エデンへの脱獄
初めて書いた作品です。
よろしくお願いします。
1.受刑者の身
目が覚めると、そこは記憶にある場所では無かった。
六畳の部屋。薄暗い中で知らない男と二人だった。
「ここはどこだ?」私は知らない男に尋ねた。
知らない男は落ち着いた顔で「刑務所だ」と答えた。
昨日、私が寝ている隙にここに連れてこられたらしい。
なぜ私がここに連れてこられたかまでは知らないということだった。
昨日は病院のベッドで眠りについたはずだ。
私には訳が分からない。
自分が刑務所に連れてこられるようなことをした憶えは無かった。
「私が罪を犯したのか?」
ただそれだけを疑問に思っていた。
2.脱獄への決意
567番。それがここでの名前だった。
何かの冤罪なのだろうか?
数日前、病院のベッドで寝た記憶が遠い昔の様に思い出される。
病院着の感触が懐かしい。
私は半年前からガンの治療をしていた。
余命はあと三カ月。
安静にしていなければいけないというのに、重労働を課せられていた。
労働に反発する受刑者が五月蠅い。
最後の三カ月をこんな場所で過ごすのか?
六カ月の刑期は不自由な生活を想像させ、
ここで死に絶えるのは本当に嫌だと感じていた。
生きているうちに外に出たい。
自分だけが抜け駆けするのは罪悪感があったが、
自分は罪を犯してはいないし、何より時間がない。
脱獄するための道具を揃えるために、牢獄の中で働くしかなかった。
3.再会のために
脱獄は失敗に終わった。
脱獄の計画が仲間から刑務官にばれてしまったらしい。
薄暗い六畳生活はまだまだ続きそうだった。
刑務所で最初に会った知らない男。名前は「サトウ」というらしい。
サトウは牢獄生活の中、愚痴をこぼすことは一度も無かった。
「なんでそんなに冷静でいられるんだ?」
私が呟いた独り言にサトウは口を開いた。
「騒いでも何にもならないからさ。
脱獄も考えたことはあったが、
見つかれば刑期が長くなる上にここに戻らなくちゃいけなくなる。
本当に外に出たいんだったら、上のいうことを聞いて
大人しくしていた方が短い刑期で外に出られるからね。
冤罪でここに来たとはいえ、脱獄は罪だ
寿命のこともあったし事情は分かるがしっかり罪は償わないとな」
初めて聞いたサトウの言葉は言い返せない程に正しかった。
「567番、面会の時間だ。」
私は刑務官の声と共に立ち上がり、面会室に走る。
久しぶりの家族はガラス越しに泣いていた。
「どうして脱獄なんかしようとしたの?」
曇ったガラス。籠った声。
私は答えられなかった。
念願の家族の顔を見られたというのに。
私の心は曇天の様に曇ったままだった。
私には死ぬまでに行きたい場所がある。
どうにかこの牢獄から抜け出して我が家で家族と過ごしたい。
遠い道のりになるとしても、それがこの地獄から天国へ繋がる一本の糸だった。
4.出所の景色
あれから反省した私は刑務所の優等生となり
それが評価されたのか半年の刑期は三カ月で終わった。
快楽のない牢獄の世界で、幾度となく外に出たいと思ったが
今度脱獄に失敗すればもう家族に直接会えないことは分かっていた。
家族と自宅で過ごしたい。その願いで自分を律することができた。
今はただ囚われのない自由な世界でまだ生きている。それだけで嬉しい。
最初は厳しかった刑務官も最後はなんだか優しかった。
「これが外の空気か。」
私を迎えに来た家族は泣きながら待っていた。今度は悲しい涙では無い。
あの大変だった地獄の様な三カ月も
今では大切なものに気づかせてくれた時間だと考えている。
ただ自宅で過ごす日々がこんなにも幸せに感じられるのだから。
コロナの影響で自粛生活が余儀なくされています。
そこで自粛生活の大切さ、苦労などを小説で書きたいなと思い
書かせて頂きました。
もしよければ、コメントなどで感想を聞けると嬉しいです。




