フェラーリと女
幼なじみの男から連絡が入り街の食堂で食事するとこになった。
真夏の街の古びた食堂。
私は幼なじみの男と食事をとっていた。昼時なのに食堂には人は私と幼なじみの二人しかいなく、ひどく寂しい食堂だった。店主のおじさんは料理を作ったあと、私達の隣の席につき、ぼおっと昼のワイドショーを眺めていた。
私はオムライス、幼なじみは唐揚げ定食。男って唐揚げが好きな人が多いような気がする。
特に心がドキドキするわけでもなく、ただのんびりと食事をしていた。
「女ってみんなフェラーリに乗った男が好きなんやろ?」
「それはちゃうで」
「いや絶対そうや。お前も俺とフェラーリやったらフェラーリを選ぶはずや」
「バカにせんとって。あたしはそんな女ちゃうわ」
私はイライラし、口の中に含んだ冷水を彼の顔面に霧吹きスプレーのように掛けてやろうと思ったが流石に食堂でそれをするのは道徳に反すると思ったのでやめておいた。
フェラーリに乗っている男は賢い人もいれば、賢くない人もいる。でも賢いとか賢くないとかフェラーリとか、そんなものははっきり言って関係ない。私はそのことを彼に伝えた。
要は男と女はフィーリングが合うか合わないかが重要だ。少なくとも私はそう思う。
食事はほどほどに楽しかったが特にこれといって大笑いすることもなくただの幼なじみとの食事という感じだった。
もう彼とは二度と食事をすることはないだろう。私はそう思った。