30話 光の柱
ゲームの中のキャラクターの姿のままログアウト後の世界に出てきてしまったショウ。
ゲーム運営を名乗る男達の言うまま施設へ。
その後、施設を破壊してしまうショウ。
時間は少し遡りサークルアンデッド施設ではイ特捜査官と施設の男達とで激しい戦闘が始まっていた。
イ特特殊攻撃部隊『Ｄ』は地上の敵を突破してエアバニーのいる地下へ。
笹原を倒してホッとしたのも束の間、隊員達を待ち受けていたものは。。
エアバニー「総員！緊急退避！！」
そう叫ぶとエアバニーは『D』を引き連れ、一路来た道を上に目指して走り始めた！
エアバニー：ヤバイ！とにかくヤバイ！DJの示しているエネルギー量がデタラメに大きい！
小町「隊長！？どうしたんですか！？」
エアバニー「話は後だ！とにかく急ぐんだ！！」
そう言っている間に見る見る地下にあった建物からその上空へと明るい緑色の光の壁に包まれていく。。
光に飲み込まれまいと必死に走ってようやく池の所の出口に差し掛かった時、それは起きた。
言葉にならない衝撃波と共に天に向けて光の柱がその緑色に輝く光の壁の内側に上がったのだ。
緑色の光の壁がなければこの辺り一帯は消し飛んでいたであろうそのエネルギーの塊は、すべての物の質量を軽々と消し去ってカプセルの天井を突き破って空の彼方へ消えていった。
そのエネルギーが通った後には、空間が真空になり今度は周りの空気を引きずり込んで多数のかまいたちが起きて空には轟音が鳴り響く。
しかし、地上十メートルぐらいは緑色の光の壁がまだ少し残っていてその被害も免れた。
そして全ての光が消えた後、エアバニー達が振り返ると、さっきまで自分達がいた場所には、底の見えない円筒状の大穴がポッカリと空いて地の底まで続いていた。
この地区の辺りのカプセルの外はこの頃、絶えず霧が出ていた。
しかし、遥か上空まで突き抜けた光はそんな霧も全てを消し去って、その穴からは眩いばかりの星々が見えていた。
剛本「そ、空が。。。見える。。何だあのキラキラとしたものは？」
小町「きれい。。。」
そう、この時代の人々は星を知らなかった。
その場にいた者たちはしばしその光景に目を奪われる。
するとしばらくして、その星々の光の中から光が一筋、流れ星の様にカプセルの中へ飛んできた。
オレンジ色に輝くその『何か』は上から高速で入ってきてそのまま穴の中に消えた。
エアバニー「何！？」
エアバニー：何だ？今のは？
そしてまた輝く星達も霧の渦に姿を消してゆく。
エアバニーも自分の手が震えているのがわかったがイ特の長として自らを奮い立たせる。
エアバニー「皆、無事か！？すぐに点呼を取れ！」
その傍らで沢田レポーターは上空を見上げて腰を抜かしたのか座り込んだまま固まっていた。
それもその筈である。
カプセルの天井に穴が空いたのだ。
この付近のカプセルの外の霧は一時間に50シーベルトという猛烈な放射能の霧だ。
外に出れば普通の人間は10分と保たずに死亡する。
それが天井に幅数十メートルの大穴だ。
間違いなくそれは死の予告を意味していた。
カメラマンは既に機材車に走っていた。
しかし、仮に車まで辿り着いたとしてもそれが手遅れだと言うことは明白だった。
カメラマンもいなく、既に伝える相手もいないのに沢田はカプセルに空いた穴からなだれ込む霧を見ながらつぶやいた。
沢田レポーター「じ、実況の、沢田。。です。。み、みなさま。。ご覧いただけ。。ます。。でしょうか。。？」
沢田レポーター「。。私。。ここで、死ぬんだ。。」
そう言って沢田は泣き崩れた。
その周りを慌ただしくイ特隊員が
退避していく。
エアバニー「放射能への耐性能力を持たない者を優先で車に下がらせろ！」
対イシュタラ組織であるイ特の車両は全て放射能対策が施されている。
エアバニーは腰が抜けて絶望する沢田を見つけて
エアバニー「諦めんじゃねぇ！」
と、沢田を抱えてイ特の車の一つに放り込んだ。
エアバニー「そこなら大丈夫だ。じっと隠れて出てくんじゃぁねぇぞ。」
あまり突然の死の淵からの開放にきょとんとしてエアバニーを見つめる沢田。
沢田は自身の心の内に羨望にも似た想いが芽生えるのを感じた。
エアバニーはそんな沢田を後にして
エアバニー「『D』隊は俺に続け！穴の下に降りるぞ！残りの者はこの場で待機！」
『D』全員「了解！」
エアバニー「ナム！ここを頼む。」
ナム副長「はい。あまり無理をなされない様お願いしますよ。」
いつになくシリアスな雰囲気が漂う二人。
エアバニー「あぁ、ちょっと見てくるだけだ。」
徐々に放射能の霧で視界が悪くなる中、そう言ってエアバニー達は『大穴』の方に向かった。
大穴の暗闇の底にはオレンジの光、赤い光、緑色の光が三連星の様に光って見えていた。
