鬼塚ありがとう~!」

「女の水巻じゃ、無理だったろ? 別にいいさ」

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