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21.早朝ドキドキお着替えタイム

 俺たちは魔剣とドラゴンを得て、駐在所に戻ってきた。

 扉を開けるとマーヤとシーラが出迎えてくれた。


「お帰りなさい。あれ? 女の子?」

「ここがお兄さんの住処っスか」

「スワロッテ! 何故ここに!」


 スワロッテは人畜無害な吸血魔であることと、人間の財産は盗らないと約束してくれたので解放してやったのだ。馬車に張り付いていたのか?


「泥棒稼業は一時閉店になったので食い扶持の当てが無いっス。だからしばらく世話になるっス」


 なんだと。スワロッテは駐在所の奥に入っていった。


「みなさん初めまして。私はスワロッテ。お兄さんから美味しいものを頂いた見返りとして身体を捧げることにしたっス。よろしくお願いしまス」


 その場にいた女の子たちは静まり返り、そしてヒソヒソと喋り出した。


「みんな違うんだ。スワロッテは魔剣を盗んできて、追手から守るために俺が戦って。そうだ。これが魔剣だ!」

「その魔剣、私が知っているのと違いますね」


 シーカ。意外なところに魔剣に詳しい人がいたよ。


「この魔剣は俺用に進化したんだ。あ、それとドラゴンと同化したんだ。ドラゴン、出てきて挨拶してくれよ。もしもーし」

「康史君、ドラゴンは気まぐれよ。私のエンシェントドラゴンも毎年夏休みの宿題を任せていたら、小学三年生の夏を最後に音信不通になったわ。昨日は久しぶりに会えたのよ」


 深沙央さん。小一から小三までの夏休みの宿題をドラゴンにやらせていたのか。


「つまり康史様の女好きはドラゴンレベルでスゴイってことですね」


 違うんだエリット。ドラゴンに失礼だぞ。それにほかの女の子たちの視線が痛い。もしかして俺って弱いままなんじゃないのか。


――★★★――


「その魔剣、私が知っているのと違いますね」


 吸血魔の国の住居の一室。参謀マンティスは感心していた。

 ドラゴンと同化。魔剣を手に入れて進化させるほどの運と力。これが異世界人の業か。


「ずっと覗いていたいところですが、勘付いている者もいるようですし、そろそろ終わりにしますか」

「マンティス様、いかがなされた」


 彼の前には四人の吸血魔がいた。


「なんでもありません。さて参謀職としては武将ライオラの後釜を決めなくてなりません。そこで私は貴方がた四人のいずれかを推したいと思います。選定方法は人間の国に大きな打撃を与えた者にしましょう。手段は問いません。頑張ってください」


 吸血魔たちは部屋をあとにした。


「次は三大伯爵のあの者にも動いてもらいましょうか。勇者たちがどう出るか。非常に楽しみですね」


――☆☆☆――


 あれは昨日の夜のことだ。大広間でシーカがみんなにこんな事を言った。


「思い出に残るようなことをしたいですね」


 騎士駐在所には多くの人間が身を寄せている。異世界転移してきた俺と深沙央さん、魔法使いのメグさん、元魔王アラクネ、騎士のシーカと妹のシーラ、元泥棒で健全な吸血魔のスワロッテ。そしてエリットやマーヤのようなニセ魔王に誘拐監禁されていた女の子たち。


 ニセ魔王を倒してから10日が経とうとしている。救出した女の子39人中23人が親元へ帰っていった。だが、誘拐時の恐怖や、また誘拐されるかもしれないという不安から、勇者である俺たちから離れたくないという子もいた。

 マーヤのように記憶喪失の子もいれば、エリットのようにここでの生活を楽しんでる子もいる。そんな子が16人。


 でも、ここでの共同生活で心の傷が癒えた子もいる。近いうちに三人の子が親元に帰ることになった。

 女の子たちはシーカやメグさんと仲良くなっていた。特に深沙央さんは命の恩人として女の子から慕われていた。親元に戻れるのは喜ぶべきだけど、お別れするのはちょっと寂しい。俺はなぜか避けられているのでとても寂しい。


 どうせならお別れする前に、なにか楽しいことをしたい。


「じゃあ海なんてどうでしょうか」


 そう言ったのはエリットだ。


「みなさんシプリちゃんを憶えてますよね。すでに家に戻っている子です。彼女の親は海の家を経営しているそうなんです。是非みんなで遊びに来てくれと言っていました。そこで、思い出作りに海に行きませんか」


 シプリちゃんか。たしか褐色の肌をした髪の短い元気っ子だったな。


「あの、いいですか?」


 はい、メグさん。


「連絡もなしに、いきなり大人数で押しかけたら迷惑にならないかしら」

「そこは心配ありません。私はシプリちゃんに念押ししました。本当にみんなで行くよ。突然、何の前触れも無く行くよ、と。そうしたらシプリちゃんに望むところだと返されました。逆にみんなで来ないと抗議しに戻ってくるとも」


 なんだそりゃ。みんなは海と聞いて早くも騒ぎ出している。


「海の家では水着を貸し出しているそうです。さらにみんなで泊まれる大部屋もあります。どうでしょうか」


水着。この世界にもあるんだな。シーカがなんだか悩みだした。


「海ですか。ちょっと遠いですね。予算が。でもニセ魔王の懸賞金やアルマノリッヒさんからの礼金もあるし」


 シーカはみんなと盛り上がっているシーラをチラリと見た。


「よし。お別れ会は海にしましょう」


 はしゃぎだす女の子たち。

 海か。そうだ。俺には彼女がいる。彼女と海に行けるんだ。


 深沙央さんを見る。むこうもこちらを見ていた。嬉しそうに頷いてくれる。やっと彼女のいる夏らしいことが出来そうだ。



 

 行くのであれば、すぐ行こう。そんな感じで翌朝出発しようということになった。

 早朝に出発すれば日が暮れる前に海に着くことが出来るらしい。ちょっと強行スケジュールだけど、楽しい海のためだ。


 俺はベッドで目を覚ました。まだ日は昇っていない。早朝に出発するともなれば、こんな時間から準備せねばならない。


「あ、起こしてしまいましたか」


 メグさんの声が聞こえた。俺のベッドは駐在所の診療室にある。ベッドは三台あって真ん中のベッドは俺が、窓側のベッドはメグさんが使っていた。

ベッドのあいだはカーテンで仕切られている。なんだか保健室みたいな感じだ。


「俺も準備があるんで、丁度良かったです」

「康史さんたちは馬車を用意して下さるんでしたね」


 20人を超える人数で海に行こうにも駐在所の馬車一台では当然足りず、隣村まで馬車を借りに行くことになっていた。その役目を深沙央さんと俺が受け持つことになったのだ。


「ああ、ここにありました」


 カーテンの向こうでメグさんがランプの明かりを灯した。カーテンにメグさんの影がくっきりと映る。

そして、その影が、寝間着を脱ぐのだ。カーテンの向こうに、下着姿のメグさんがいる。いかん、早く服を着てくれ。寝起きのドキドキはヤバいくらいヤバい。


「あら? 下着が無いわ。今日の服も。もう、どこ行っちゃったのかしら。裸じゃ風邪をひいちゃう」


 メグさん、全裸になってから着替える人でしたか。俺はベッドの上で正座して反対側を向いた。メグさんが風邪を引かないように温めてあげたくなるのを必死に堪えていると、逆側のカーテンの向こうがランプの光で明るくなった。


「ふわぁ。そういや海に行くとか言ってたな」


 アラクネか。俺のベッドと壁側のベッドのあいだもカーテンで仕切られている。

カーテンに映るシルエットはアラクネの身体の起伏を露わにする。


「あれ? アタシの服がない。そうか、猫になって服は大広間に置きっぱなしか」


 こいつ、裸で寝てたな。お腹を壊したらどうするんだ。


「アラクネさん、よかったら私の服を着てください」

「おお、悪いな」


 窓側のカーテンからメグさんの手が出てくる。手には昨日の上着。壁側のカーテンからアラクネの手だけ出てきた。


「届きませんね」

「もう少し手を伸ばしてくれ」


 届くわけねーだろ。俺はメグさんの上着を受けとるとアラクネに渡した。


「お、届いた。サンキュ。それにしても康史のヤツ、まだ寝てるのか」

「二度寝しちゃったのかもしれませんね。昨日は大変でしたし。もう少し寝かせといてあげましょうか」


 ビンビンに起きてますが。


「あれ? 服の中にブラがあったぞ」

「そんなところにあったんですか」

「うわぁ。こんなデカいブラはいらねぇよ。返す」


 カーテンの向こうからアラクネの手が。手にはブラが。窓側のカーテンからメグさんの手が伸びる。

 俺は黙ってブラジャーを受けとってメグさんに渡そうとした。そのとき。


「康史君、起きてる? 早く準備しないと海に行けないよ? その、私の水着、見れなくなっても知らないからね」


 深沙央さんだ。なんて甘いモーニングコールだ。そして俺の手にはメグさんのブラジャーだ。なんて甘い匂いがするんだ。


「いま行きます。早く着替えないと。それに康史さんを起こさなくてはいけませんね。康史さん、カーテン開けますよ」


 待ってくれメグさん。俺の手には誤解の塊があるんだ。


「あ、私ハダカでした。服を着ないといけませんね。康史さん、自分で起きてください」


 セーフ。


「康史ならハダカでも大丈夫だって。目を開けたら目潰しすればいいんだ」


 よしてくれアラクネ。それでは何のために起こすんだ。


「え? 康史君、目を開けてくれないの? どうして!」


 深沙央さんが扉を叩き開けて入ってきた。足音が俺のベッドに近づいてくる。足元のカーテンの向こうまで迫ってくる。

 ブラを隠して高速早着替えだ。間にあえ!


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