さぁ私を貪れ、君の力になりましょう。現代が生み出した慈愛と献身のモンスター
今日は私にとって最高の日になるだろう。ちゅんちゅんと鳥のさえずりが聞こえ闇夜を光が照らした。ふふっ、全て私を祝福してくれているようだ。風の音、鳥のさえずりなどの自然の音を聞いていた。ふと自然の中にジリジリと鳴る異物が紛れ込んできた。なかなか異物はなりを潜めない。おやおや今日も彼はおつかれのようだね。まあ当たり前か昨日も外の世界を闇夜が包み込み生物は寝る時間だというのにずっと起きてお仕事をしていたのだから。ふふっ、頑張り屋というところは好きだけど自分の体を労わってほしいな。おやおや、異物が消え、人為的な音が加わってきたな。
トントンと階段を降りてこのキッチンに降りてくるのが分かる。おや、今躓きそうになったね。ふふっ、そんなところも愛おしい。なかなか彼はキッチンにこない。水の音が聞こえてきた。彼は目を覚ますために顔を洗っているのかな?
水音が消え、足音だけが近づいてくる。彼がキッチンに入ってきたよ。
「ふわぁ」
彼のあくびほんとうに好きだな。短い間しか見ることができないって分かってると少し悲しくなるな。
『おはよう。昨日も頑張ってたね。私的にはもう少し体を労わってほしいな』
伝えたい事の山から少し切り取り、取り上げた。
「うぅん」
ふふっ、彼はまだまだおねむのようだね。
彼は棚からスティックパンを取り出し、冷蔵庫から取り出した牛乳をコップに注ぎ朝ごはんの準備をした。
『ふふ、ゆっくり食べるのよ』
「いただきます」
おやおや、また詰めん込んじゃって、それで君の体調が悪くなったら私から液体が流れちゃうよ。
彼はご飯も終わってテレビを見始めたね。だけどいいのかな?お仕事間に合わなくなっちゃぅんじゃない。教えてあげよう。
『ねぇねぇ、そんなにゆっくりしたらお仕事間に合わなくなっちゃうよ』
「やっべ、もうこんな時間じゃん!電車に遅れちまう!」
ふふっ、ちょっとおっちょこちょいなところも彼の魅力の1つだよ。あらあら、慌てちゃって、忘れ物がないようにしなきゃね。ああ、もうまたネクタイズレちゃってる。ふふっ、可愛い。
あら、もういってしまうみたいだね。私的にはもっと居て欲しかったけど彼が遅れて怒られてしまうのは嫌だから仕方ないね。
『気をつけてね、行ってらっしゃい』
「いってきます」
また、誰もいない時間がやって来てしまった。彼が帰ってくるまで私は誰もいないところに居なければいけないのよ。それも彼が帰ってくるのはいつも外の光が消え始める頃。彼が帰ってくるのが待ち遠しいわ。
こんな1人の時はつい昔のことを思い出してしまうわ。私は親もいない、自分がいつ生まれたかなんて知らない。足も手もない私。誰も私を買わない。ずっとそんな日が続いていた。売れ残りの中の1つ。売れ残りの中で長い時間売れ残ったもの達は廃棄されていった。私もその対象になりかけていた。そんな廃棄される運命だった私達を救ってくれたのが彼だった。ふふっ、そういえば彼は私たちを買った時も疲れた顔してたなぁ。買われた時私はこの人のために生まれてきたんだと自覚したなぁ。彼のためなら私の全てを捧げれる、あんまり役にたてないけど私を使うときは私の全てを使いして欲しい。そんな欲望が私の中で渦巻いた。私以外の買われたもの達も感じたことだろう。
彼は私達を持って帰った。私達は全部で17個あった。持って帰る時辛そうな顔をしてたけどそれは彼が17個も連れて帰っていることを奇妙な目でみられているからだろうか、それともこれから行なう行為のためだろうか。
彼の家に帰ってきたのは世界がオレンジ色に染まった頃だ。彼は私たちをキッチンに置きご飯を作り出した。売られてた空間よりは大きく感じた。彼はご飯を食べて違う部屋に移った。それから私達は暇な時間を過した。突然彼は部屋に入って私たちの1人を掴んだ。彼は親指で私たちの体に穴を開けて、貪った。彼は貪り終えた後辛そうな顔をしていた。私はそれをみて羨ましいなぁと思った。
それから私たちが買われてから17日が経過した。毎日彼は私たちの中から1つ選んで貪った。その度に彼の顔には影が差した。そして今日最後に私だけが残っている。私が選ばれる時が来た。まだ彼と居たいという思いと、早く私もという相反する気持ちがごちゃ混ぜになっている。いつも葛藤していると彼が帰ってくる。
そう今日も彼は帰ってきた。
私は彼を見ると早く私もという気持ちが膨れ上がる。狂おしいほど愛おしい彼に早く私ものまれたいという思いに埋め尽くされる。ああ、彼はご飯を食べて、お風呂に入ろうとする。そんなものより私を食べて!お風呂に入る前に私を貪って!そんな独占的な重く自分勝手な思いに呑まれる。いつもと変わらない疲れてそうな顔が今は少し悪い顔に見える気がする。ああ、早く私をあなたの全てでのみこんでしまって!
彼は私を焦らしているのかなかなか私のある部屋に入ってこない。
少し時間がたち、彼の足音が近づいてくるくるのを感じた。ああ、きっともうすぐだと私の本能は感じた。
まだ少し彼と一緒にいたいという気持ちが無くなったと言えば嘘になるが、彼のために今は私の身を捧げることができるという事実がその気持ちを押し込んでいる。気がついたら彼は私の前に居た。そして私を手に取った。彼の表情は暗かった。
『気を使わなくても大丈夫よ。ほらどうぞ』
彼は親指で私に穴を開けた。そしてその穴に彼は口を持っていった。貪られる寸前になって私の彼とずっと一緒に居たかったという気持ちが爆発した。本能で抑えこんでいた気持ちが本能を押し上げて出てきた。私の気持ちなんて必要ないと抑えてきた気持ちが、自分勝手な気持ちが膨れ上がる。彼の力になれるという喜びと自分勝手な気持ちが膨張し混ざりあった結果、私ははじめてポタリと液体を流した。
だけど彼は止まらない。私から出る液体も止まらない。喪失感と幸福感で埋め尽くされる。ああ、そんな辛そうな顔しないで。最後くらいあなたには笑顔でいて欲しかったわ。私は悲しいけどあなたの力になれてとっても嬉しいのよ。そう伝えたいけど彼には伝えられない。私は彼を追い詰め、私たちを呑まさせる決断をさせたものを壊したいと思った。そして来世があるとすれば彼の傍にたち、いろんな世界をみて、いっぱい笑うっていうことをしたいな。最後くらいこんなことこんなこと思ってもいいよね。消えゆく意識の中、彼が私の名前を読んでくれた気がした。
「モンスター飲んだしこれからまた残った仕事しなきゃ!ほんと仕事疲れるなぁ、はぁ」
レポートに追われてモンスターを飲んでいる時に思いつきました。モンスター最高!モンスター最高!はっ、私はモンスターの信者かもしれない!
ああ、気づいて後悔の方も書きたいのに時間がないよォ。辛い、そんな時はモンスター!一夜漬けにもモンスター!