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チャンネル  作者: もちづき裕
厨二病編
13/42

第二話  コーンといえば

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 コックリさんっていうのは、窓から侵入してきた幽霊(狐の霊とかたぬきの霊がやってくるとも言っているよね)に頼んで、自分が知りたいことを聞くってわけだよね。


 一種の降霊術という奴になるんだけど『怖くない?』『やばくない?』『何かあったらどうしよう?』ということを、みんながみんな、考えている中で、

「それじゃあ、俺からやるね!」

 と、言い出す奴は、ちょっとしたヒーローのように見えたりする。


 そんなことを言い出しちゃっている方も、

「俺、自ら危ないことをやっているぜ!」

 と、思いがち。すげえよな、あえて危ないことをやっちゃう俺、ちょっと格好良いかも・・なんてさ、完全なる厨二病だよ。


 心霊特集とか心霊特番なんかを見ていると、大概、コックリさんの途中で悪霊が降りてきて〜みたいな話になるものね。僕の担当看護師さんだった君島さん曰く、

「たまに本当に恐ろしいことになる場合もあるから気を付けろ」

 って言うんだけどね。


 そんな訳で、大森くんが、

「コックリさん、コックリさん、うちのクラスの五島さんが好きな人は誰ですか?教えてください」


 と言ったら、十円玉が勝手に動き出したんだよね。

 一発目にコックリさんに挑戦をしたのは大森くんと、小学生の時には頑なにコックリさんを拒否していた小宮くんのペアだったんだけど、十円玉はスルスルとスムーズに動いていく。


 五十音を滑るように進む十円玉は『こ』の上で止まり、『み』の上で止まり、『や』の上で止まり、それを眺めていたクラスメイトも僕も、ここで十円玉の動きは止まると思ったんだよね。


 私立中から転校してきた小宮くんは、とにかく背が高いし、顔が整った奴なんだよ。しかも陸上部じゃないのに足も早いから、モテ要素を詰め込みまくったような奴なんだ。クラスで一番人気の女子五島さんが小宮くんが好き、これが無意識のうちに動いてしまった『不覚筋動』と『予期意向』だったとしても、

「そうか、五島さんが小宮のことが好きなのか・・・」

 と、みんながみんな、そう思ったもの。


 すると皆が見守る中、十円玉はするすると動き、『し』の上で止まり、『ね』の上で停止したんだよね。


「こわっ」


 誰かが言ったその言葉が、シンと静まり返った教室内に響き渡ったんだよね。


「待って!待って!おかしいって。それじゃあ、俺、他のことを質問するわ。コックリさん、コックリさん、今日のうちの夜ご飯ってなんですか?」


 気を利かした奴がそんな質問をしたんだけど、十円玉は再び『こ』の上で止まり、『み』の上で止まり、『や』の上で止まり、皆が見守る中、十円玉はするすると動き、『し』の上で止まり、『ね』の上で停止したんだよ。


「・・・・」

 シーンと静まり返る中、僕は思わず訴えたよ。


「あのさ、僕が心霊現象に詳しい人(君島さん)から聞いたことがあるんだけど、コックリさんというのは『不覚筋動』と『予期意向』って言うので動いていて、心霊現象とは実はあんまり関係ないんだって言うんだよね!」


 やだ!やだ!やだ!やだ!怖いとか思わないで!恐ろしいとか思わないで!みんなの恐怖心に引っ張られるような形で、幽霊がどんどん集まってくるんだって!


「もー!大森くん、いくら五島さんが好きだからって、ライバル関係にある小宮くんを死ねとか言っちゃ駄目だって!無意識の思いがダダ漏れちゃっているって!」


 僕の言葉に、あ、そういえば大森の奴は五島さんのことが好きそうだったよなとか、確かにイケメン枠の小宮は物凄いライバルになるだろうなとか、そんなことを頭に浮かべたわけだけど、やだ!やだ!やだ!十円玉の上に指を置いている小宮くんの中に、床を這いずって来た霊が半分くらい入り込んでいるよ!


「コックリさん!コックリさん!どうぞお戻りください!」

「戻って!コックリさん!戻って!」

「ありがとうございました!」


 周りの生徒もこの異様な雰囲気に気がついた様子で、その場で大声で叫び出したんだけど、二本の指が置かれた十円玉が動かない。


「小宮くん!大森くん!鳥居に戻って!早く!」


 小学四年生の時に交通事故に遭った僕は、チャンネルが開いてしまったということで、幽霊が見える様になっている。


 担当看護師さんだった大久保さんが、自分が死んだのにもかかわからず、病棟で働き続けているのも見えているし、女に鬼畜な礒部先生に、自殺未遂が原因で今も病院に入院中の看護師さんが、今でも右肩の上の取り憑いているのも良く見える。


 この世の中には、手とか足とか、髪とか指とか、顔とか頭とか、生前の姿そのままの状態で現れる奴もいるんだけど、多くの思念体が固まったよく分からないような奴も存在するわけで・・・


 パシンッパシンッ  パリパリパリパリ  ピシッピシッピシッ


 教室内にラップ音が響き渡り始めたぞ。

 僕には良く分かる、小宮くんの弱った魂に引っ張られるような形で、巨大な思念体が引き寄せられる様にしてこの教室に移動しているのを。


「早く!鳥居へ早く!」


 僕の言葉でようやっと十円玉が動き出す。赤いペンで描かれた鳥居へ二本の指が十円玉を運んでいくのを確認すると、僕は小宮くんの背中をバシン!バシン!と手の平で叩いた。


 手の平で叩けば叩くほど、巨大な思念体は後ろに引き下がっていく。床から現れて入り込もうとした霊体も、地下に潜り込むように消えていく。


「ラップ音が聞こえた時には、お互い叩き合えば良いってユーチューブでやっていたよ!」


 僕の言葉でハッと我に返ったみんなが、お互いを平手で叩き合う。

 痛み刺激を感知するのが受容体レセプターで、痛み刺激はそこで電気信号に変わって脊髄に入り、化学物質に変換されて、脳へと伝わる。


 霊体を察知している脳の状態を、痛み刺激を察知している状態に塗り替える。


「意識の切り替えをするだけでアンテナの切り替えも出来るようになるわけだ。だからこそ、無理やりにでも霊体との接触を防ぎたいと考えるのなら、他者からの痛み刺激が都合が良い」


 君島さんの助言に従ってお互いを叩き合うようなことをしたんだけど、

「コッ・・コッコッコココ・・・」

 下を俯いていた大森くんが、

「コッコッコッコーンッコーンッ!」

 と叫ぶなり、泡を吹いて失神をしてしまったのだ。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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