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47.恋する少女は空を舞う

主人公は女体化中。

女学院潜入編の二日目の昼休みです。

康史のクラスメートが相談しに来ましたよ。


康史の偽名→ココア・コーヤマン

深沙央の偽名→ミサ・ミクライアン

「私、リヨネ・バンブナーです。実は……」


 手には学院裏新聞が握りしめられている。ああ、来ちゃたよ。お悩み相談室が。


「何かしら?」

「私、好きな人がいるんです。お二人は恋愛相談に乗ってくれるんですよね」


 しかも恋愛ごとか。彼女がいる俺だって相談したいくらいなのに。


「お二人は隣にある兵士養成所を御存知ですよね。私、そこにいる男子のことが好きなんです」


 王立騎士・魔法士養成女学院の隣には兵士養成所がある。兵士になりたい未成年はここで一年間の訓練を受けてから軍に在籍するらしい。


「養成所にブルバーという男子がいます。ブルバーは幼なじみで、私が魔法士になるためにこの学院に入学すると知ると、自分も国のために働くといって一緒に王都に来てくれました。でも私は学院、ブルバーは兵士養成所。生活はすれ違ってばかり……」


 相談を受けるとは言ってないのに。どうしよう、深沙央さん。あら、深沙央さんってば真剣に聞きいってらっしゃる。リヨネは続ける。


「夏季休業になると、養成所は軍主導の強化合宿に入るそうです。強化合宿は毎年若い女性教官が男子を指導するみたいで、男子の話題は教官のアレやコレやで持ちきりだといいます。ブルバーとは何週間も話せてません。もしかしたらブルバーは大人の女性に取られてしまうかも!」


 少年兵を美人教官が指導だと。俺、そっちの潜入捜査をしたかった。


「リヨネさん。あなたは魔法士クラスで私は騎士クラス。相談するのに抵抗はなかったの?」

「私の母は魔法士ですが父は騎士なんです。軍本部は分かりませんが、地方では魔法士と騎士は仲が良いんですよ」


 なるほど。深沙央さんは、う~んと考えこんでいる。そもそも俺たち相談員じゃないし。


「どうすればいいんだろうな」

「答えは既に出てるのよね。その上でどうすればいいのかしら」


 出てるの?


「話は聞かせてもらった!」


 アラクネだ。猫から元の姿に戻っているが全裸ではない。薄い白い布のミニスカワンピースを着ている。服を着ているといっても露出狂寸前だ。


「あの、あなたは?」

「通りすがりの恋愛王さ」


 黙れ元魔王。


「リヨネと言ったな。ブルバーのことが好きなんだろ。それを伝えろ。他の誰かに取られる前に、自分のモノにしてしまえ」

「そんな簡単に言わないでください!」


 リヨネは黙りこんでしまった。表情も悲嘆に歪む。


「そうなのよね。告白するという答えは出てる。問題は告白するタイミングと勇気なんだけどね」


 深沙央さんまで困った顔をしてしまった。


「考えれば考えるほど、どうしていいか分からなくなるものなのよ」

「深沙央さんなら、どうする?」

「私の場合は康史君から告白してくれたから」

「そうでした」

「康史君はどんなきっかけがあって、告白する勇気が持てたの?」


 きっかけ? 頭の中は深沙央さんのことでいっぱいで、夏休みに彼女がいたら楽しいだろうな、それでキスしちゃって、あわよくば……って、とてもアドバイスできる次元じゃないな。

 深沙央さんは涙目なリヨネの肩に手をかけた。


「こんなに好きなのに、悩んでいるのに、気付いてもらえないって辛いわよね。私たちに相談しに来たのも、苦しくって仕方がなかったからでしょ」


 そう慰める深沙央さんにリヨネは泣き出してしまった。


「あー! メンドクサイな!」


 アラクネは声を張り上げた。


「告っちまえばいいだろ。『人を殺しました』よりも『好きです』の告白のほうが良いに決まってる。男一人をモノにするくらい簡単だろ。世界を手に入れるのに比べれば!」


 いい加減黙れ、元魔王。リヨネが怯えてるじゃないか。


「だったらいいさ。アタシが告ってやんよ」

「オマエが告白しても意味ないだろ」

「リヨネにはなくてもアタシには意味がある。ブルバーをアタシのモノにする。養成所のガキどもは、まだ見ぬ女教官を話題にするくらい飢えているんだろ。私が告ればイチコロだ。身体の調子も戻ってきたし、そろそろ男っていう遊び道具が欲しかったところなんだ」


 なんてことを。確かにアラクネは外見だけならスタイル抜群の妖艶なお姉さんだ。言い寄られてしまったら、年頃男子は一溜まりもない。

 理性は死に、あとは獣のような欲情だけしか残らない。


「安心しなリヨネ。飽きたらオマエに返してやんよ」

「待って。私のブルバーを汚さないで」

「もう遅い。この服だってガキをたぶらかすには丁度いい具合だ。あははははは!」


 確かに薄い白布のワンピは破壊力抜群だ。雨に降られたら絶対透ける。雨が降ってなくても濡れた場合を想像する。そんなお年頃。


「ブルバーは隣の建物にいるんだったな。じゃあな子娘ども。アタシとブルバーが三日くらい帰って来なくても気にすんなよ」


 アラクネは養成所のほうへ向かっていった。


「させない。そんなことはさせない。ブルバーは私が守る!」


 リヨネを中心に風が巻き起こった。


「風よ。大気の精霊よ。私に力を貸して。ウインドムーヴ!」


 リヨネはものすごい速さで走り出した。


「あの風はリヨネの魔法なのか?」

「あの目はマジな目。戦いに挑む女の眼差しだったわ」

「戦いって……アラクネに挑む気か?」


 負けるだろ。止めなきゃ。

 ところがリヨネはアラクネの横を走り抜けていった。


「戦うんじゃないのか?」

「だから戦いに行ったのよ。追いかけるわよ」

「追いかけるの?」

「あの子、これから告白する気よ」


 マジか。俺と深沙央さんは追跡した。リヨネにどんどん離されていく。俺たちの前を集団が横切ろうとした。


「あれ? ココアさんとミサさんなのです。そんなに急いでグエエぇぇ」


 深沙央さんは走りながら、集団の先頭にいたマリッパを担ぎあげた。


「ああ、幻覚のお友達を置いてきてしまったのです」

「マリッパ。透明になったように見える幻覚は使えるかしら」

「ええ? そんな高等な魔法は使えないのですよ」

「だったら周囲から見ると、空色にしか見えなくなる幻覚は使える?」

「空色? 一色だけなら出来るのですよ」

「よし。セミテュラー! 恋路を見守る鎧よ、顕現せよ! スカイダンサー!」


 深沙央さんは空を飛べる鎧を召喚装着した。


「なんなんですよ? この鎧は?」

「説明はあとよ。康史君は私に掴まって。飛ぶわよ!」


 空を飛んでリヨネに追いついた。リヨネの前には学院と兵士養成所を隔てる大きな壁が立ち塞がっている。


「まぁぁぁぁてぇぇぇぇぇ!」


 魔王の雄叫び。アラクネだ。本気でブルバーを手に入れる気なのか。


「このままじゃブルバーが汚されちゃう。ううぅ」


 壁の前でリヨネは膝を尽きそうだった。その目は絶望に染まりかかる。


「深沙央さん。助けてあげよう。もうアラクネは倒してもいいんじゃないかな」

「マリッパ、今のうちに空色に見える幻覚魔法をかけてもらえるかしら。誰にも気づかれたくないの」

「はいです。それにしても高いところは良い景色なのです」

「ちくしょうっ。リヨネを応援しているのは俺だけかよ!」

「大丈夫よ康史君」

「どの辺が?」

「あんな壁では女を止めることは出来ないわ」


 リヨネの目は……死んでいなかった。


「風よ。大気の精霊よ。空に還りし鳥たちの魂よ。私に苦難を乗り越える翼を与えて。スカイクエストウイング!」


 リヨネを中心に乱気流が起り、一瞬だけ背中に翼が見えたような気がした。そして浮き上がると、ツバメのような早さで空を飛び、壁を乗り越えていった。


「あれは魔法クラスの誰ひとりとして為し得なかった高速飛行魔法なのですよ。試験で披露すれば花丸モノです。現役の魔法士でも難しいのにリヨネちゃんはすごいのです」

「そうこなくっちゃ。追いかけるわよ」

「はいなのです」


 二人とも楽しそうだな。

 空を飛んだリヨネは養成所の校舎にセミのようにくっついた。窓をガンガン叩く。


「ブルバー! ブルバー!」


 窓の向こうでは、ここは四階だぞ。と驚いているヤツらがたくさんいた。その中から爽やかなヤツが出てきて窓を開けた。


「リヨネ。どうしたんだい?」

「私、私ね。ずっとブルバーのことが好きだったの!」


 そのあとの二人の会話は、よく聞き取れなかったけど、部屋にいるヤツらは二人に拍手を送り、二人は恥ずかしそうにしていた。告白は成功したみたいだ。


 学院に戻るとアラクネは猫になっていた。


「突っついて、やっと動いたか。ああ疲れた。屋敷に帰って昼寝しよう」


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