16話 外海の魔神
ゲームの中のキャラクターの姿と能力のまま現実世界に出てきた他守ショウ。
サークルアンデッドとVRMMORPGファーストアドベンチャー18の正体を知ったショウ達は打倒サークルアンデッドを胸にイシュタラの国へとやってきた。
しかし、イシュタラの国の入国で女神の門の試練に失敗、近くにある人魚の里で修行をする事になった。
一方、剛本はエルヴィンという不思議な猫に出会い街を目指してシダーの森に入り、森の守護者フワワと対峙した。
■登場人物の紹介
◇他守ショウ VRMMORPGファーストアドベンチャー18からログアウトしたらゲームのキャラクターのまま現実世界に出てきてしまう。ナノマシーン適合者としてはこの世界最強のSSS。緑色のオーラを持つ。
銀髪に角があり、光を帯びた赤い目、口元には牙が見え、少し尖っ耳に爬虫類系の尻尾がある魔族設定のキャラクターだが中身の本人は童顔を気にする黒髪の28歳。
◇アナト ショウと一緒にサークルアンデッドと戦ったイシュタルの娘。ナノマシーン適合者ランクはSS。赤いオーラを持つ。
◇バアル アナトの兄。ナノマシーン適合者ランクはSS。オレンジ色のオーラを持つ。
◇ミネルバ ショウが呼び出した『ファーストアドベンチャー18のフェイスと呼ばれるパーティーメンバー補填用のNPC』召喚士。ゲーム設定ではヒュムリア王国の王女。
◇剛本剛 イ特特殊攻撃部隊『D』リーダー。ナノマシーン適合者ランクはA
◇イシュタル アナトとバアルの母であり、全てのイシュタラに尊敬、崇拝されるイシュタラ達の女神。イシュタラの国を作り、放射能汚染から低ランクのイシュタラと魚たちを守るために命を落とした。
メロウ
小さな魔法の帽子をかぶっているショウのメタモルフォーゼの訓練を指導する事になった人魚。
笛吹いて人を魅了する事もある。
エルヴィン 生きているのか死んでいるのかわからない不思議な猫。
ポン太 シダーの森の住人。エルヴィンを生きていると認識している。見た目は可愛らしい小狐。
フワワ シダーの森の守護者。獅子の頭にドラゴンの口胸から滝のように水の溢れ出る魔神。
ヤム 神殿議会長。外海の魔神と呼ばれる回遊族のイシュタラ出身。
森の守護者フワワは語る。
『このイシュタラの国は大陸と大陸に挟まれた言わば広大な入り江にある。』
『イシュタル様からかつて伺った事がある。。』
『人間の神話によればこの辺りの海は巨大な洪水によって一夜にして生まれたと伝えられている。その時、方舟を作っていた者だけが難を逃れて東に流れ着いたそうだ。』
『そんなこの地にこの様な生命最後の命を繋ぐ奇跡の源泉があるのはここに『方舟』を作れと言う神の意思やも知れぬとイシュタル様はここにイシュタラの国を創造し安寧を求めた。』
『しかし、その時既に人間に深い恨みを持つ者達や度重なるイシュタル様への追撃に業を煮やした者達はイシュタル様の元を離れて独自に人間達に報復を行っていた。』
『その者達は広大な外海にて自らを魔神と呼び、世界中の人間達に鉄槌を下した。』
『そして、人間達の住む巨大なカプセル群を滅ぼした後はこのイシュタラの国に戻ることなくしばらく回遊して暮らしていた。』
『しかし、外海は生き物の全くいない極寒の世界。彼らは目的を失い、ついには氷の中で200年以上の長き眠りについたのだ。』
『しかし、そんな彼らも氷河期が終わると次々に復活した。』
『そしてイシュタル様がその身を呈して核の汚染から皆を守っていると聞き及び、イシュタル様の身を案じた外海の魔神達はこのイシュタラの国と魔神達の仲介役としてヤムを寄越した。』
『しかし、その時にはもうイシュタル様の命は尽きかけていた。』
『皮肉にも外海の魔神達が滅ぼした人間達が置き去りにした原子力発電所とその廃棄物によって世界は汚染された。』
『汚染された世界に行き場を失った動物達やイシュタラ達を救うためにイシュタル様はその身を捧げたのだ。』
『しかし外海の魔神達は自分達の愚行を鑑みなかった。』
『彼等はイシュタル様をその様に追い込んだのは人間達のみとし逆上した。』
『その時にはもはやヤムと外海の魔神達を止める力はイシュタル様にも残っていなかった。』
『神殿と街の守護者バアルも当時は今のアナト程の能力だった。ヤム達外海の魔神達猛者衆を抑える力はバアル達にもありはしなかった。』
『そして人間殲滅を謳うヤムとイシュタル様の意思を尊重して戦い以外の道を模索するバアルは半目し合っていた。』
『それを憂いたイシュタル様は敢えてヤムを神殿議会長に据えて二人を仲裁し御身がお隠れになった後のイシュタラ同士の争いを回避されたのだ。』
『今はイシュタラの国の後継者はゆくゆくはバアル。しかし実権はヤムという状態だ。』
『イシュタル様がお隠れになった後、この国は悲しみに包まれた。』
『そしてバアルの陣営からもヤムの人間殲滅に賛同する声が次々に出た。』
『しかし、イシュタル様の意思を尊重しようと言う声が国内ではやはり多数でもあった。』
『バアルがそのまま後継となっていれば恐らくヤムは反乱を起こしたであろう。。。』
フワワはため息をつく。
『。。。人間よ。』
フワワは『その目を見た者は死を意味する』とまで言われた恐ろしい目でじっと剛本を見た。
『目に迷いは無い様だな。。』
『女神の門にはイシュタル様の意思が宿ると言われている。』
『そなたは女神の門の番人の真の姿を見たか?』
剛本は静かに頷いた。
剛本「。。。バアルの様に神々しくアナトの様に美しい、女神の様な姿だった。」
『。。。そうか』
『。。。弱き人間よ。我はイシュタル様の意思にこそこの命を掛けて付き従う。』
『いいだろう。街へ行くがいい。』
剛本の表情がにわかに明るくなったのを見てフワワはポン太に
『ポン太、お前は猫が見えた様だな。』
ポン太「は、ははあ!」
『お前はこの者らについて参れ。』
『追って顛末を知らせよ。』
ポン太「は!御意にございます!」
『ウム。』
『一つ忠告しておく。ヤムには会うな。』
『人間と知れれば問答無用で殺されよう。』
剛本が頷くとフワワは少し間をおいて
『フッ。。バアルめ、我を試しおったか。』
そう言うと辺りは霧に包まれてフワワは何処ともなく消え去った。
気が付けばそこは森の出口だった。
目の前には、ほんの数キロ先にイシュタラの街が広がっていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方、メタモルフォーゼの修行をしていたショウ達はまた内臓丸見えのスライムになることを恐れて先に皮膚の色を変える修行をしていた。
そこには皮膚が緑色になって怪しく目を赤く光らせるショウの姿があった。
ショウ「で、出来た!」
メロウ「うわぁ。。」
ミネルバ「気持ち悪いですわ。。」
メロウ「頭に触覚とか生えてそうですね。。」
ミネルバ「ちょっと髪の毛剃ってみてもらえません?」
ショウ「は?何言ってくれてんの?」
ミネルバ「目から怪光線が出てますわよ?」
ショウ「いや、出てねーし。つーかこれ一応成功でしょう。。?」
ミネルバ「。。。そうなんですの?」
メロウ「。。ええ」
ミネルバ「そしてまたどうせ元に戻れないんでしょう?」
ショウ「あ。。。」
こちらはまだまだ先が長そうであった。。。
そして、時を同じくして神殿の方でもひと悶着。




