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9話 真実の告知

83区軍はラフムとモモイという二人の刺客をイ特に向けて放つ。


一万の軍勢を引き連れて二人が迫る中、特殊部隊DとPで不可解な出来事が多発していた。


一方、剛本はシュンイーとシュンイルという謎の赤色覚醒者に襲われて絶体絶命になっていた。

イシュタラ軍野営地、作戦司令部


山中に急ごしらえで建てられたプレハブの司令室。


そこにはバアル、かつてのイシュタルの級友ナズィとその恩師テミス、人魚の里の長のエリドゥとアルルの街の守護者アルルそして今回の本人たっての希望で作戦に参加した神殿議会長のヤムの姿があった。


部隊長の一人「各地で交戦が始まった様です。」


バアル「そうか。」


ヤム「バアル殿、戦闘に入る前に話ししておきたい事があります。」


バアル「うん?何だい改まって?」


ヤム「その前に人払いを。私とテミス先生、ナズィさんとエリドゥとアルルだけに。」


バアル「分かった。皆、席を外してくれ。」


10名程いた部隊長達は慌ただしく退席してゆく。


そして6人だけになった。


バアル「これでいいかい?」


ヤム「ありがとうございます。」


バアル「それで、その話というのは?」


ヤム「はい、今後戦う事になるエンキとエンリルについてです。」


バアル「母の旧敵であり、数々の厄災を生んだ張本人だ。何かあるなら何でも話してくれ。」


ヤム「バアル殿は彼らについてどの程度知っていますか?」


バアル「二人とも覚醒者だ。そして財力も権力もある。だが彼らとイシュタラが争っていたのは私が幼い頃だ。情報が不足している。」


バアル「昔の話ではかなりの手練れだと言うが随分経っている。今はどうなのだろうか?」


ヤムは無言で少し考えてから話始める。


ヤム「あの親子があれからどれ程の力をつけたのかは定かではありませんが、我々イシュタラにとって本当の問題はそこではありません。」


バアル「?」


バアル「どういうことだ?過去の恨みとでも?」


ヤム「ここで、私はあえて貴方の出自についてお話しておきたいと思って参上いたしました。」


バアル「私の。。。出自?」


テミス「ヤム君、ちょっと待って。まさかあなた。。。」


ナズィ「何を言おうとしているの?ダメよ!」


エリドゥとアルルも驚いて複雑な表情を浮かべている。


エリドゥ「ヤム議長、それは今必要な事なのか?いたずらに若様の心を揺さぶる気ではあるまいな?」


ヤム「すいません。皆さんの心配は分かりますが、バアル殿ももう子供ではありません。イシュタラの代表として今こそ事実を受け止めるべき時だと思います。」


ヤム「その上で戦いに挑むべきです。」


テミス「でも。。。何も今いわなくても。。。」


ナズィ達は不安げにバアルをじっと見つめる。


バアル「皆どうしたんですか?そんなに重大な秘密があるんですか?」


ナズィ「ええ。。。とても重要な事よ。あなたにも、アナトにとっても。。。」


バアルは息を呑む。


バアル「そうですか。。。」


バアル「これから大きな戦いになります。恐らく命をかけた。。。必要な情報は全て教えて下さい。」


バアル「隠し事があってはお互い命を預けられません。違いますか?」


テミス「バアル君。。。でもそれは。。。」


エリドゥ「若様。。。」


アルルは思い詰めたように無言だ。


元々不仲だったヤムとアルル。


アルルは剛本を使い、ヤムに対して反旗を翻そうとした事もあった。


ここでヤムに突っかからない事がよほどの事なのであろうとバアルは感じとった。


それに、ヤムと外海の魔神はイシュタラにとって大きな戦力だ。


何かあるならキチンと話をしておきたかった。


バアル「テミス先生、心配は要りません。私はもう先生に子供扱いされる歳ではありませんよ。」


ナズィ「。。。バアル君、本当にいいのね?」


テミス「ナズィまで、ちょっと待って!アルルもそれでいいの?」


アルル「。。。いつかは、話さないといけないと思っていた。私は若君わかぎみの意思を尊重する。」


テミス「アルルまで。。。」


バアル「構いません。ヤム、続けてくれ。」


ヤム「。。。分かりました。」


テミス「ヤム君!」


バアル「先生!」


バアルは黙って首をふる。


テミスは不服そうだがもうこれ以上止めることもできなかった。


ヤム「単刀直入に申し上げます。」


しんとして、全員に緊張が走る。


ヤム「我々の敵エンリルは貴方がた兄妹けいまいの実の父親にあたります。」


バアル「は?」


空気が固まる。


バアル「な、何を言っているんだ?」


ヤム「もう一度言います。貴方とアナト殿は我らが敵エンリルと。。。イシュタル様の間に産まれた。。。いや、産まされた子です。」


バアルの脳裏に稲妻のように衝撃が走った。


とても信じられる話ではなかった。


ヤム「イシュタル樣を含め、我々がまだ奴らの実験体だった頃の話です。」


ヤム「エンキは特出した覚醒者であるイシュタル様の遺伝子をアヌの血を受け継ぐエンリルと実験的に交配させようとしたのです。」


ヤム「そうして貴方達が『作られた』のです。」


ヤム「エンキには心がありません。全ては己が研究の為、サークルアンデットのやりようを見てよくお分かりでしょう?」


バアル「そ、そんな。。。いや、まさか。。。」


ヤム「その後我々はエンキの元から脱出し、やがて貴方が産まれるとイシュタラの大半の者は貴方達を王子と姫として認めて心の底から祝福しました。」


ヤム「しかし、そうでない者も沢山いました。わだかまりが消えない者たちが。」


ヤム「実験体の時代の地獄が心に深く突き刺さって割り切れない者たちがいたのです。」


ヤム「私はそれを良しとしない者たちがいずれ内乱を起こすことを憂いて、彼らを連れて『外海の魔神』を作りました。」


ヤム「そして長くイシュタラの国の外でエンキ達と戦いました。あくまで我々はイシュタル様の為のみに戦うのだと。」


バアルは言葉に詰まった。


バアル「。。。テミス先生もナズィも、議員達も。。。みんな承知だったのですか。。。?」


テミス「ええ。」


ナズィ「それでもあなた達はイシュタルの子よ!それは誰もが認めてるわ!」


バアル「そうですか。。。」


バアル「本当。。。なのだな。。。確かに、思い起こしてみれば、思い当たるフシはある。」


ナズィ「バアル君。。。でも、それでもイシュタルはあなた達を心の底から愛していたわ!エンリルなんか関係ない!」


バアル「ええ、それは分かっています。。。」


バアル「この事はアナトは。。。?」


ヤム「はい。もちろん知りません。」


バアル「そうか。。。どうか、この先も知らせないでほしい。」


ヤム「分かりました。」


バアル「。。。頼む。」


ヤムはバアルの目を見つめて何も言わずにうなずいた。


ヤム「イシュタル様亡き今、魔神たちは死に場所を求めています。」


ヤム「そして今こそ、貴方が真の王たるを魔神たちに見せる時です。」


ヤム「どうか、彼らに生きる道を示して下さい。」


バアル「私に出来るだろうか?」


ヤム「我が命にかけてもお手伝い致します。」


その時だった。


突然そこに紫色に輝く稲妻が落ちてきたのは。



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