51話 新たなる目的
バアルへチカラの移譲をする為に青の研究施設に集まったショウ達はショウの心の奥にいる存在『アヌ』の事を知った。
■登場人物の紹介
◇他守ショウ VRMMORPGファーストアドベンチャー18からログアウトしたらゲームのキャラクターのまま現実世界に出てきてしまう。ナノマシーン適合者としてはこの世界最強のSSSS。緑から青いオーラにランクアップした。
銀髪に角があり、光を帯びた赤い目、口元には牙が見え、少し尖っ耳に爬虫類系の尻尾がある魔族設定のキャラクターだが中身の本人は童顔を気にする黒髪の28歳。
◇アナト ショウと一緒にサークルアンデッドと戦ったイシュタルの娘。ナノマシーン適合者ランクはSS。ショウからのチカラの移譲により赤いオーラからオレンジ色のオーラにランクアップした。
◇バアル アナトの兄。ナノマシーン適合者ランクはSS。オレンジ色のオーラを持つ。
◇ミネルバ ショウが呼び出した『ファーストアドベンチャー18のフェイスと呼ばれるパーティーメンバー補填用のNPC』召喚士。ゲーム設定ではヒュムリア王国の王女。
◇アヌ ショウの中にいる謎の声の主。最初のナノマシーン適合者でもあり、氷河期を引き起こした紫のオーラを持っ最強の存在。ナノマシーンランクは計り知れない。
◇エンキ博士 かつてイシュタルを覚醒させたナノマシーン開発者。200年以上の時を超えてコールドスリープより目覚める。サークルアンデッドを使って大量の人体実験を繰り返した。
◇エンリル エンキの子。エンキ同様どこかでコールドスリープにより眠っている。『時期』が来ればエンキは復活させる予定だったのだがかつて罪を犯したエンリルを隠す為にエンキとは別の場所で眠っている。
◇人面魚 他の人魚達とは違って人型のイシュタラから人魚にメタモルフォーゼしようとして人面魚になっている人魚。ヤムの配下で人魚の里周辺の監視や伝令を主な任務としている。
体は人で顔だけ人面魚の半魚人バージョンもある。
◇オンジ アナトが名付け親となったサークルアンデッドの地下施設で捕らえられていた培養細胞から生まれた赤ん坊。ナノマシーンウイルスの耐性を持つ。
◇エルヴィン 生きているのか死んでいるのかわからない不思議な猫。
◇ヤム 神殿議会長。外海の魔神と呼ばれる回遊族のイシュタラ出身。人間殲滅作戦を考案。一応バアル達を立ててはいるが実質支配している。
◇クレピオス アスタルトの父親。青の研究施設でナノマシーンの研究をしている。
ナノマシーン適合者特有の様々な病症に有効な薬を開発している。
元々、イシュタラではなかったが後に適合した様だ。
詳細は不明。
エルヴィン「準備はいいかい?」
ショウ「ああ!」
バアル「いつでも」
ミネルバ「よろしくてよ。」
テンポよく返事が返る中、アナトは不安そうにショウを気遣う。
アナト「無理はするなよ。」
ショウ「ありがとう。今回は一回だけだし例え途中でアヌが起きても大丈夫だ。」
ショウ「エルヴィンもいるしな?」
エルヴィン「ま、頼りにしてくれていいよ。」
ショウ「ミネルバ、手順は前回と同じだ。」
ショウ「俺が移譲を始めると同時にキュアオールを頼む。」
ミネルバ「ハイハイ。。今度は裂けないで下さいましね。」
ミネルバ「裂けたtamoriなんて酒のツマミにもなりませんわ。」
ショウ:やっぱこのバージョンのミネルバは腹立つなぁ。。
ショウ:もう一回引っ込めたら次はどんな感じなんだろ。。?
などと考えている間にすっかり準備は整う。
バアル「やってくれ。」
突然と言われてハッとしたショウは
ショウ「おっと。。」
ショウ「ミネルバ、行くぞ!」
と、急にシャキッとするとその体はすぐに輝き始めた。
それと同時にミネルバも魔法詠唱ポーズに入る。
三人が光に包まれる中、ミネルバは治癒魔法キュアオールを放った。
しばらくすると光は治まり、黄色いオーラを纏ったバアルの姿がそこにあった。
バアル「これが。。」
感動を隠し切れない様子でバアルは自身の手のひらを見ていた。
アナト「兄様。。。凄い。。」
アナトは思わず羨望の眼差しでバアルを見つめる。
一方、エルヴィンはショウをじっと見つめて
エルヴィン「ふーむ。治癒魔法とやらで体力は回復しているが他守、君のナノマシーンはその大半を失い、オーラは非常に弱っている。。確かに今アイツに干渉されたら残りのオーラでは抑えが効かないかも知れないね。」
アナトはエルヴィンの声で我に返るとまた心配そうにショウを見る。
エルヴィン「ま、それでも君も以前よりレベルアップしているから前ほどの事にはならなそうだ。」
それを聞いてホッとしたアナトは
アナト「他守、この後またモフモフで休め。」
ショウ「だ、大丈夫だよ。エルヴィンもああ言ってるし」
アナト「ダメだ。無理矢理でも連れて行く。」
ショウ「あ、ハイ。。すいません。」
アナト「何故あやまる?」
ショウ「何となく。。。怒ってるみたいだから。。」
とショウが苦笑いしているとアナトは
アナト「当然だ。ちゃんと休まないと今度こそ死んでしまうぞ?」
ショウ「わ、わかった。。」
そんな二人をバアルは複雑な気持ちで見ていた。
バアル:エルヴィンの話が本当だとしたら事の次第では紫のオーラを持つアヌとやらが他守ショウの体を乗っ取ってエンキ側につく可能性がある。。。
バアル:その事はヤムにも半魚人からもう伝わっているだろう。。
チラリと半魚人を見ると相変わらずずっとボソボソ言っている。
ここは直接会話も使えないのにどうやって状況を伝えているのだろうとバアルは疑問に思っていた。
バアル:そしてこのエルヴィンと言う猫も実際得体が知れない。。どこまで本当の事を言っているのか
バアル:敵なのか味方なのか。。?
バアル:もっと情報が欲しいな。。
バアル「他守ショウ。ちょっといいか?」
ショウ「ん?ああ。」
バアル「君の実家に行く件、私も同行したい。」
ショウ「いいけど。。これから忙しいんじゃないのか?」
バアル「どの道、停戦交渉の件での81区には行くしね。」
バアル「それに君の出自については私も興味がある。」
バアル「君の生まれた年は何年だい?」
ショウ「E.C.220年だ。」
バアル「やはり。。」
ショウ「何か?」
バアル「その年は空のベールが晴れて氷河期が終わりに向かった年だ。。。」
バアル「エルヴィンの話と辻褄が合う。。」
エルヴィン「そりゃぁそうさ。」
バアル「他守ショウ、君が生まれたから氷河期が終わった。」
バアル「エルヴィン、そう言う事か?」
エルヴィン「ま、そうなるね。」
ショウ「え?何それ?」
アナト「まさか。。そんな。。?」
バアル「皆で君の謎を解明しに行こう。」
バアル「君が世界を救う者か世界を破滅させる者か私は知りたい。」
ショウ「ええ?そんな大袈裟な話??」
エルヴィン「向こうもきっと今君を血眼になって探してるよ。」
ショウ「は?アイツら俺を殺そうとしたんだよ?」
エルヴィン「氷河期が終わったと言う事実で君の存在は半分予見されてたさ。」
エルヴィン「それにサークルアンデッドの施設を吹き飛ばしたチカラを見れば気がつくよ。」
ショウ「なんでお前がそんな事わかるんだよ?大体その時お前は居なかったじゃないか?」
エルヴィンは自慢げに言う。
エルヴィン「そりゃぁそうさ、オイラは特別だからね!」




