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18話 自責

ナノマシーンを弱体化させる気体を吸ってチカラをなくしていたヤムは軍の収容施設内で知り合ったイシュタルのチアリーディング部の顧問、テミスの助けもあり何とか少しチカラを取り戻してイシュタルに連絡をつけた。

鼻を伸ばした顔を見られたヤムは赤面しながらも慌てて鼻を縮めた。


そしてイシュタルにこの部屋の空気を吸ってはいけないという事を伝えようとした。


ヤム「イシュタル様!ここは危険です!ここの空気を吸うとナノマシーンのチカラが。。。」


しかしヤムがそう言いかけるとイシュタルは少し微笑んで遮るように顔を近づけて囁いた。


イシュタル「大丈夫。」


ヤムは少し頬を赤らめながらキョトンとしてイシュタルを魅入ってしまうとイシュタルはヤムのおでこにそっとそのか細い指を触れた。


すると、その指先は優しい緑色に輝いてヤムを照らす。


テミスは突然の出来事に自分の目を疑った。


テミス:イ、イシュタル?。。。いつの間に。。。?


イシュタル「ヤム、置いてきた合唱部の人達の居場所をイメージして。」


ヤム「は、はい。。」


イシュタルに対してヤムはとても素直だ。


すぐに目を閉じてイシュタルに言われた通りここまでの経路を思い出し、ヤムがこの施設へ来て初めに知り合った合唱部のメリテ達の事を思い浮かべた。


すると突然目の前の景色が変わってメリテ達が収容されている牢へ全員瞬間移動していた。


テミス「こ、ここは。。。!?」


テミスはあまりの出来事に頭がついて行かず只々驚くばかりだった。


イシュタルは合唱部の仲間、メリテとアステリアに気がつくとすぐに彼女達の拘束具を解いた。


解いたと言っても手で脱がせたのではなく見ただけでイシュタルのオーラに包まれて拘束具が跡形もなく消えたと言う感じだ。


拘束が解かれたメリテとアステリアはイシュタルに気がつくとフラフラと立ち上がった。


メリテ「イシュタル?イシュタルなの?」


そしてイシュタルにしがみついて泣き崩れた。


メリテ「うわあああん。。。」


アステリア「こわかったよぉぉ。。。」


イシュタルはそんな二人を優しく抱きしめた。


イシュタル「もう大丈夫よ。」


しかしヤムは不安そうだ。


異変に気が付いてすぐに追手が来るかも知れないからだ。


ヤム「イシュタル様、早く隠れないと。。。」


イシュタルはいつもの様に周りの空間に細工をして周りを見えない様にしていたが、逆にイシュタルの作った空間の外から見れば今ここには誰も人居ないように見えている。


恐らくさっきのヤムの騒動と相まってここでも脱走があったと思われるに違いない。


ヤムが心配したのもつかの間、瞬きする間もなくまるで映画のシーンが切り替わるかの様にまた場所が変わった。


そこはここへ収容されて最初に何かの検査機をかざされてクルーとエーコー達がメリテとアステリアと引き離された建物の中だった。


ヤム「ここは。。。!」


メリテ「クルー達がどこかへ連れて行かれた場所。。。?」


イシュタル「ここなら少しいても大丈夫でしょう。ヤム、ここで話をしましょうか。」


その言葉を聞いてヤムはドキリとした。


ウルク孤児院のナンナとリリイが既に処刑されていた事をイシュタルに話さなければならないと思うと胸が痛んだ。


ヤム「は、はい。。。」


と、返事はしたもののなかなか言葉が出ない。


ヤム「。。。」


沈黙が続いた。


そこに


テミス「イシュタル、久しぶりね。ちょっといいかしら?」


イシュタルとナズィの所属するチアリーディング部の顧問、テミスが見かねて話に入って来た。


イシュタル「テミス先生、ご無沙汰しています。あの、ここでナンナとリリイという女の子を見かけませんでしたか?」


テミス「。。。いたわ。」


イシュタルの表情がパァッと明るくなる。


イシュタル「本当ですか?どこで見ました?今あの子達はどこにいますか?」


しかし、イシュタルの真っ直ぐな視線にテミスは辛そうに顔をそむけた。


それを見てイシュタルの表情は一気に陰りを見せる。


テミス「残念だけど。。。あの子達はもう。。。」


イシュタル「え。。。まさか。。。?」


不安そうなイシュタルを見るとヤムの胸も引き裂かれそうに辛かった。


テミス「。。。私達の一つ前のグループで処刑された。その男の(ヤム)のおかげで私達は助かったけどこっち側で生き残ったのは私達だけよ。後は全員殺されたわ。。。」


イシュタル「え。。。?ウソ。。。?」


イシュタルの顔は真っ青になる。


イシュタル「そ、そんなはずないわ。。。」


ヤム「イシュタル様。。。」


イシュタルはフラフラと膝を落として床に手をついた。


イシュタル「ウソ。。。ウソよ。。。」


イシュタル「私が慎重になったから。。。?」


イシュタル「私がここに来るのを後回しにしたから。。。?」


自然とイシュタルの声が荒くなる。


イシュタル「私のせいだ!」


ヤム「イシュタル様!」


ヤムはイシュタルの肩を抱きしめてなだめようとしたがイシュタルは今にも発狂しそうな勢いだ。


イシュタル「私がもっと早く動いていれば!」


テミス「イシュタル、自分を責めるな!悪いのはお前じゃない!」


イシュタル「ナンナ、リリイ。。。」


イシュタル「イヤ!!嫌ああああああ!!!」


ヤム「イシュタル様!!!」


イシュタルは激しい激情にかられて叫び声と共に全身からかつて無いほど大量のオーラを放った。


その光は建物を突き抜けて数キロ四方に及んだ。

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