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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第十一章 ウインターデート

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チュロス


「いや~! 食った食った~!」


 そう言いながら、自分の腹を撫でまわす。

 カツカレーとハンバーグプレートにから揚げ定食。それにフライドポテトも全て残さず食べたので、藍ちゃんの小さなお腹が膨らんでしまった。

 まるで妊娠している人みたい。


「よく入ったな……」

「まあ、これぐらいはおやつ感覚だよね? 本当ならもっと食べたいけど、こういう所は高いし我慢だね」

「そうだったのか……やっぱり俺が弁当を作った方が良かったんじゃないか?」


  ※


 レストランを出て、しばらく二人で遊園地を歩いてみる。

 食後だし「歩きながら次に入る施設を探そう」と言う話になった。

 

「いや~ それにしても、冬休みに水巻とスペースワールドに来るとは思わなかったよ」

「え? なんで?」

「俺ん家、貧乏だし。年がら年中、翔平の面倒をみるのが当たり前だったから……ってあれは!?」


 いきなり話を中断するのでびっくりした。鬼塚が指差した方向には、一台のキッチンカーが停まっている。

 車の前には、大きなフラッグが飾られていた。

 聞いたことのない食べ物の名前だな。

 

 「ちゅ……ろす? なにあれ?」


 ドーナツみたいな揚げ菓子のような甘い香り。

 その香りを嗅いでいるだけで、お腹が空いてきた。


「水巻、チュロスを知らないのか?」

「うん。初めて聞いた」

「あんなに美味いものを知らないなんて、かわいそうだな。弟の翔平も大好きでさ……そうだ! 一本買ってくるから、半分こしようぜ!」

「はぁ……」


 そう言うと、鬼塚はキッチンカーの前に出来ていた行列の中へ入って行く。

 おごってもらえるなら、ここはしっかり食べておかないとな。


 ~10分後~


「待たせたなっ! ほら、初めてだからシナモンシュガーにしておいたよ」

「あ、ありがとう」

 

 鬼塚は細くて長い星型のドーナツを半分に分けてくれた。

 片方を俺にくれたのだが、こちら側には専用の袋がついている。

 たぶん手を汚すから気を使ってくれたのだろう。


「いただきまぁ~す……あ、これ。うんまっ! うますぎだろっ!」


 あまりの美味さに喋り方が男時代に戻ってしまった。

 だが、鬼塚はそれに気がついてない。

 むしろ俺が喜んで食べている姿を見て、嬉しそうに微笑んでいる。


「だろ? 他にも色んな味があるんだよ」

「マジで!? じゃあちょっとおかわり買ってくるわ!」

「え……?」


 鬼塚をひとり残して、俺は先ほどのキッチンカーに向かう。

 味は5種類。先ほど食べたシナモンシュガー、キャラメル、いちご、バナナ。それとチョコか……。

 俺はチョコが大嫌いなので、それ以外を4つ注文した。


 4本の長いチュロスを両手で抱えて、鬼塚の所に戻る。


「そ、そんなに買ったのかよ……」

「うん! こんな美味しいものを食べたのは人生で初めてだからさ!」


 言いながらも、既にキャラメル味のチュロスにかぶりつく。


「水巻、お前さ……胃もたれしないのか?」

「へ? 全然しないよ」

「そ、そうなのか……」


 チュロスを食べながら、園内をしばらく歩いていると大きな観覧車が見えてきた。

 鬼塚が「せっかくだし乗って行こうぜ」と俺の腕を引っ張る。

 まだチュロスを食べ終えてないのに、仕方ないな……。


 入口の前に二人のスタッフが立っていて、ニコニコと笑っている。

 なんだ? このいかにもセールスしますって顔は? 気持ちが悪い……。


「あのぉ~ そこのペアルックが似合うカップルさん。ちょっといいですか?」


 勝手にカップルと言われたので、鬼塚が激しく否定する。


「お、俺たち! 付き合ってないですっ!」

「そうなんですか~ まだってことですよね? じゃあ記念にこのデジタルカメラで撮影していきませんか?」


 と、かなり大きなデジタルカメラを取り出してきた。

 これはまた懐かしいタイプのデジカメだな……。

 でも、この時代じゃまだ高価なものだったはず。


「え? そのカメラで撮影したら、いつ現像できるんですか?」

「お客様が観覧車に乗っている間に出来上がっております。大きめの写真に現像しますので、一枚1500円しますがどうされますか?」


 高い。俺だったら絶対に買わないぞ……断ろう。

 鬼塚にもそう伝えて、さっさと観覧車の中に入ろうとしたが、彼は頑なに嫌がった。


「せっかくだから、撮影してもらおうぜ! 金なら俺が払うからさ!」

「まあ、いいけど……」


 こうして俺と鬼塚のツーショット写真は、プリクラより大きな写真で現像されたのだった。

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