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チャンネル  作者: もちづき裕
花魁淵編
30/42

第七話  震え上がる僕

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「智充〜―!」

 キャンパス内で出会した大森くんは、僕に抱きつきながら言い出した。

「なんで先に帰っちゃったんだよー〜!」

「はあ?」


 こいつ、ぶち殺してやろうかな。

 漫画だったら、僕の額に青筋が二十本くらいは浮き上がっていたのに違いない。


「あの後!本当に!本当に大変だったんだよー〜!」

 大森くんの尋常ならざる様子に、周りの生徒たちも、なんだ!なんだ!みたいな目で見て来るわけだよ。マジで勘弁して欲しい。


「酷いよ!置いていくなんて!酷い!酷い!」

「うるさいな〜」

「あの後、本当に大変なことになったんだよ!」

「はあ?」

「あんなに恐ろしいことないって!」

「なんなんだよ」

「本当に!本当に恐ろしかったんだから!」


 うざ〜!

 これは、どれだけ恐ろしい目に遭ったのかという話を聞かない限り、延々付き纏ってくるパターンだろう。


「これから学食に行く予定だったんだけど、それじゃあ、大森くんの話はそこで聞こうか?」

「え!智充これから学食に行くの?俺も行く!行く!」

「もちろん、大森くんの奢りだよね?」

「え?」

「そりゃそうでしょう。バーベキューに行くっていうので車を出す人が病気で来られなくなった穴埋めで僕は呼ばれて、良くわからない『日本最恐の心霊スポットの一つ』に無理やり連れて行かれて、更にはお前は幽霊見えるだろうと、嫌がらせのように罵倒されたんだからね」


「罵倒なんて・・そんな・・・」


 あわあわする大森くんを見た僕は大きなため息を吐き出した。

 本来なら、麻衣ちゃんと学食を楽しむ予定だったというのに、麻衣ちゃんはまだ風邪の調子がすぐれないってことで大学には来ていない。


「奢ります!何でも好きなのを頼んでください!」


 拝むようにしてそう宣う大森くんを蹴り飛ばしながら、僕は学食へ向かったよ。僕は大森くんのことなんか、本当にクソほどどうでも良いんだけど、あの後、どうなったのかっていうことについては興味がないわけではない。


 僕はカツカレー定食(大盛り・1200円)を頼み、大森くんはカレー(380円)を頼んで、窓際のテーブル席へと移動したわけだけど、

「なんか、俺、全然知らなかったんだけど・・」

 と、大森くんは暗い表情で言い出した。


 僕が花小金井駅と中野新橋駅でピックアップした二人の女子、松崎さんと中野さんは、予備校の中でも結構可愛い系の女子というか、男子生徒なら一度は目を止めるというか、かなり印象に残るタイプの二人なわけで。


「ようやっと大学に合格したんだし!女の子と遊びたい!」

 そう言い出したのは、この度国立大に入学を果たした角田っていう人で、その話を聞いた五島さんが、杉山くんに、松崎さんと中野さんを誘ってあげたら良いじゃんって話をしたらしい。


 杉山くんは誰でも仲良く話せるタイプの人だから、高嶺の花みたいな存在になっている二人の女子とも連絡先を交換しているので、

「せっかく大学に無事に入学したし、みんなでバーベキューしない?」

 と、気軽な感じで声をかけたってわけなんだ。


「角田くんが気になっているのは松崎さんで、俺は中野さんが気になっていたから、角田くんの車に俺たちが乗って、杉山くんの車の方には発案者の五島さんと、五島さんの彼氏である坂本くんが乗って・・」


「はあ?五島さんの彼氏が坂本くん?」

 あの、影が薄くてほとんど喋りもしない男が五島さんの彼氏?

「そう、二人は高校も一緒だし」

 カップルだから一緒の予備校に通うことにしたってことなのかな?


「そしたら杉山くんが、俺が寂しすぎるじゃん!っていう話になって、五島さんの友達の渡辺さんが加わることになったんだよ。だけど、急に角田くんが車が出せないって話になって。そしたら五島さんが、智充を誘ったらどうだって、車の免許を持ってるはずだから車を出してくれるかもしれないって」


「はあ?なんで五島さんが僕が免許取ったことを知っているんだよ?」

「お前のお母さんに聞いたって」

「はああ?」

「スーパーで会った時に話したらしくって、五島さんの母親とお前のお母さん、今でもラインで繋がっているらしいぞ」

「えええええ?」


 ちょっと、信じられない、なんで五島さんのお母さんと、うちのお母さんがラインで繋がっているんだよ。


「保護者同士っていうの?ママ友同士っていうの?そういうので繋がっているんじゃないの?俺のお母さんもいまだに小学校で一緒だったママ友と付き合っているしね」


「いやいやいやいや」

 絶対に五島さんの親とうちの親の接点ないって〜、こえ〜、すでにホラーでオカルトじゃないかよ〜。


「それで、俺、お前と学部が一緒なのは知っていたから」

「なんで知ってんだよ?」

「五島さんが言ってたから」


 こえ〜、この恐怖を誰に言えば良いんだ〜。

 心の奥底から震え上がるってこういうことを言うんだな〜。


「それで、角田くんの代わりに智充に車を出して貰って、奥多摩でバーベキューをすることになったんだけど、最恐のホラースポットに行ったのは、怯える松崎さんの映像を角田くんに送ってやろうっていう配慮だったらしいんだよ」


 なんだって?


「自分が行けなかったバーベキューで、松崎さんは大嫌いなホラースポットに連れ出されちゃって嫌な思いをしたわけじゃない?それで、角田くんがどうだった?楽しんだ?みたいな感じで声をかけて、怯える松崎さんを慰めるって目的で交流を続けられることもあるわけでしょう?」


「くだらね〜!!」


 つくづく!くだらない!そんなくだらないことの所為で、僕は閉じたチャンネルを再び開くことになってしまったのか!冗談じゃないぞ〜!


「そしたら、五島さんが悪ノリで智充を囃し立てるように幽霊見えるだろうみたいな感じになっちゃって、そんなことになっているとは知らない俺は、心霊スポットにビビりまくっちゃっているし。そんなこんなで、気が付けば智充は帰っちゃうし、オカルト嫌いの松崎さんと中野さんも、お前を追いかけて帰って行っちゃうし」


 いや、そんな恨みがましく言われたって知らんし!


「あははっはは!まじでウケるーー〜!って五島さんだけがウケまくってたけど、渡辺さんはお腹痛いって言い出すし、そしたら、このホラースポットは、本当は女性を連れて来ちゃいけない場所だとか、女性のお腹が痛くなることは良くある心霊現象だとか坂本くんが言い出して」


 戦国時代とはいえ、女性が何十人とぶち殺された場所だからね。女性の怨念が女性に悪さをすることは、まあ、あるとは思うけども。


「それで、五人で車に戻ったんだけど、奥多摩湖を越える辺りではすっかり日も沈みかかってて、バーベキューをやったカフェに差し掛かった時にはすっかり暗くなっていたんだよね」


「随分とのんびりしていたんだな」

「ホラースポットで激写したいとか言い出して、結局、暗くなるまで花魁渕には居たんだよ」

「女の子がお腹が痛いって言ってるのに?」

「五島さんが気の所為だって言い出したら、お腹が痛いの治ったらしいんだよ」

「マジかよ」


 おかっぱ眼鏡の五島さん、マジでやばい奴だな。



ここまでお読み頂きありがとうございます!

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