15話 森の守護者フワワ
ゲームの中のキャラクターの姿と能力のまま現実世界に出てきた他守ショウ。
サークルアンデッドとVRMMORPGファーストアドベンチャー18の正体を知ったショウ達は打倒サークルアンデッドを胸にイシュタラの国へとやってきた。
しかし、イシュタラの国の入国で女神の門の試練に失敗、近くにある人魚の里で修行をする事になった。
一方、剛本はエルヴィンという不思議な猫に出会い街を目指してシダーの森に入った。
■登場人物の紹介
◇他守ショウ VRMMORPGファーストアドベンチャー18からログアウトしたらゲームのキャラクターのまま現実世界に出てきてしまう。ナノマシーン適合者としてはこの世界最強のSSS。緑色のオーラを持つ。
銀髪に角があり、光を帯びた赤い目、口元には牙が見え、少し尖っ耳に爬虫類系の尻尾がある魔族設定のキャラクターだが中身の本人は童顔を気にする黒髪の28歳。
◇バアル アナトの兄。ナノマシーン適合者ランクはSS。オレンジ色のオーラを持つ。
◇エアバニー 81区警備局イシュタラ対策部特殊捜索1課(通称イ特)課長。役職は警視正。81区の英雄。ナノマシーン適合者ランクはS
◇剛本剛 イ特特殊攻撃部隊『D』リーダー。ナノマシーン適合者ランクはA
◇イシュタル アナトとバアルの母であり、全てのイシュタラに尊敬、崇拝されるイシュタラ達の女神。イシュタラの国を作り、放射能汚染から低ランクのイシュタラと魚たちを守るために命を落とした。
エルヴィン 生きているのか死んでいるのかわからない不思議な猫。
ポン太 シダーの森の住人。エルヴィンを生きていると認識している。見た目は可愛らしい小狐。
フワワ シダーの森の守護者。
エルヴィン「他の人が見えないんじゃぁないよ。他の人は僕が死んでいると認識してしまったんだよ。だからもう視界にも入っていない。」
ポン太「そんなバカな事があるか?現に今お前は目の前にいるではないか?」
エルヴィン「君がそう思ったからそうなったのさ。」
剛本「何故、そう思うとそうなるんだ?」
エルヴィン「この世の物は全て本当はそんな物なんだ。僕はそれがたまたま固定せずに重ね合わさって存在しているだけ。」
剛本「さっぱり解らん。」
エルヴィン「考えてもわからないよ。そういう物として受け入れるしかないんだ。」
ポン太「答えになっとらんぞ。」
エルヴィン「僕にもどうしようもないのさ。」
剛本はやれやれと言った感じで首をふった。
剛本「はぁ。。もういいわかった。俺は細かい事は気にしない。お前は俺やそこのポン太?にとっては生きている。」
剛本「それは紛れもなくそうだ。もうそれでいい。」
エルヴィン「ありがとう。」
ポン太「わしは全然解らんぞ!そんなのあるか!」
そして剛本に詰め寄る。
ポン太「それにお前は何だ?この森に何しに来た?ここはフワワ様の統べる森じゃ。用がないならとっとと出ていけ!」
剛本「。。。俺はあるイシュタラを探している。この森に用がある訳じゃない。この向こうの街へ行きたいだけだ。」
ポン太「イシュタラ探しじゃと?なんの為に?」
剛本「父親の仇だ。」
ポン太「なんじゃと?この国のイシュタラはイシュタラ同士で殺し合ったりせん。何かの間違いじゃないのか?」
剛本「。。。俺は。。人間だ。」
森がザワザワとする。
森の影「に、人間?」
森の影「人間じゃと?」
森の影「ば、馬鹿な。。女神の門を人間が通ったと言うのか?」
森の中にどよめきが広がるのが分かった。
鳥たちは飛び立ち遠くの動物達は姿を隠した。
そして森にドスの効いた低い大声が響き渡った。
『にぃーんげぇーんだぁとぉぉ!?』
ポン太「フワワ様だ!控えろ!」
そう言うとポン太はひれ伏した。
その直後、身の丈5メートル以上の大男が剛本達の身の前に飛び出してきた。
獅子の顔に突き出た口は龍の如く。
体は人の様であり獣の様でもある。
その口からは炎が漏れ胸からは水が滝のように溢れ出ていた。
『我はフワワ。イシュタル様が創りし森の守護者なり。』
『人間如きが如何なる理由有って我が森にいる?』
『心して答えよ。守護者はイシュタラの法の外にいる。』
剛本は、本能的に答えを誤ると死を意味する事を悟った。
剛本「俺は、バアルに連れられてイシュタラの国へ来た。そして女神の門に認められて門をくぐりここに至った。」
『女神の門が貴様を認めただと?嘘を言え!』
剛本「彼女はこう言った。猛る者達を諌めてくれと。」
『猛る者達。。』
剛本「俺はここに親父の仇を探しに来た。」
『何ぃ!?』
剛本「しかし、それは殺し合う為じゃない。解り合う為だ!」
『解り合うだと?』
剛本は頷く。
剛本「俺は人の世界を守る為に自ら命をかけてナノマシーンの適合者となった。」
剛本「しかし、イシュタラ自身もそのナノマシーンの犠牲者達だと知った。」
剛本「バアルは何故ここに俺を連れて来た?女神の門は何故俺を受け入れた?」
剛本「最初は俺の隊長に頼まれたからだと思っていたが多分それは違う。」
剛本「恐らくこの国は今一枚岩じゃない。」
『何故そう思う?』
剛本「俺の力はイシュタラに比べたら微弱だ。仇を見つけたとしても俺にどうこう出来るとはとても思えない。」
剛本「しかし、会えば何か風が起こるんじゃないか?」
剛本「バアルも女神の門もそれに何かしらの期待をしたのではないか?」
剛本「俺は今、そう思っている。」
剛本「だから命を掛けてでも会いに行く。」
『それが女神の門の意思か。。』
『。。。』
張り詰めた空気がしばらく続く。
『確かに今はイシュタラの国は割れている。』
『人間殲滅作戦を推進する神殿議会長ヤムが実権を握っているのだ。』
『ヤムはこの国のイシュタラではない。外海の魔神と呼ばれる回遊族のイシュタラだ。』
剛本「魔神。。!?」




