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10話 女神の幻影

激闘の末、米軍を壊滅的に追い込んたアヌはドナルド・ニクソン副大統領と停戦合意した。



■登場人物の紹介


◇アヌ   ナノマシーン研究開発者であり最初の適合者。ナノマシーン開発自体が彼の細胞を使って行われていた為に高い適合能力を見せるも。。



◇ウトナ   アヌと共にナノマシーンの研究開発を行った科学者。



◇エンキ   エンリルの母



◇エンリル  12歳のアヌとエンキの息子。小さい頃から病弱だつたがナノマシーンによって奇跡的に回復するも暴走するナノマシーンの騒動に巻き込まれてしまう。



◇エルヴィン エンリルの飼っている茶色のトラ猫。



◇ドナルド・ニクソン副大統領  米国副大統領。大統領が暗殺された為にその責務を代行している。

アヌは自身の身を守るために米国の核兵器をことごとく破壊した。



しかし、これが米国の核の傘を剥してしまうことになり、今まで抑えられていた各国の米国への攻撃の抑止力を奪い去っていた。



この頃、ヨーロッパでは米国が所有する核兵器は皆無であり、とてもでは無いがロシアや旧中国、イスラムの国々や南米からの攻撃を抑止するだけのチカラは無かった。





◇  ◇  ◇  ◇  ◇



アヌはドナルド・ニクソン副大統領との停戦合意の後、エンリル達のいないバージニア州のナノマシーン研究機関のとある研究所に来ていた。







研究所の一室





電話をかけるアヌの表情は苦しそうだった。



チカラを放出した事で暴走はある程度回避できていたがそれでも溢れ出るチカラの発散先がなければ遠からず危ないのを自分でも感じていたからだ。



受話器からプルプルと呼び出しの電子音が聞こえる。



もちろん、何のアニメも連想させるものではない。



その電子音が5回目のコールを始めた時にプツリと電子音は途切れて一人の男が電話に出た。



「はい、ウトナ・シュレーディンガーです。」



その声はウトナだ。



アヌ「ウトナ、エンリルの様子はどうだ?」



ウトナ「今の所、大丈夫な様だ。」



ウトナ「君の細胞の中で生まれたナノマシーンは君には100%適合したが君自身が非常に不安定な存在となった。そして他人の中ではナノマシーンはその身に余って暴走した。」



ウトナ「そしてその中間のエンリルはそのどちらでもない反応が出ているんだと思う。」



それを聞いてホッとするアヌ。



アヌ「そうか。。ありがとうエンリルを診てくれていたんだな。」



ウトナ「当然じゃないか!それよりお前は大丈夫なのか?」



ウトナ「こっちは大統領が暗殺されてから戒厳令がしかれて軍のやりたい放題だ。」



ウトナ「全く酷い目にあったよ。。ハハハ。。」



苦笑いをするウトナの顔には複数のアザが出来ていた。



アヌ「すまない。お前には迷惑かけっぱなしだな。。」



ウトナ「お前がいなくなってから世の中大変な事になってるぞ。今どうしたるんだ?」



アヌ「大丈夫だ。政府と和解してバージニアの研究所にいる。」



ウトナ「何!?。。。よかったぁー!どうなる事かとおもったよ!それで軍がここから退いたのか。。」



アヌ「ウトナ、聞いてくれ。俺の今の細胞とナノマシーン、それから軍の研究していたナノマシーンの資料をそっちに送る。それを調べてくれ。」



ウトナ「軍の?あ、ああ。分かった。」



アヌ「連れて逃げた暴走した適合者達は私のオーラにあたると皆死んでしまった。。」



アヌ「加速度的に暴走が始まったみたいだった。」



ウトナ「そうか。。。解らない事だらけだな。。」



アヌ「あぁ、目の前で皆死んでしまった。。。」



アヌ「とにかく細胞と資料を送るのでエンリルの暴走を止めるために役立てて欲しい。」



ウトナ「お前は?お前はこっちに来れないのか?」



アヌ「言ったろう?私のオーラに触れた適合者は皆死んでしまったと。。。」



アヌ「私はそっちには行けない。。。」



ウトナ「そうか。。。」



ウトナ「エンリルも遠からず覚醒が始まるだろう。」



ウトナ「それまでに何か手掛かりがないか全力で探してみるよ。」



アヌ「すまない。ありがとう。」



ウトナ「それから、お前が前に言っていたティアマトについて聞きたい。」



アヌは少し考え込んで



アヌ「。。。言葉にするのは難しいが。。」



アヌ「確かにティアマトと言っていた気がする。」



ウトナ「言っていた?」



アヌ「何か意識の中にもう一つ意識がある様な。。」



アヌ「例えばこの世の全てが理論上存在しているに過ぎないと仮定したならそれらが存在していると認識する意識。。そんな気がする。」



ウトナ「どういう意味だ?」



アヌ「すまない。私も少し混乱している。。。とにかくこの世界ではない何かの意識だ。」



アヌ「覚醒する時に何か女神のような何かに語りかけられたんだ。。。」



ウトナ「女神?幻でも見たのか?」



アヌ「そうかも知れないな。。」



アヌ:そう、あれは幻だったのだろうか?



純粋で完璧なエネルギーの海



無限に生まれる波動



その一つ一つがまるで宇宙そのものだった



その中で意識を感じた



それがティアマトだと直感した



その『女神』はただそこに居た



誰も愛さず



誰も祝福せず



ただチカラの根源として



そこに居た



彼女の生み出す波動の中にはきっと



平穏生活を送る私達もいるのだろう



そういう事が直感的に伝わってきた





アヌの脳裏にはティアマトが強く残っていた。


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