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20話 ネグリジェのオッサン

イシュタルから溢れ出たティアマトのオーラは軍の収容施設を一瞬で崩壊させて巨大なクレーターが出来た。


軍人達はカエルに変化させたが助けた人達はクレーターの上空に浮かぶ現状にパニックになった。

「きゃぁぁ!!!」


「な、何だ!?」


「うわわわー!」


人々は恐怖におののいた。


眼前に突然赤々と燃えるマグマの広がるクレーターが現れて自分達がそのはるか上空にいる事に気がついたからだ。


訳もわからず突然そんな所で浮いていたら冷静で居られる訳がない。


しかしそんなパニックに陥った人々の中に一人冷静に佇む(おとこ)がいた。


ウルク孤児院の院長、桃井だ。


彼は決してこの状況を理解している訳ではなかった。


ただできる事がないので呆然としていたのだ。


そんな桃井の視界にイシュタルが入った時、彼は思わず叫んだ。


桃井「イシュタアールルゥーウッ!!」


空を割くような大きな声だった。


イシュタルはハッとして桃井の方を見ると涙を流しながらイシュタルを見つめる桃井がいた。


ヤム「な、何ですかあの変なオジサンは?知り合いですか?」


イシュタルは無言でコクリとうなずくと桃井の方へすっと飛んでいった。


ヤム「え?」


慌てた様子で桃井の近くまで来るとイシュタルの表情はまた険しくなった。


イシュタル「桃井、ナンナとリリイが。。。」


桃井はイシュタルの表情を見てただならない雰囲気を察した。


イシュタル「。。。私が来た時にはもう。。。」


イシュタルの瞳から大粒の涙が溢れる。


桃井「そうか。。。イシュタァル。。。すまなぁい。。。父さんはぁ無力だった。。。」


ヤム:ゲッ!!!父さん!!!???あれが!!!???


イシュタル「ごめんなさい。。。私のせいで。。。」


桃井「イシュタァル。。。誰もお前のせいだなんティ。。。」


桃井も涙を浮かべながら必死にイシュタルをいたわる言葉を探している様だった。


しかし、囚われた時のままの衣服の桃井は残念なネグリジェだった。


ちなみにこの桃井は性同一性障害などではない。


心は完全な男だ。


否、漢だ。


にもかかわらずいつも変わった格好をしているのは彼が全ての価値観や美を平等に愛する事こそ神への信仰だと信じて疑わない真の変態だからである。


自称フェミニンなこのネグリジェも彼にとっては信仰の証なのだ。


しかし、如何なるものも分け隔てなく愛する彼を慕う信者は意外に多い。


とはいえイシュタルは慣れて麻痺しているが他人から見ればかなり怪しいオッサンである。


ヤムは桃井のその異様な雰囲気にどうしても馴染めなかった。


ヤム:あ、あのキモいオッサンが本当にイシュタル様のお父様なのか??


マジマジと桃井の顔を見る。


ヤム:に、似ても似つかねぇ。。。きっと何かの間違いだ。。。


そんな事をヤムが思っている内にイシュタルはいつの間にか全員をクレーターの外縁に着地させていた。


ようやく地面に着いた人達は腰を抜かした様に座り込んで呆然としていた。


クレーターの近くは溶岩からの熱波で暖かく防寒が要らない程だったがイシュタルは溶岩の爆発の可能性も考えて自らのオーラでその一帯を包んだ。


そんな中、テミスは相変わらず肝が据わっていて落ち着いていた。


ナノマシーンの適合レベルもヤム達程ではないがそれなりに高いようだ。


彼女はイシュタルと桃井の方へ歩いてくると桃井に軽く頭を下げた。


テミス「桃井さん、ご無沙汰しております。」


桃井も丁寧に挨拶をする。


ヤム:先生もこのオッサンと普通にしてる!?イシュタル様の街ではこれが普通なのか!?


ヤムは目を凝らして桃井を見る。


立派なヒゲのムキムキのオッサンがネグリジェを着て立っている。


ヤム:いや、そんな筈ない。。。俺の行ってた学校にこんなのが来たら通報されるレベルだ。。。


しかし、テミスもいたって自然だ。


実は最初はテミスもなかなか馴染まなかった一人ではある。


ナズィがイシュタルをチアリーディング部にスカウトした際に何度かイシュタルのいるウルク孤児院にテミスは来ていた。


部を掛け持ちする事を家族に説明する為だ。


イシュタルは学校では桃井の事をひた隠しにして来たがそうしてこのテミスだけは例外となった。


桃井「これは、チア部のテミス先生ぇぃ。。どうもイシュタァルがお世話にぃなっておりもぅす。」


テミス「再会に水をさして申し訳ないのですが、少しイシュタルに話を聞いても宜しいですか?」


桃井「Oh。。ドゥぞモチルンです!カモン!」


テミス「ありがとう。」


テミス「イシュタル、取り込み中すまないが私達に状況を説明してくれないか?ここにいる全員、現実についていけてないんだ。」


イシュタル「はい。。」


テミス「まず、ここは一体どこなの?あの軍の建物と兵士達はどこにいったの?」


イシュタルは少しためらいながら答える。


イシュタル「施設は私が消し去りました。ここは皆さんが捕まっていた施設のあった場所です。」


テミスはそれを聞くと驚いて聞き返す。


テミス「そ、それじゃぁこの大きなクレーターをあなたが作ったって言うの?そんなまさか!?」


狼狽えるテミスにヤムは得意気に言う。


ヤム「当たり前さ!イシュタル様のティアマトのチカラは最強なんだ!」


イシュタルはそんなヤムに少し驚いて


イシュタル「ヤム、そんな言い方をしては先生に失礼よ!」


と、たしなめた。


するとヤムはシュンとして


ヤム「あ、はい。。ごめんなさい。。」


と、素直に謝る。


ヤムはイシュタルだけには弱いのだ。


テミスは改めてその大きなクレーターを見てあ然とする。


イシュタル「先生?」


テミス「え?あ!あぁ。。あの。。そ、それでこれから私達はどうするの?」


そう言われてイシュタルはハッとした。


アルル達と一緒に。。。と思ったその時、ヤムの桃井を見ている視線が明らかに桃井の事を怪しんでいる感じだったからだ。


イシュタル:そうだった。。。連れて帰ったら皆に桃井を紹介しないといけない。。。


イシュタル:どうしよう。。。


テミス「どうしたの?何か問題?」


イシュタル「え?い、いえ。。。あの。。。」


イシュタル「あ!そうだ!」


テミス「え?何?」



イシュタルは何かひらめいたみたいだった。

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