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78.あの人の真意

 枝にぶら下がったルエリアさんの身体から種のような物がばら撒かれた。地面に落ちると深沙央さんを巻き込んで爆発した。


「爆撃ですわ。斬っても爆発しますわよ。さぁ、これ以上爆炎でその身を焦がしたくなかったら敗北を認めなさい!」

「チェンジ! スカイダンサー!」


 翼を持つ鎧をまとった深沙央さんは、既にルエリアさんの頭上を位置取っていた。


「炎にさらされたくなかったら、マウントを取り返すまでよ」


 鋭利な翼が蔦を切断した。ルエリアさんは落下。


「えええい!」


 地面にぶつかる瞬間、植物が生えてきてルエリアさんを守った。


「へぇ、ルエリアもやるわね」

「余裕ぶっている余裕はありませんことよ!」


 再び爆弾の種を発射。深沙央さんは空中を舞い、突風を起こして爆弾の軌道を変えてしまう。

 悔しがるルエリアさん。風で押し返された爆弾のひとつが、不幸にも俺のほうへ飛んできた。


「しまったですわ! 康史!」

「康史君!」

「クエナ! 俺に力を貸してくれ!」


 飛んできた爆弾は俺の足下に着弾して大爆発。だけど俺はカブトムシの鎧を装着して無事だ。


「な、なんですの? その鎧。まるで吸血魔の強化皮膚のよう」

「よそ見している暇はないわよ!」


 急降下で推し迫る深沙央さん。


「こうなったら! 地に眠る緑たちよ。ワタクシに力をお貸しなさい! ボタニカルプリズン!」


 ルエリアさんは両手を地面に添えると、地面から大量の植物が現れ、深沙央さんを絡め取った。


「こんなもの!」


 深沙央さんは植物を巻き込んで高速回転。引きちぎって自由の身に。さらに回転したままルエリアさんに向かっていく。


 身体は目にも止まらないくらい回っているのに、顔だけはルエリアさんを見据えたまま、真っ直ぐ向かっていく。なんだか怖い。


「なんですのよ、貴女は!」


 ルエリアさんは後方に跳ぶ。その先は崖だった。


「こうもワタクシが追いつめられるなんて。この山に住まう全ての緑よ。ワタクシに力を貸して!」

「また地面から攻撃する気? だったらチェンジ! ソードダンサー! 右足限定650倍速×全力かかと落とし=敵歩兵退陣脚!」


 深沙央さんがかかと落としを地面に炸裂させると、深沙央さんとルエリアさんの足下に地割れが発生した。これでは植物も生えて来れない。


「きゃああああ!」


 さらに地割れは土砂崩れを招き、ルエリアさんは転落していった。

 空を飛ぶ鎧をまとった深沙央さんは、落ちていくルエリアさんを抱きかかえると、俺のもとへ帰ってきた。


「ルエリアさん。もう決闘はやめてくれないか」


 深沙央さんから下ろされたルエリアさんに、俺はお願いした。


「まさか、こんなに手ごわいなんて思いもよりませんでしたわ。ましてやワタクシの花ネズミを一体も殺すことなく、制圧するなんて」


 分身ちゃんたちの半分はネズミ兵と交戦状態にあるものの、もう半分はネズミ兵を組みしいていて一体も殺してはいなかった。


「強いうえに敵をいたわる心がけもある。どうやら無秩序に吸血魔を殺してきた人間ではないようですわね」


 そうか。ルエリアさんは俺たちを善人か見極めるために決闘を考えたのか。


「私の負けですわ。花ネズミたち。戦闘は終了ですわよ」

「そういうことなら。分身たち。もう終わりにしましょう」


 分身ちゃんと花ネズミたちは戦うのをやめた。深沙央さんとルエリアさんも元の姿に戻った。


「なあルエリアさん。俺と深沙央さんは人間と吸血魔が平和に暮らせる世界を作るために、この世界に来たと思ってるんだ。それはルエリアさんが目指そうとしている未来と同じなんじゃないか」


 疲れ切ったルエリアさんに言った。


「俺の鎧は吸血魔の女の子に託されたものだ。俺は良い吸血魔となら手を取りあえると信じている。ルエリアさん、協力してくれないか」


 ルエリアさんは黙ってしまった。

 良い答えが聞けると思ったのにな。深沙央さんに目を向けると、周囲を警戒していた。アラクネも同様だ。


「いるのは分かってんだ! 出てきやがれ!」

「ミンミンミン!」


 木から何者かが飛び降りてきて一撃を放ってきた。それを魔剣ではね返す。


「よくぞ気付いたものなんだな!」


 昼間の吸血魔。セミ人間のシケーダだった。さらに多くのネズミ兵や獣までやってくる。

 深沙央さんは腰に手を当てながら、シケーダの前に出た。


「オマエが街から付けてきたことは、康史君の波津壌気でとっくに気付いていたわ!」

「ふん。決闘とか言ってるから、一方が負けた隙に襲ってやろうとしたのに、仲良くなって仲直りしやがって。とっても腹が立つのだ」

「仲良くっていいじゃない」

「誰とも仲良くなれない山賊風情ですものね。ワタクシたちの考えがわからなくても不思議ではありませんわ」

「ミーン……者ども、コイツらをやっつけるんだな!」


 ネズミ兵、吸血獣が迫ってくる。


「やっとアタシの出番だな」


 アラクネは楽しそうに魔鉄槌を構えた。


「分身たち、ザコどもをお願い」

「花ネズミ、やっておしまい」

「動物は俺の波津壌気で無効化する。シケーダは任せたぞ」


 鎧を召喚した深沙央さんはシケーダに向かっていくけど


「オマエに敵うとは思ってないんだな。ネズミ兵だって逃げるための捨てゴマなんだな」

「逃がさない! 水圧咆哮弾!」


 水の玉がシケーダにぶつかるが


「なによ。またセミの抜け殻なの?」


 本物はとっくに距離を取っていた。ところが


「ミミミ!?」


 周囲の蔦植物に足を取られていた。


「植物を操るワタクシにとって、緑豊富な山は領地のようなもの。アナタ方が覗き見していたことくらい、薄々と気づいておりましたわ」


 すでに花人間に変身していたルエリアさんは、深沙央さんとともにシケーダへと歩みを進めていた。


「トゲ植物、毒植物、寄生植物、どれがお好みかしら。セミだけに食虫植物を御紹介しましょうか」

「ミミッ!」


 シケーダにさらなる蔦植物が絡みつく。あれでは逃げられない。


「さぁ深沙央。これを」


 ルエリアさんから深沙央さんに渡されたのは爆弾の種だった。


「よぉし。右腕限定777倍速×全力投球=魔急招炎轟速球まきゅう・しょうえん・ごうそっきゅう!」


 シケーダに命中し爆発炎上。とんだデッドボールだ。



「貴方がたは善良な人間のようですわね。明日の山賊との戦い、ともに臨みましょう」


 戦いの後、ルエリアさんは約束してくれた。

 そして夜が明けて山賊との決戦の朝がやってきた。


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