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2話 エンリルとエルヴィン

時を遡ること1000年余り。



強大過ぎるティアマトのチカラが暴走を始めたアヌを食い止めようと米国は軍を動かした。



しかし、そのアヌの圧倒的なチカラの前に成すすべもなく米国陸空軍はまたたく間に壊滅した。



そこで国際連邦議会はアヌの病弱な息子エンリルを手術する様に仕向けてそのタイミングで世界中から一斉攻撃を仕掛ける事を模索する。

さらに時は遡る





その男の子の名はエンリル12歳。



彼は生まれてから一度も病院の無菌室から出た事がない。



生まれつきウイルスや細菌対しての免疫が極めて弱く、ちょっとした風邪でも命に危険が及ぶ重篤な症状になってしまう体質だったからだ。



エンリルはいつも病室の窓の外を見ていた。



一度も出たことのない外の世界が彼にはとても眩しかった。



時折窓から見える犬や猫、鳥たちに触れてみたかった。



しかし、それが叶わない事もよく分かっていてエンリルは一度もそんな事を口にしなかった。



親子で触れ合う事も許されず両親はいつもビニールのカーテン越しにその姿を眺めるしかなかった。



大学の教授でもあった父親のアヌはそんな彼を不憫に思い、数年前から免疫の代わりになるナノマシーンの研究に没頭していた。



そして、アヌは一人の男と出逢った。



当時、同じくナノマシーン研究をしていたウトナだ。



ウトナと出逢ったアヌは水を得た魚の様にその才能を開花させて研究を一気に推し進める。



ナノマシーンによる不老不死と病気からの開放は富裕層や権力者を虜にした。



やがて二人の研究は国家を動かすまでとなり、国家プロジェクトとしてナノマシーン研究所機関が設立された。



二人はナノマシーン研究機関の技術責任者となり、ついにナノマシーンのプロトタイプを完成させる。



そして十分な臨床実験も終わり今まさに人への投与が認められようとしていた。





アヌ「ウトナ、最初の人への投与は私にしたい。」



ウトナ「そうか。。私達の作り上げたナノマシーンは完璧だ。」



ウトナ「ああ、信じている。」



アヌ「何も心配要らない。動物実験でも何も問題なかった。」



二人は自信に満ちあふれていた。



自信の裏にはそれに足りるだけの臨床実験の結果があった。



人の細胞の中でもそれは問題なく動作していた。



そしてウトナはアヌにナノマシーンを投与した。



その時だった。



アヌはナノマシーンを通して何処か遠い世界にある『意思』の様なものを感じた。



それが何だったのかはその時分からなかった。



その後もアヌ自らが行う最終臨床試験は順調にいっている様に見えた。



しかし、アヌは自分の中に何かいる様な自分が自分で無い様な気がした。



しばらくして段々アヌは気性が荒くなっていった。



時より自分でも抑えられない程の破壊衝動が起こった。



しかしこの時はまだアヌ自身はストレスか疲れのせい位に思っていた。



認可が降りると難病の者を優先にナノマシーンが投与された。



しかしアヌの様にナノマシーンが適合した者は僅かで殆どのものは変化が見られなかった。



それでも投与を希望する者は後を絶たなかった。



その僅かな適合者は劇的に病気を回復し、中には若返るものすらいたからだ。



エンリルもこの時投与を受けた。



幸いエンリルは適合して晴れて外の世界へ出れる事になった。



そして初めてビニールのカーテンの外に出た。



エンリルはナノマシーンのチカラにより、筋肉もすぐに補填されリハビリ無しに歩行も可能なほどに回復していた。



エンリルは自分の足で歩いてる両親の前に行く。



エンキは涙が止まらない。



エンリルはこの日、初めて両親に抱きついた。



エンリル「父さん。母さん。僕、外に出れたよ!」



エンキ「エンリル。。。本当に良かった。。」



アヌ「長かった。。しかしこれでやっとこの子も普通に暮らせる。」



そしてアヌがナノマシーン研究機関の近くにある自宅にエンリルを住まわせるとエンリルは見る見る活発な男の子になっていった。



それはこの親子の生涯で唯一の幸せな時間でもあった。



それからエンリルはアヌに猫を飼って欲しいとせがんだ。



すると、ある日アヌが研究機関から帰って来ると玄関で出迎えたエンリルにアヌは話す。



アヌ「今日はエンリルにサプライズがあります。」



エンリル「え!?何?」



初めはキョトンとしたエンリルだがすぐにハッとして



エンリル「ひょっとして!?」



アヌはうなずくと後ろに持っていたバスケットをエンリルの目の前に差し出した。



中には生後2ヶ月くらいの猫の赤ちゃんが入っていた。



その猫は茶色のトラ猫だった。



エンリルは嬉しそうにその子を抱いて



エンリル「わぁ!かわいいなぁ!」



アヌ「名前をつけてあげなさい。」



エンリル「僕がつけてもいいの!?」



アヌ「あぁ。」



エンリル「じゃぁ。。」



少し考え込んで



エンリル「エルヴィンにする!」



か細い声で鳴くエルヴィン



エンリル「お前は今日からエルヴィンだ!」



アヌ「宜しくな。エルヴィン。」



アヌ「エルヴィンと良い友になってくれ。」



エンリル「父さんありがとう!」



エンリル「母さんにも紹介しなくちゃね!」



エンリルはこの時本当に楽しそうだった。





そして1ヶ月程経ったある日、ナノマシーンの投与を受けた者達に次々と異変が起こる。



初めに適合出来なかった者全てが全身から血を流して突然死亡したのだ。





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