50話 アヌ
サークルアンデッドとVRMMORPGファーストアドベンチャー18の正体を知ったショウ達は打倒サークルアンデッドを胸にイシュタラの国へとやってきた。
剛本は自らサークルアンデッドの開発したナノマシーンウイルスにかかり、被験者から人の適合者への感染を再現してナノマシーンウイルスの血清剤の効果を試そうと闘病生活を送った。
そしてついに皆を苦しめていたナノマシーンウイルスの血清剤は完成する。
■登場人物の紹介
◇他守ショウ VRMMORPGファーストアドベンチャー18からログアウトしたらゲームのキャラクターのまま現実世界に出てきてしまう。ナノマシーン適合者としてはこの世界最強のSSSS。緑から青いオーラにランクアップした。
銀髪に角があり、光を帯びた赤い目、口元には牙が見え、少し尖っ耳に爬虫類系の尻尾がある魔族設定のキャラクターだが中身の本人は童顔を気にする黒髪の28歳。
◇アナト ショウと一緒にサークルアンデッドと戦ったイシュタルの娘。ナノマシーン適合者ランクはSS。ショウからのチカラの移譲により赤いオーラからオレンジ色のオーラにランクアップした。
◇バアル アナトの兄。ナノマシーン適合者ランクはSS。オレンジ色のオーラを持つ。
◇ミネルバ ショウが呼び出した『ファーストアドベンチャー18のフェイスと呼ばれるパーティーメンバー補填用のNPC』召喚士。ゲーム設定ではヒュムリア王国の王女。
◇剛本剛 イ特特殊攻撃部隊『D』リーダー。イシュタラの議員の決起により、ティアマトの赤いオーラに目覚めてナノマシーン適合者ランクはSSにランクアップした。
◇エンキ博士 かつてイシュタルを覚醒させたナノマシーン開発者。200年以上の時を超えてコールドスリープより目覚める。サークルアンデッドを使って大量の人体実験を繰り返した。
◇エンリル エンキの子。エンキ同様どこかでコールドスリープにより眠っている。『時期』が来ればエンキは復活させる予定だったのだがかつて罪を犯したエンリルを隠す為にエンキとは別の場所で眠っている。
◇イシュタル アナトとバアルの母であり、全てのイシュタラに尊敬、崇拝されるイシュタラ達の女神。イシュタラの国を作り、放射能汚染から低ランクのイシュタラと魚たちを守るために命を落とした。
◇人面魚 他の人魚達とは違って人型のイシュタラから人魚にメタモルフォーゼしようとして人面魚になっている人魚。ヤムの配下で人魚の里周辺の監視や伝令を主な任務としている。
体は人で顔だけ人面魚の半魚人バージョンもある。
◇オンジ アナトが名付け親となったサークルアンデッドの地下施設で捕らえられていた培養細胞から生まれた赤ん坊。ナノマシーンウイルスの耐性を持つ。
◇エルヴィン 生きているのか死んでいるのかわからない不思議な猫。
◇クレピオス アスタルトの父親。青の研究施設でナノマシーンの研究をしている。
ナノマシーン適合者特有の様々な病症に有効な薬を開発している。
完成したナノマシーンウイルスの血清剤を投与すると剛本はまたたく間に回復した。
そして、青の研究施設に収容されていた100人を超える被験者達も全員回復して晴れて自由の身になった。
被験者達はイシュタラの国への亡命をこぞって希望した。
しかし、その半数は女神の門の試練を通れずに人魚の里近くで住むことになる。
中にはサークルアンデッドに強い恨みを抱き外海の魔神への加入を希望する者もいた。
剛本は回復すると直ぐにショウ達に礼だけ言うとろくに会話もしないまま急いでイ特へと帰っていった。
そんな中、ショウはこのイシュタラの国での最後の仕事をしようとしていた。
バアルへのチカラの移譲である。
チカラを渡された者はそれに適合する為に過酷な激痛に耐えなければならず、渡した者も一度自分の血液や免疫を全部渡してしまうかの如く衰弱する。
移譲を受けるとナノマシーンはお互い激しく衝突する。
そして成功すれば共生して元の能力とプラスで新しい能力を得る。
失敗すれば強い方のナノマシーンだけが残るか、細胞や遺伝子自体が損傷して死に至る事もある。
この激しい損耗をミネルバの治癒魔法で治癒しながら負担を軽減して行うというものだ。
前回はショウの心の奥底で謎の声がした後、ショウ自身が一度は絶命する程の事態に陥った。
そして、今回は
相変わらずイシュタラの国には入れないショウは女神の門の外で一番イシュタル神殿の防御レベルに近い青の研究施設でバアル達と会うことになった。
施設は今やクレピオスとオンジしか居ない寂しい場所だ。
そんな施設の診察室にその日はショウとミネルバとアナト、それからクレピオスとどこからかやって来た半魚人それにエルヴィンの姿があった。
前回の事もあり診察室には緊張感が漂っている。
そんな中、一番緊張感のないのがショウ自身だった。
ショウは何となく分かっていた。
自分の中には何かとてつもない大きなものがいる事を。
『それ』が起きている時に移譲をすると抵抗力のなくなった体は『それ』に耐えきれず崩壊してしまう。
しかし、『それ』は自分を入れる器としてショウを守ってもいた。
ショウは『それ』が自身の目的を果たす前にいきなり自分を消滅させたりしない事に気が付いていたのだ。
アナト「他守、本当に大丈夫なんだな?」
ショウ「あぁ。今は大丈夫だ。」
ショウ「な、エルヴィン。そう思うだろ?」
エルヴィン「ふむ。。そうだね。今なら大丈夫そうだ。」
エルヴィン「それに今回はオイラがいるからね!」
アナト「お前は前回もいただろう?」
エルヴィン「いや、他守にとってはいなかったのさ。」
エルヴィン「それはこちらからも干渉出来ない事を意味するのさ。」
アナト「一体何を言ってるんだ?」
ショウ「。。。そこは俺もよくわからない(汗)」
ショウ「でも、今は『それ』の存在を感じない。それは確かだ。」
エルヴィン「アイツのチカラは強大だが今はオイラと同じで存在が不安定だからね。活動周期があるのかも知れないね。」
アナト「お前たちは一体何を話している?そろそろ教えてくれないか?」
ショウ「。。。そうだな。でも実際俺もよく分からないんだ。」
ショウ「ただ、俺の中に誰かいる。」
ショウ「それが俺の強すぎるティアマトのチカラとか、こないだの暴走とかに絡んでいる事は確かだ。」
ショウ「エルヴィン、君は色々知ってそうだけど。。」
ショウ「話してくれないか?」
エルヴィン「ふむ。」
エルヴィンは少し考えこんでから
エルヴィン「少し、昔話をしよう。」
と、話始めた。
エルヴィンの話 ◇ ◇ ◇
氷河期の訪れる前の事。
これはオイラが人間だった頃の記憶だ。
かつて、世界は青い空と緑あふれる素晴らしい世界だった。
人々も豊かで夜も明かりが絶えず世界は人の為にあったと言っても過言ではなかった。
そこに世界で初めてのナノマシーン適合者が誕生した。
いや、覚醒者と言った方がいいかもしれない。
名を『アヌ』と言う。
覚醒後、彼の気性は確かに荒くなったが彼自身の正義は確かにそこにあった。
しかし、強すぎるチカラを持ったアヌとその他の適合者を世界は危険視すると、適合者全てを隔離して迫害したんだ。
そしてアヌは世界を相手に一人で戦った。
戦いの最後に世界中の核兵器と当時の進んだ科学兵器の攻撃を一身に受けて彼の身は砕け散った。
その身にまとっていた紫色のティアマトのオーラは天に舞い上がって地球をすっぽり包みこむと太陽の光が遮られ。。
世界は長い氷河期に入ったんだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
バアル「そ、そんな。。それじゃぁまるで。。」
半魚人「ボソボソボソボソ」
エルヴィン「残された場所にはたまたまそこで死んでいた猫と融合してしまった存在自体が揺らいでいるオイラと。。。エンキ親子だけだったよ。」
アナト「エンキだと?」
アナト「それはいつの話だ?」
エルヴィン「もうかれこれ1000年位は経つかな?」
ショウ「その『アヌ』って言うのがあの声の主か。。。」
ショウ「今の話からしてアヌはエンキと君を守ったと言う事か?」
エルヴィン「オイラはついでみたいなものだね。」
アナト「じゃぁそのアヌって言うのはエンキの味方と言う事か?」
エルヴィン「そうさ。だからエンキはアヌを復活させようと躍起になってナノマシーン開発に没頭した。」
エルヴィン「何度も何度も。。時代を飛び越えて。。」
バアル「そんな事が。。。」
ショウ「それじゃエルヴィン、君は誰の味方なんだ?」
ショウ「今は俺たちに加勢してくれてるみたいだけど。。?」
エルヴィン「。。。そうだね。。後始末がつけたいのかもね。」
エルヴィン「オイラ、アヌをあんな風にしてしまった事を悔いているのかも知れない。」
バアル「他守ショウはこれからどうなるんだ?」
不安そうなバアル
エルヴィン「ま、手はあると思ってるよ。」
エルヴィン「他守、これが終わったら君の実家に連れて行ってくれないか?」
エルヴィン「君の出自に重要な事か隠されているはずだ。」
ショウ「そう言えばアヌもそんな事を言っていた様な。。。」
エルヴィン「さ、オイラの話はここ迄だ。アイツが起きないうちに移譲をしてしまうよ!」




