6話 剛本の試練
ゲームの中のキャラクターの姿と能力のまま現実世界に出てきた他守ショウ。
サークルアンデッドとVRMMORPGファーストアドベンチャー18の正体を知ったショウ達は打倒サークルアンデッドを胸にイシュタラの国へとやってきた。
そしてショウと剛本はイシュタラの国の入る為の試練に挑む。
■登場人物の紹介
◇他守ショウ VRMMORPGファーストアドベンチャー18からログアウトしたらゲームのキャラクターのまま現実世界に出てきてしまう。ナノマシーン適合者としてはこの世界最強のSSS。緑色のオーラを持つ。
◇アナト ショウと一緒にサークルアンデッドと戦ったイシュタルの娘。ナノマシーン適合者ランクはSS。赤いオーラを持つ。
◇バアル アナトの兄。ナノマシーン適合者ランクはSS。オレンジ色のオーラを持つ。
◇エアバニー 81区警備局イシュタラ対策部特殊捜索1課(通称イ特)課長。役職は警視正。81区の英雄。ナノマシーン適合者ランクはS
◇剛本剛 イ特特殊攻撃部隊『D』リーダー。ナノマシーン適合者ランクはA
◇イシュタル アナトとバアルの母であり、全てのイシュタラに尊敬、崇拝されるイシュタラ達の女神。イシュタラの国を作り、放射能汚染から低ランクのイシュタラと魚たちを守るために命を落とした。
何も見えない真暗な闇。
上も下も右も左も判らなくなる程の深い深い闇だった。
誰かに見られている。
確かにそんな感じがする。
それからしばらくして遠くの方から声がして来た。
聞き覚えのある懐かしい声だ。
それはだんだんと近づいて来てハッと気が付くと剛本は子供の頃に住んでいた家の自分の部屋にいた。
剛本「。。。これは。。幻か?」
その家はいわゆる乾物屋でこじんまりした店の奥と二階に居住スペースがある。
二階には子供部屋があり、妹がよく絵を描いていた。
父は出稼ぎで殆どいなかったがたまに帰っくると外区の土産話を沢山聞かせてくれた。
裕福ではないが幸せな家庭だった。
中学の時のある日、母が真っ青な顔で俺の部屋の前に立っていた。
そして一言、「父ちゃんが死んだ。。」と言って泣き崩れた。
父は出稼ぎ先で死んだ。
父のいたカプセルにイシュタラが大穴を開けたせいでそのカプセルは一夜にして巨大な棺桶と化したのだ。
死者が多すぎて遺骨も何も戻って来なかった。
だから母は父が生きていると信じていた。
その区はもうとうに全滅したというのに。
その時始めて知った。
小さい頃から腕っぷしでは自信があった自分が社会ではとてつもなく弱く小さな存在でしかない事を。
あの強かった母は見る陰もなく覇気をなくし、それから笑った顔を恐らく見たことがない。
元々引っ込み思案だった妹は部屋から出る事も無くなった。
そして俺はイ特の特殊攻撃部隊に志願した。
剛本:。。。。。。
剛本は部屋を出て階段を降りる。
そこには居間があり、母の姿があった。
剛本の心臓の鼓動が早くなる。
母「剛かい?」
母「何故、こんな所に来たんだい?」
剛本「。。。成行きだよ。」
母「成り行きで父ちゃんを殺したイシュタラなんかとお前は慣れあってるのかい?」
剛本「慣れあってなんかないよ。。ただ確かめたいんだ。この目で本当の事を。」
剛本「それに、ここにいれば父ちゃんを殺したイシュタラも探せる。」
母「見つけてどうするね?」
次の瞬間、母の頭が180度回転して剛本の方を向いた。
剛本「うっ!」
母の顔は鬼の形相で剛本を睨んだ。
母「殺すのかい?父ちゃんの仇を殺してくれるのかい?」
剛本は動揺した。
しかし踏みとどまって答える。
剛本「イシュタラの門よ。茶番はお終いだ。」
剛本「俺はきっとそいつと戦うだろう。そして戦って問いたい!」
母の姿をしていた門の化身は見る見る大きくなり光り輝く美しい女性の姿になった。
どこかアナトに似ている。
恐らくこれがイシュタルの姿なのだろう。
門の化身「問うてどうする?どうやっても相容れぬ相手もいよう?」
剛本「相容れるまで諦めない。俺がその者を殺しても俺がその者に殺されても憎しみの連鎖は止まらない!」
剛本「俺はこれまで、もっとイシュタラは感情のない化け物だと思っていた。」
剛本「バアルに会って俺は思った。」
剛本「諸悪の根源は他にいる。イシュタラがここを守りたいのなら、人が滅びの道を避けたいのならお互いもっと違うやり方がある筈だ。」
剛本「怒りに囚われているイシュタラ達も俺たちも私怨を乗り超えて向き合って共に考えなければならない。」
門の化身「。。。」
門の化身「それが今のお前の望みか。。。」
剛本はその真っ直ぐな目で門の化身を見る。
門の化身「。。。嘘をついている目ではないな。」
門の化身「相わかった。お前の入国を認める。」
門の化身「どうか猛る者達を諌めてくれ。。。」
視界が光に包まれて気が付くとのどかな自然の中にいた。
イシュタラの国に入ったのだ。
剛本は壁に駆け寄ってバアルの方を見た。
バアルは何も言わずにただ頷いた。
剛本も何か一皮むけたかの様にすっきりとした顔で頷いた。
それを見届けたバアルはショウに告げる。
「さぁ、他守ショウ君。君の番だ。」




