10話 剛本の旅立ち
ゲームの中のキャラクターの姿と能力のまま現実世界に出てきた他守ショウ。
サークルアンデッドとVRMMORPGファーストアドベンチャー18の正体を知ったショウ達は打倒サークルアンデッドを胸にイシュタラの国へとやってきた。
しかし、イシュタラの国の入国で女神の門の試練に失敗、近くにある人魚の里で修行をする事になった。
■登場人物の紹介
◇他守ショウ VRMMORPGファーストアドベンチャー18からログアウトしたらゲームのキャラクターのまま現実世界に出てきてしまう。ナノマシーン適合者としてはこの世界最強のSSS。緑色のオーラを持つ。
銀髪に角があり、光を帯びた赤い目、口元には牙が見え、少し尖っ耳に爬虫類系の尻尾がある魔族設定のキャラクターだが中身の本人は童顔を気にする黒髪の28歳。
◇アナト ショウと一緒にサークルアンデッドと戦ったイシュタルの娘。ナノマシーン適合者ランクはSS。赤いオーラを持つ。
◇バアル アナトの兄。ナノマシーン適合者ランクはSS。オレンジ色のオーラを持つ。
◇ミネルバ ショウが呼び出した『ファーストアドベンチャー18のフェイスと呼ばれるパーティーメンバー補填用のNPC』召喚士。ゲーム設定ではヒュムリア王国の王女。
◇剛本剛 イ特特殊攻撃部隊『D』リーダー。ナノマシーン適合者ランクはA
◇イシュタル アナトとバアルの母であり、全てのイシュタラに尊敬、崇拝されるイシュタラ達の女神。イシュタラの国を作り、放射能汚染から低ランクのイシュタラと魚たちを守るために命を落とした。
メロウ
小さな魔法の帽子をかぶっているショウのメタモルフォーゼの訓練を指導する事になった人魚。
笛吹いて人を魅了する事もある。
試練に成功した剛本はイシュタラの国の入口に立っていた。
そこは一面に草が生い茂り、剛本のいる所から森を望み街の方に一本道が伸びている。
その脇には街路樹が点々と規則的に生えていた。
彼方にそびえ立つ神殿と周りの街は森の頂の上から悠然と四方を見渡していた。
草原には密閉空間なのにそよ風があり、中にいると神殿の光だけではなく外壁も光を放っているのが分かる。
そしてあたかもここが地上の世界にいるかの様な、そんな錯覚を起こさせる。
そのそよ風の中でバアル、アナト、剛本の3人の空気は不安定に揺れていた。
剛本「俺はイ特の隊員だ。見つけた仇をこの手にかけるかも知れない。それでも疑わないのか?」
バアル「君は女神の門に認められてここにいる。」
バアル「よってこのイシュタラの国の中での行動は法に背かない限り自由だ。」
剛本「背いた場合は?」
バアル「もちろん拘束して裁く。」
バアル「しかし、そうはならないだろう。」
剛本「何故言い切れる?」
バアル「私は女神の門の判断を信じている。」
バアル「門が認めたならそれは母の意思に等しい。」
剛本「。。。」
バアル「だから私も君を信じよう。」
アナト「兄様。。。」
バアル「アナト、解るだろう?」
アナト「。。。はい。」
それでも納得のいかないアナトは剛本に言う。
アナト「今は兄様の言う通りにお前の行動を看過する。だがイシュタラの法に背いた時は私は容赦しないものと思え!」
そう言うとアナトは赤いオーラを出した。
猛烈な威圧感に剛本は自身の皮膚がピリピリとするのが解った。
剛本「。。。そうはならない事を祈るよ。」
バアル「アナト。。いけないよ。」
アナト「。。はい、兄様。。」
バアルに言われてようやくアナトは威圧をやめた。
バアル「さ、アナト!僕たちは神殿に報告に行こう。」
バアル「剛本君。また会おう。」
アナト「。。。」
二人は剛本を残して忽然と姿を消した。
神殿に飛んだのであろう。
一人残された剛本は森へ続く一本道を歩き始めた。
その足取りも表情も決して重くなかった。
しばらく行くと道端に猫が倒れていた。
死んでいるのだろうか?
それとも生きているのだろうか?
猫はピクリとも動かない。
剛本はその猫の前まで来て立ち止まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方、ショウの方はと言うとちょっと困った事になっていた。
青ざめるメロウとミネルバ。
ミネルバ「tamori。。。」
メロウ「ど、どうしてこんな。。?」
ショウ「。。。。」
ショウ「俺はどうやらスライムになってしまった様だ。。。」
メロウ「こ、これがスライムだと言うの。。??」




