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プロローグ

 ミーティス・ソーン・アイズベルグは無知だった。


「お父様……!」


 アイズベルグ帝国皇帝の一人娘でありながら、帝位を継ぐ気などさらさら無く、いつだって『お父様のお目に叶う殿方と結婚して、婿殿に帝位を継いでもらえばいいわ』と呑気に構えていた。


 そんなミーティスの宮廷での役割は、専らその輝くような愛らしさを振り撒くことだ。

 幼い頃に死んでしまった母に生き写しだと言う容姿は、十四歳にして既に老若男女問わず目を奪われるほど。

 七面倒な皇室行事も、暗雲立ち込める要人との晩餐会も、そこにミーティスが現れてにこりと微笑めば、不思議と場が和やかになるのだ。


 全てを丸く治める神憑かみがかった笑顔は、一部の従者達から“女神の微笑み”と呼ばれ、ある意味重宝されていた。


「嘘、嘘よ……。ねぇ、お父様ったら!」


 だからミーティスは、お肌の手入れやドレス選びには努力を惜しまない。

 自身の美貌は武器になると知っているのだ。

 一方で、国の統治者に必要とされる政治学、社会学、経済学、国家の歴史や神学などといった小難しいお勉強には無視を決め込んできた。


 ――そんなもの知らなくたって、大抵のことは『笑えば何とかなる』もの!


 そう信じてやまなかった。

 今日、この日までは。


「あぁなんてこと。こんなに顔色もいいのに……今にも動き出しそうなのに…………ひどく、冷たいわ」


 窓硝子にびっしりと露が付くほど冷え込んだ、冬の朝のこと。

 アイズベルグ帝国皇帝、マクシミリアン・ソーン・アイズベルグが崩御した。


 ミーティスが泣いても笑っても、それは揺るがざる事実であった。

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