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第二話 吾輩は犬である

吾輩はザック96号である。魔族だ。しかも最弱のスライムで…いや、恥ずかしながら、実はもうスライムでもないのだ…


なぜなら、少し前に勇者に討ち取られたのだ。


今の吾輩は犬である。よく覚えていないが、多分、吾輩が死んだあと、通りかかった野良犬に食べられたのだろう。そして、きっとヤツの体を乗っ取れたのだ。


いや実に幸運である。まさか吾輩に、こんな能力があるとはな…。ワハハ、素晴らしい!これで吾輩はもう魔物ではないはずだ。よし!決めた。今後吾輩は、このまま犬として生きよう!



「わぁ、なんだこれ、犬?」


なにににににににに!!!!!


なんてこった。一命をとりとめたばかりの吾輩が、またもや勇者に出会ったとは、ここで逝くのは吾輩の運命なのか…!?


そう思っている間に、あの勇者は吾輩に近づいた,まさか正体に気づいたのか?


クソ!吾輩を再び経験値にしたいのか!?おのれ勇者め!


いや!違う、この吾輩、ザック96号、断じて…断じてここで終わらせるわけにはいかない!どんな方法でも、例え全てを捨ててでも、吾輩は生きていく、生きて見せる!


さぁ、勇者よ、わが全身全霊の一撃を受けてみよ!くらえぇぇぇ!!!



秘技-【アクト・キュート】!


「わーん、わーん…」


わあ、恥ずかし過ぎる…!いや、申し訳ありませんが、実はスキルに名前をつけるのがあまり得意ではありませんので…


「わぁーーワンちゃんだ!かわいい!」


おやおや、これは…意外な大成功?吾輩はこうして隣のロリに抱きしめられたのだ。


フフ…ハハハ…ワーハッハッハッハー!かかったな馬鹿め!これが我が逃走経路だ!貴様はこの吾輩との知恵比べに負けたのだ!


「うわ、触るなよ。この野良犬は汚いから、何か伝染病を持っているかもしれないし…」


ちぇっ、やはり手強いか、どうやらこのまま簡単には見逃さないようだ。攻勢を維持し続けなければ...


「大丈夫だよ、どうせゲームの中でしょ!」


「まぁ、それは確かにそうだな。」


んん?よくわからんけど、どうやら、かわいいふりを続ける必要はないようだ…?


「ね、お兄ちゃん、飼ってもいい?」


「いや、俺に聞くなよ、ここは現実の世界じゃないし、もしペットが欲しいなら、まず【テイマーズ】スキルを習得しなきゃ…」


「あ、そうか!じゃ今習得しちゃおうよ。」


「は?」


「ん?」


おやおや、様子がおかしいぞ…喧嘩だけはしないでくれよ…抱きしめられた吾輩を巻き込んで傷つけられるかもしれないから…


「習得?誰が?」


「何を言っているの、お兄ちゃん!私は、まだLV1だよ!勿論お兄ちゃんが習得するしかないじゃん!」


「いやいやいや!待って待って!なんでお前がペット欲しいだけなのに、俺が習得なきゃならないんだよ!?」


「だから、私はまだLV1で、習得できないんだよ!そんで今こそお兄ちゃんの男らしさを見せるときじゃん!…助けてくれるよね…?」


「お断りさせていただきます。」


「急に敬語!?」


「申し訳ございませんが今回の件は、是非ともご遠慮させて頂きます。」


「ああ、もう!分かった!分かったから、そんな喋り方止めて。」


「良かった、貴重なsp(スキルポイント)が保護された…」


やれやれ、仲直りできてよかったな…。そして多分吾輩の命は取らなそうだ…。めでたしめでたし。


「まったく、お兄ちゃんたら!ケチ!」


「ごめんごめん、あとでアイスクリーム買ってあげるから、許してくれよ。」


「え?本当!?ありがとうお兄ちゃん!」


こうして、二人はだんだん遠ざかっていった。いいなぁ…家族って…。吾輩には、もういないのだがな…


まぁ、こんな辛いことを考えないで、今は未来を考えよう!そう、吾輩の新たな人…いや、犬生!勇者と魔王の戦いとは関系ない平和な未来と悠々自適な生活が吾輩を待っているのだ!


そういえば、お腹が空いたな、まずは食べものを探そう…




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