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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第十一章 ウインターデート

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ダイヤルアップ


 年が明けて間もない1月4日。鬼塚と一緒にスペースワールドへ行くことになった。

 当日の朝、キッチンの冷蔵庫に貼ってあるJRの時刻表を眺めていると、お母さんに声をかけられた。

 どうやら福岡市から遠く離れた北九州市まで向かうので、心配しているらしい。


「藍、あんた駅を間違えて降りたりしないでよね……」

「もうお母さん、大丈夫だって子供じゃあるまいし」

「あんたはまだ子どもでしょ!?」


 ヤベッ、この世界じゃ13歳だったことを忘れていた。


「ねぇ、お父さんも心配じゃないんですか?」


 お母さんがお父さんに話を振るが、本人の耳には入ってないようだ。

 冬のボーナスで買ったばかりの”ウインドウス95”搭載のパソコンを触っているから。

 ぶ厚い説明書を読みながら、大きなブラウン管のモニターを眺めている。

 どうやらインターネットの接続方法に悩んでいるようだ。


「これでユーザ名とパスワードを入力したらいいんだな」


 横からチラッとモニターの画面を確認したが、懐かしい”ダイヤルアップ接続”だ。

 電話のプッシュ音が鳴ったかと思うと「ギーガービープー」という雑音が流れてくる。どれも耳障りな音ばかりで耳を塞ぎたくなる。

 そしてようやくインターネットが繋がったかと思ったら、パソコンのスピーカーから若い女性の声が聞こえてた。


『いや、マジでこの前は超ビビったていうか! 生理がこないからさ、彼氏に相談したら急に黙り込んでムカついてさ……』


 あれ? この声、お姉ちゃんじゃないか?

 そうか、ダイヤルアップ接続だから混戦することがあって、電話を使っているとたまにパソコンから聞こえてくるんだった……。


「なんだ? この声は……インターネットに繋がったのか?」


 ヤバい。お父さんに聞かれてはいけない内容だから、早いことお姉ちゃんの電話を切らせないと。

 俺は急いで二階へ駆け上がると、お姉ちゃんの部屋の扉を開けて自宅電話の子機を取り上げ、電話を無理やり切った。

 当然お姉ちゃんは顔を真っ赤にさせて、怒っていたが……。


「リビングでお父さんがパソコン使ってるから、さっきの話。全部聞こえてたよ?」


 と俺が説明すると、お姉ちゃんは態度を一変させて、黙り込んでしまう。

 まあ妊娠はしてないようなので、放っておこう。


  ※


 とりあえず、家を出てJRの線路に沿って歩き始める。

 三が日が終わったとはいえ、まだ世の中は正月気分な人が多いようだ。

 最寄りの駅に向かって歩いているが、誰も歩道を歩いていない。たまに車が数台走るぐらい。


「うう……やっぱり、寒いな」


 真冬の遊園地に行くからと、いつもより厚着してきたつもりだったが全然寒い。

 ニットのロングワンピースに、アウターとしてスタジャンを羽織っている。

 足元は動きやすいように、キャンパスシューズにした。


 鬼塚とは、”筑前真島(ちくぜんまじま)”の駅舎で待ち合わせしている。

 今回の目的はプリクラ撮影だから、彼が得意な弁当は作らなくていいと伝えておいた。

 お姉ちゃんに「イタリアンレストランで7000円も使わせたんだから、今度は藍がおごりなさい」と注意されたから。


 駅舎に近づくにつれて、独特の臭いが漂ってくる。

 自転車置き場の近くにある公衆トイレから、鼻をつまみたくなるほどの悪臭が流れているからだ。

 この時代はトイレを掃除する人がほとんどおらず、無法地帯だった。

 それに終電を過ぎても、この公衆トイレはいつでも使えたから余計に臭い。


 ようやく駅舎にたどり着くと、褐色肌の少年がこちらに向かって手を振っている。


「おーい、水巻! こっちだ!」


 鬼塚も遊園地用にある程度、対策しているようだ。

 下からデニムのショートパンツに、タートルネックのセーターと……ってウソだろ!?


「あれ……鬼塚もそのスタジャン持ってたの?」

「え? 水巻も持ってたんだ。これ有名なバスケ選手が使ってるスタジャンだぜ? なんで女のお前が持ってるの?」

「し、知らない……」

 

 クソがっ! なんでこいつとペアルックしないとならんのだ!

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