表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

臨時生徒会長 その1

 トントン


 俺は保健室のドアを二回ノックした。


「先生いますか?」


 保健室の室内から返事はない。

 俺は再度、トントンとノックする。


「すいませーん。一年の碇矢ですが、体温計が使えないので交換に来ました」


 ガタッ……

 微かに、ガタゴトと人のいる気配がしたぞ?


 俺が元気に扉を開けないのには理由がある。

 連女の生徒が居たら気まずいからだ。

 俺は礼儀正しいジェントルメン。

 再びノックするために振りかぶる。


 どんなときが気まずいかといえば、そうだな。

 身体測定の日に欠席した生徒が、中でスリーサイズを測っているかもしれない!

 女子校の保健室といえば、病弱な深窓の令嬢が療養しているに違いない!

 汗をかいたりして、保健室の女医さんに背中を拭いてもらっている可能性だってゼロではないのだ!?

 ノックはさっきしたから、もういいよね?


「しつれいしまーす」


 ガラガラガラ

 ガラス扉付きの棚が並ぶ部屋だ。

 俺の想像に反して、木彫パネルの棚で温かい雰囲気がある。


 だが重要なのはそこではない。

 そこには、赤裸々にもすべてを俺にさらけ出した人影があったのだ。

 おっぱいも片方だけ見えている。

 人体模型さんだ。


 その他には誰も居なかった。

 いくら俺でも人体模型に興奮などしない。

 おっぱいは小ぶりだ。


 おや? さっき物音がしたと思ったのだが。

 まぁ、せっかくここまで来たのだ、ギリギリまで先生が戻ってくるのを待ってみるか。


 幸いにも俺の学生生活は、あまり保健室にお世話になったことが無い。

 保健室の先生が居ないなら少々見学をさせてもらおう。

 それと、女子校の保健室に興味が無いこともない。

 例えばそう。


「お前の正体とかな!」


 ビシッ! と指さして見せた。

 すると、ガタ! と反応がする。


 骨格標本だ。

 やはり女性の骨格標本なんだろうか?

 さすがに骨だけでは判別が出来ない。しかし心なしか内股になっている気もする。

 しかし、反応は骨格標本とは全然違う方向からあった。


 それは保健室のカーテンで遮られた一角からだった。

 その向こう側は、普通に考えてベッドだろう。


 やば、誰か寝ていたんだ。

 そういえば机の上に白いカチューシャが置いてある。

 俺は声を抑えて謝った。


「寝ているところぉ、起こしてぇ、すいませんでしたぁ」


 返事はないものの、カーテンの下の隙間から革靴の内履きが見えた。

 俺たちはスリッパで、加藤先輩はズック。革靴は連女だ。

 つまり、連女の生徒さんが寝ていたのだろう。

 退散するか?

 そうとも考えたが、今の俺はクラス委員として体温計の交換にきているのだ。


「あのぉ。体温計の交換に来たので、先生がくるまで待たせてもらいますね」


 一応の断りを入れて、俺は椅子に座る。

 内臓とおっぱいが丸見えの人体模型は別に気にならない。

 ぼーっとしてても暇なのでスマホを取り出して広げた。

 学校のアプリにはニュース閲覧のページもあった。

 学校が許可したものだけが表示されるので、あまり酷いゴシップ記事はないものの、学生が気になる芸能ニュースなども配信されている。

 しっかり授業中には閲覧ができない等の配慮もされていた。


 しかし、俺が立ち上げたのはチャットアプリだ。

 もちろんデコと連絡するためである。


『デコ。今だいじょうぶか?』


 カーテンの向こう側でゴソゴソと掛け布団の衣擦れする音が聞こえた。

 色々と妄想が捗ったが、寝返りだろうと結論づけた。


『保健室のベッドと女の子ってエッチな妄想するよな?』


 なかなか返事が無いので、適当に話題を振る。


 バサッ

 カーテンの向こうで、布団から起き上がった気配がした。


『そんなことないっスよ』


 しかし、なぜ飛び起きたのかは謎ではある。

 そもそもは完全に起こしてしまった、俺がわるいのだ。

 カーテンの向こう側、連女の生徒はベッドの縁に座った。


 どうして分かるかって?

 カーテンの下から黒い靴下の足がみえるのさ。

 プライバシーは護りつつ、過度な密閉をしない。

 なにかあれば、異常に気づける程度の絶妙な丈のカーテンだ。

 これはなんというか。


 保健室の絶対領域と言って過言ではないだろう。


『保健室に居るからといって、エッチな妄想はしないでヤンス』

『いや、するって』


 いやいや。調教とか言い出したのお前だろう。 


『ちょっと調査するでヤンス』


 しばらく間を置いて返事が返ってきた。


『しないこともない。らしい、でヤンス』


 どこ調べだよ。


『なんだよらしいって』

『統計的にでヤンス』


 いやいや、絶対するだろ。

 俺はベッドに横たわる生徒会長さんを妄想する。


『こう、黒髪のきれいな年上のお嬢様がいるだろ』

『ほう、聞きやしょう』

『ベッドにな、横たわっているだろ』


 するすると衣擦れの音がする。

 カーテンの向こう側で連女の生徒さんがまた横になった。


『首もとまで掛け布団にしっかり入っている年上のお嬢様……この際、はっきり言ってしまうと生徒会長さん』

()()でヤンスね』

『もじもじする生徒会長さんを前に、俺の手には電気で動くアレがある』

『電動!?』

『ソレを生徒会長さんの弱いところにあてがえば……』

『弱いところへ!?』

『ピッ、平熱』

『平熱!』

『おでこを隠して真っ赤になる……生徒会長さん。だが! それだけに留まらず!』

『とどまらない!』

『さらに! 口の中で、無理やり!』

『無理やり!』

『ピッ、微熱!!』

『熱っぽい!』

『あぁ、熱い熱いよ生徒会長さん!』


『オヤブン、えらく限定的でヤンスね』

『俺の女性経験の乏しさよ』


 ゴソゴソとカーテン越しで音がする。

 座り直したようだ。

 また、足が見える。


『そもそも、生徒会長さんは画面越しで顔しか見てないからなぁ』

()()でヤンス』

『リアルで絡んだと言えるのはクラス委員の荒井さんくらいだな』


 もちろん、これは自慢話である。

 リアル女子との絡みだ、どやー。


『クラス委員以外にも、仲のいいクラスメイトが出来たんでヤンスか?』

『ぐ。いや、荒井さんだけだ。しかも、あの娘は誰にでも優しい感じだなぁ』

『他に気になる生徒はいないでヤンスか?』


 他と言っても、あと面識があるのはクルセイダー加藤先輩くらいだしなぁ。

 人体模型も内蔵丸見えだからおっぱいは気にならないし。 


 ……そりゃまぁね。

 決まってるでしょ?


『そりゃまぁ、生徒会長さんは、気になるよ』

()()生徒会長でヤンス』

『俺からばかりその話題を切り出すとさ、がっついてるみたいでかっこ悪いだろ?』

『男の子はそんなものでヤンしょ?』


 お、なんだその「オヤブンは子供ッスね」感は?


『お前も、男の子だろ? いや、え? 男部分じゃなくて子の部分が違うのか?』

『?』

『大人の階段登っちゃってるのか? 生徒会長の調教が本当なら、そういう事なのか?』

()()でヤンス』

『大人なんですか?』


 はっきり言おう。

 コレは少々リスキーな賭けだ。

 これで「そうでヤンス」だなんて返ってきたら……


『ショックだ』

『心配しないでも、経験無いでヤンスよ』

『でも、ほら。調教済みなんだろ』

『そんな尻軽女ではない』


 女?


『デコは男だろ?』

『何の話でヤンス?』

『デコさんが、大人の階段を登っているかって話だろ』

『デコの話ではなかったはずでヤンス。ログをみかえしてみろでヤンス!』


 静かだった保健室にペンペンと音がした。

 カーテンの下から覗く足が、パタパタと動いている。


『デコさんが、生徒会長に大人にしてもらったって話だろ?』

『生徒会長は清楚系でヤンス』

『ビッチなんだろ?』

『処女ビッチでヤンス』

『調教済みの?』

『約束通りでヤンス』

『知的清楚系処女ビッチ生徒会長か』

()()でヤンス』


 属性てんこもり過ぎて、どこが臨時か分からねーよ。


『俺、生徒会長さんに会ったらエッチな命令するんだ』


 微妙に語呂の悪いフラグを立ててみた。

 シャッ!


 それは唐突で意図的な物音だった。

 ベッドを囲うカーテンが勢い良く開け放たれたのだ。

 そこに立っていた生徒に俺は唖然とした。

 予想通りの深緑のワンピースは連女の生徒だ。

 凛とした和風美人が、椅子に座っている俺を見下ろしている。


「……生徒会長さん」

()()生徒会長ですよ。新入生さん」


つづけ

よろしければ、↓から評価と、ブックマークをお願いするでヤンス

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 日和るなよ! ちゃんとフラグ回収しろよ!!(笑) いつも楽しく読ませて頂いてます。
[一言] 和風美人も良いけど、あざとい妹系後輩も欲しい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ