【夢現】人間不信の孤独な少年
重い世界ですが、よろしければ……。
僕は一人、明かりも点けずに考える。真暗闇の中で、自分について考える。
光が無いと僕は何も見えない。
居るとしても、僕自身がそれを視覚で捉えられない。
指を動かす感覚すらも、僕の意識で動かせているのか怪しい。
目を開けても閉じても何も見えない。
こうしていると、僕は居るのか居ないのか分からなくなる。
闇の中で、自分という存在が溶けていく。それがすごく不安になる。
体の内から震えあがって、恐怖と感情に支配されそうになる。
僕はここに居ていいんだろうか。
生きていてもいいんだろうか。
僕の考えは闇の中に沈んでいく――
僕の意識は夢の中に沈んでいく――
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〈思考の断線・心魂の共鳴〉
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私は、生きたいと切に願ったことはなかった。
死ぬ時は何時でもいいんだと。
自分の時間と他人の時間は違う。
人は、他者と一緒に居ても自分の時間を持ち続ける。
集合しても心は孤独であり、一人なら尚更孤独の海に沈みゆく。
私は、人の為に生きることを辞めた。
私は弱い。人もまた脆い。
誰かに縋りつきたい。
人の温もりを肌で感じたい。
だから私は、人の為に生きていた――――
「自分の為」という命題を塗り替え、「人の為」という命題で生き延びた。
偽りの命題は時間と共に剥がれゆく。
知らぬ間に塗り替えていた自己中心的な利己的な命題に気が付いて吐き気がした。
吐いている途中、真実に気が付いた。
「人の為に生きるとは、自分の為に生きる事であり、自分の為に生きる事は、人の為に生きる事である」
自分の為に生きるという思考は、どこかで誰かの支えになり、自分の行動の果てには「人の為」にという結果が待つ。
人の為に生きるという思考は、どこかで自分を殺し、自分ではない何者かを形成する。
私の視界は霞み、世界が歪んだ――――
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〈思考の断線・心魂の共鳴〉
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真実を知ってから、僕の世界は色褪せてしまった。
ひどく汚れた世界に目を向けるのが辛かった。
家族友人知人、誰も彼もが自分自身の為に生きている。
それはなんだかとても冷たくて、寂しくて、空っぽみたいに感じた。
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〈思考の断線・心魂の共鳴〉
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そして私は気が付いた。
全員、孤独であり一人でしかないのだと。
裏表のない人間は存在しない。
人と言う生き物は損得勘定で行動する。
それは、何もお金というものだけじゃない。
関係性・信頼性といった全て含めて人は損得で物事を、人を考える。
気持ち悪い。
酷く気分が悪い。
空っぽの胃袋が何かを吐き出そうとする。
「人の為」という命題で生きてきたせいか、余計に腹に溜まった何かが出そうになる。
綺麗事で塗り固め、上っ面の関係を演じ、自分を孤独だと偽り、人は皆、悲劇の主人公になりたがっている。
「なぜ僕がこんな目に……」
「なぜ私がこんな事に……」
「こんなはずじゃなかった……」
「生まれた環境が悪い……」
「運が無かった……」
「人は平等なんかじゃない……」
「くそつまらない世の中に生まれた……」
「社会が悪い……」
「親が悪い……」
「あいつが言ったから……」
誰一人として自分を責める者は居なかった。
全ての出来事は周りのせいだと豪語する。
自分が決定し行動した結果を、負ならば誰も受け入れようとしない。
正ならば他人事でも誇らしく述べる。
綺麗で泥だらけの生き物。
強がりで、浅はかで、ちっぽけで、自己愛が強くて弱虫で、いつも周囲を気にして、周りに合わせようと必死になって、馬鹿みたいに騒いで、怒られて萎縮して、逆上して。
相手の意見を聞かず自分勝手に行動し、挙句の果てに責任転嫁。
「こんな風に育てた親が、周りが悪い」
またこうやって人に擦り付ける。
本当は分かっているのに必死に抵抗している。
一回、言ってみればいいんだ。
「こんな風に育ったのは自分が悪い」
って。
決定意思、先を見越しての行動、それを怠った自分が悪かったと。
説教を垂れるつもりはない。
私自身がそうなのだから。
誰かに注意を出来るほど、私は中身が出来ていない。
なんせ人の為という命題を自分の為に使う愚者なのだから。
人のせいにしている間は、人の為にもならず、自分の為にもならない。
「さぁ、少年。君はこの旅をまだ続けるのかい」
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〈思考の断線・心魂の共鳴〉
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お読みくださりありがとうございます。
世界がもう少し平和であれば、少年ももう一人の方も、苦しむことはなかったのかもしれませんね。。。