おおかみおとこ
俺の名前は次狼。小学6年だ。あだ名は「おおかみ」何でおおかみと言うと、名前におおかみがついてるってのもあるが、実は俺は、おおかみと人間のハーフなんだ。いや、中二病じゃない。俺はまだ小学六年だ。俺には2歳下の妹がいるんだが、そいつも、あだ名はおおかみなんだ。兄妹そろってひどいあだ名だろ?
今日は保健の授業で、人間の誕生の話についてだった。今頃インターネットがあるから。お父さんとお母さんが交尾でできたことくらい知ってるのに。その部分はいきなり端折って、精子と卵子が遭遇するところからいきなり始まるんだ。そのことを特別に来ていた助産師の人と先生が説明していると、いきなり、後ろの牛島が、「先生、精子はどこからやってくるんですか?」とニヤニヤしながら質問していた。勿論先生は
「お話は最後まで聞きましょう」と、決まり文句を言った。まあ答えられないのだろうということは全員察しがついた。そして授業が終わると、
「そういえば、俺らの父ちゃんって何でいないんだろうな。昔はお父さんとお母さん二人で育ててたそうなのに。ググっても何も出てこないんだよなあ」
「さあな。この間妹が聞いてたけど、いつもみたいにはぐらかされてたよ。」そう言って友達と話した。
そういえば、小さいころ「おおかみこどものぐりとぐら」というアニメ映画を見たのを思い出した。主人公のお母さんがとてもかわいそうだったことを、うっすらと覚えている。そしてそれと同時に、俺のお父さんも確かにおおかみだけど、それは、その時、動物と人間の子供がおかしいからそうなっているのであって、別に今は、多様性に時代で、動物と交尾することも、技術的に可能だし、牛島も、鹿取も、みんな人権を与えられているのに、なんでお父さんは出てこないんだろうか。
次の日、隣のクラスの犬塚が狂犬病にかかったらしい。理由はもうすぐ殺処分されるお父さんに会いに行ったからだそうな。その時俺は思った。なんでわざわざ狂犬病になりに行ったのか。馬鹿なんじゃねえのか?
その日の社会の授業で、フェミニストと言うものを習った。フェミニストの元々の発祥は、「女性の権利を主張し、尊厳を奪わせない」と言う理念のものがいつの間にか、フランス人の活動家、ダラス、や日本の田淵、というものが、暴れ始め、「LGBTQ法案」や「マイノリティ法案」を無理やり通してしまったため、この世の男性と言うものは千年の月日を経て絶滅してしまい、代わりに女性が自分の命の次に大事なモノ、ペットに人権を与え、動物での妊娠が許可され、用済みになった動物は射殺されるのだという。ただ、こうした情報は、12歳未満は情報規制を掛けられてしまうため、大人はこどもに何も教えることができないのだそうな。
だが、それを知っても、俺は何も思わなかった。なぜなら、お母さんが頑張って産んでくれて育ててくれたのには感謝してるし、そもそも俺は、昔の方が、「おおかみこどものぐりとぐら」の世界の方がよっぽど生きづらいと思うからだ。
ただ、一つ問題があって、動物特有の病にかかったものは、すぐさま、射殺されるらしい。つまり、動物だとみなされたものは人権を剥奪されるのだ。だから俺は、欲望に背いて生きていかなければならない。動物的な欲望には一生抗い、人間の欲望に従って生きていかなければならないのである。そうしないとたちまち心は動物に支配され、射殺されるのである。今は人間の方が偉いのだから。
昔の人類が「LGBTQ法案」なんて通さなければ、男性は絶滅しなかったのだろうが、先生が言っていたように、「男性は、身勝手で、自己中心的で、家事育児に非協力的で、女性に気持ちを完全に無視する生き物」なので、いない方がいいと思っている。
家に帰ると、お母さんと妹が出かけていたので、家で、エロ動画を見ることにした。最近は猫の動画がお気に入りだ。俺もいつかかっこいい男性になってみたい。だが、今はこのかっこいい猫で我慢するしかないのだ。男性の動画はほぼすべて削除されている。歴史の教科書に男の人は乗っているが、それで抜くのはなんか違うので、スマートデバイスを使って抜くことにしている。
俺は人間の男性が好きだが、人間の男性を好きになってはいけないので、ハーフではなく動物で我慢している。しかし、本物の動物はと言うと、動物同士で交尾はするが動物は何匹とでもできるので、おかあさんはおとうさんとやったのだろう。そして、お父さんは射殺されたのだろう。
俺は次の日射殺されることになった。理由は「織田信長」の肖像画を何回も見返しているところを先生に見つかり、先生が動物管理局に通報したからであった。
「この男は女性にひどいことをしたということを知っていながら、好意を抱いていましたね?射殺します。
LGBTQやマイノリティーはどこにいったのだろうか。俺は母親と妹から軽蔑のまなざしを受けながら息を引き取った。
その後、遺体は埋葬され、母と妹は俺のいない家で静かに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし