23話 忍法壁地面
イ特内部に近隣の83区の工作員が入り込んでいる可能性を疑ったエアバニーは特殊工作部隊『H』のリーダー城戸サスケにその調査を頼んでいた。
帰還したサスケはイ特内でも盗聴の恐れがある為に口寄せした忍者犬トントンマルを使ってエアバニーを幻術にかけ、その中で調査報告をした。
その内容は、エアバニーの盟友でありイ特副長のナムがスパイであると言う事を示唆するものだった。
剛本を警戒する敵の動向にエアバニーは直感的に小町の危機を予感する。
エアバニー「緊急事態だ!ここを通せ!」
警備員「いや、いくら貴方でもそれは困ります。。。」
エアバニー「分かんねー奴だな!ぶん殴ってでも押し通るぞ!?」
警備員「い、いや。。。そう言われましても。。。」
永遠と繰り返される押し問答。
いかにエアバニーと言えど何の令状もなしに隔離病棟にいきなり押し入ることはできずにいた。
病棟の中からも防毒マスクをした集団が心配そうに沢山出てきて入り口を塞いでいる。
彼らはそんな表情とは裏腹に不測の事態を想定して手には銃器が握られて入る。
無理に入るには一戦交えるしかない状況だ。
エアバニーはそれを見てすかさずサスケに指示を出す。
エアバニー→サスケ:サスケ、分からないように隠密で中に潜入しろ!
サスケ→エアバニー:承知したでござる!
しかし、快諾したサスケは何故か姿を消さずにそのまま垂直の壁を地面の様にスラリと立つとそのまま走って登り始めた。
サスケ「忍法壁地面の術!ニントットニントットニントットニンニンでござる!」
エアバニー「うおい!!どこが隠密だ!」
警備員の一人「と、止まれ!止まらないと撃つ!」
慌てた警備員は思わずサスケの方にその銃口を向ける。
エアバニー「ま、待て!早まるな!」
しかし、エアバニーが止める間もなく一発の銃声がその場に鳴り響いた。
同時にサスケの姿が宙に舞い、ドサリとエアバニー達の目の前に落ちてきた。
エアバニー「サスケ!!」
慌てて駆け寄るエアバニー。
しかし、サスケが落下したその場所には人の胴体ほどの丸太がゴロリと転がっているだけ。
エアバニー「これは?」
トントンマル「変わり身の術。」
エアバニー「変わり身の術?」
トントンマル「御主人様はあの丸太を上に向かって投げただけだ。それを皆は御主人様だと思って攻撃した。」
エアバニー「ということは。。。」
トントンマルは頷く。
トントンマル「。。。」
そして急に黙り込むトントンマル。
エアバニー「?」
変に思ってよく見るとトントンマルも木彫りの犬にすり替わっていた。
エアバニー「おいおい。。。マジか。。。」
サスケ達の忍術に付いて行けずに戸惑っているとそこにサスケから直接会話(SP)が入る。
サスケ→エアバニー:隊長上、隔離病棟への潜入に成功したでござる。小町殿の部屋はどこでござるか?
エアバニー→サスケ:や、やるじゃねぇか。ランクB以上の適合者は地下だ。しかし認証付きの非常階段か専用エレベーターしか降りる道はない。何か手はあるか?
サスケ→エアバニー:ならば影を進むのみでござる。
サスケはそう伝えるとトントンマルと共に自身の影の中へ消えていった。
エアバニー:アイツ。。。意外となかなか頼りになるよな。。。
などどエアバニーが感心しているとさらにそこに後から追いかけてきた剛本がやって来た。
剛本「隊長、これはなんの騒ぎですか?」
エアバニー「ご、剛本?なんでお前が?」
剛本「あれだけ派手に飛び出して行けば誰でも気が付きますよ。それよりこれはどういう事ですか?まさか小町に何か。。。?」
エアバニー「え!?いや、小町は関係ない!全く無い!」
慌てて取り繕うエアバニーに剛本は疑いの表情を浮かべる。
剛本「ではこれは何の騒ぎですか?」
落ち着いた声で語りかける剛本だったがその声とは裏腹にその全身からは赤いオーラが溢れ出してきていた。
それを見て隔離病棟の職員や警備員達がどよめく。
「おいあれは。。。」
「あ、赤いオーラ。。。まさか。。。」
「あれはティアマトの?」
思わず後ずさりする者もいる。
エアバニー「お、おい!はやまるな!」
エアバニー→剛本:事情を説明する。落ち着いて聞け。いいな?
剛本は表情を変えることなく無言で頷くとオーラを収めた。
ほっとする間もなくエアバニーは頭をフル回転させる。
小町のことで剛本が取り乱しでもすれば赤色覚醒を果たした剛本を抑えられる人間などイ特にはいない。
普段の剛本は誠実で筋の通った男だが小町のこととなると必要以上にむきになる事がある。
エアバニー:厄介だな。。。俺の不安が的中してなければいいが。。。
剛本→エアバニー:何ですか?事情って?
サスケ→エアバニー:隊長上、小町を見つけたんですが。。。
エアバニー→サスケ:それが。。。心臓が。。。動いてないみたいでござる。。。
エアバニーは愕然とした。
エアバニー→サスケ:な、何だと。。。?




