26話 新たな命
イシュタルの陣痛に対応出来る者がいない中、刻々と『その時』は近づいてきていた。
そんな中、胎児のへその緒が首に巻き付いている事に気が付いたアステリア。
ナズィは困り果てて施設のAIであるアマクサに相談した。
ナズィ「アマクサ!その方法、詳しく教えてくれる?」
『わかりました。まずアステリアさん、イシュタルさんの状態をスキャンして下さい。』
アステリア「え?スキャン?イシュタルの状態を診ればいいのね?」
『あなたの青く光る眼はあなた自身が持っていた気功の力にイシュタルさんのティアマトのオーラが作用して得られた全く新しい能力です。』
アステリア「気功。。?」
アステリア:それってゲームとかで出てくるやつかな?
アステリアはその時、真っ白いヒゲを生やしたアジア系のおじいさんを想像した。
どういう訳か太極拳をやっているイメージだ。
しかし、それは全く関係なかった。
『将来的には医療や戦闘に於いても非常に優秀な能力になるでしょう。』
アステリア「戦闘に?」
アステリアは格闘ゲームのカンフー使いになった自分を想像した。
その自分はチャイナ服に付けサンタの様な白い髭をつけて酔拳の型をしている。
アステリア:ひょほー!ヒック!
アステリア:ふぉっふぉっふぉー!
その想像の中でアステリアはひょうたんを腰にフラフラと酔八仙拳の何仙姑の構えをしていた。
しかし、今それは本当に全く関係がなかった。
ナズィ「アステリア、そのポーズは何?」
無意識に何仙姑のポーズをとってしまっていた。
アステリア「え?いや、何でも!何でもないっ!」
ナズィ「どうしたの?顔が真っ赤よ?」
アステリア「え!?私、酔っぱらってないわ!」
ナズィ「。。。いや、誰もそんな事聞いてないから。。。」
アステリア「そ、そうよね。。。ごめんなさい。。。」
ナズィ「アステリア?どうしたの?スキャンってやつ出来るの?」
アステリア「え?酔拳?」
ナズィ「は?」
ナズィもそろそろさすがに呆れ顔になっきた。
ナズィ「アステリア。。。スイケンじゃないわ。ス・キャ・ン!出来るのって聞いてるの!しっかりしてよ!」
アステリア「あ、あぁ!そ、そうね!任せて!」
むしろこんな時代まで格闘ゲームに酔拳が残っていることの方が驚きだ。
アステリアは首をブルブル振ると自分の頬をピシャリと叩き、一度酔拳の事は忘れてイシュタルに集中した。
するとアステリアの目が再び青く光を帯び始めると再びアステリアの目の前の世界が変わる。
そしてアステリアがその目で見るとイシュタルのお腹の赤ちゃんの状態が手に取るように分かった。
アステリア「見えたわ。」
『それでは、アステリアさん。イシュタルさんに直接会話(SP)をする要領でそのイメージを渡してください。』
アステリア「え?何それ?ちょっと分からないんですけど。。?」
『分かりました。それではこちらからお手伝いします。』
アマクサがそう言うとアステリアの頭の中になにか波紋の様な波が直接入っくるのが分かった。
アステリアは急に顔色が悪くなりフラフラと壁に手をつく。
アステリア「な、何これ?。。。頭の中に何か入ってくる。。。」
ナズィ「ちょっとアステリア?大丈夫?」
アステリア:き、気持ち悪い。。。フラフラする。。。でもイシュタルと赤ちゃんの為に頑張らなくちゃ。。。
アステリアはフラフラしながらも何とか倒れないように謎のポーズで踏みとどまった。
そう、それは空手で言うところの四股立ちに樽を抱えた様な姿であった。
そうしてしばらくそのまま耐えていると頭の中にイシュタルの声が聞こえてきた。
イシュタル→アステリア:アステリア、ありがとう赤ちゃんの状態手に取る様にわかるわ。
その瞬間、嘘のように気持ち悪さが晴れて全てがクリアな感覚に包まれた。
アステリア→イシュタル:イシュタル?声が聞こえてきたわ!すごい!
イシュタル→アステリア:ありがとう。
その声がアステリアの頭に響いた途端に目の間が優しい緑色の光に包まれる。
そして光の中から二人の産声が聞こえた。
そして光がおさまり気がつくと目の前でイシュタルがベッドに座っていた。
優しく微笑むイシュタルの両腕には二人の赤ん坊が抱かれている。
イシュタル「やっと会えたね。苦しかったでしょ?頑張ったね。」
まだ慣れない手付きで二人を抱きかかえたイシュタルはこの日
二人に「バアル」と「アナト」と名付けた。




