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7話 ナズィの恋

T-SHOCKか一部の『感染者』の個人情報を公開した。


そのリストを見たナズィは自分の名前があったことよりもある事に驚いた。

ナズィ:合唱部の人の名前があるのにラフム先生の名前がない。。。


ナズィ:ラフム先生が捕まった!?


その懸念に気がついたと同時にナズィの胸がギュッと締め付けられる。


ナズィ:ラフム先生。。。


そしてナズィの脳裏にはラフムの姿が浮かんでいた。




眩しい程に真っ白な背景にぼんやりと浮かぶガタイのいいおっさんのシルエット。


そう、それはナズィにとって忘れられる筈もない『あの時』のラフムの姿。


つやつやの黒髪リーゼントにモッサリと蓄えられたエレガントな口髭。


そして透き通るように抜けてくるダンディな声がナズィ心に響く。



「結婚しようナズィ。君は僕が守る。」


「僕は、君を。。。君を大切に思っている。」



するとあの日の情景が鮮明に蘇る。


上下革のライダース姿の胸元からは例のやつらが見えている。


そしてどこか寂しそうなその瞳はまっすぐとナズィの方を向いていた。


その眼差しに居た堪れなくなって気がついたら恥ずかしさの余り走り出していた。


ラフム先生を見たのはそれが最後。。。


思わず逃げ出してしまった。


このまま会えないなんて嫌だ!


そう思うと居ても立っても居られずにエルヴィンの元へ駆け寄った。


ナズィ「エルヴィン!ラフム先生が!ラフム先生の名前がないわ!」


ナズィ「助けに行かなくちゃ。。。」


エルヴィンはそんなナズィに少し困った様子で


エルヴィン「うーん。。。その人は君にとってそんなに大事な人なのかい?」


と、さもあまり乗り気でない感じだ。


しかし、『大事な人』と言われるとナズィは急に赤面してモジモジしながら


ナズィ「わ、わ、私のフィ、フィ、フィィ。。。ょ」


エルヴィン「私のフィッフィフィーってなんだよ?」


エルヴィン「あと、顔がキモいよ。」


ナズィの心にエルヴィンのデリカシーのない一言がグサリと刺さる。


ナズィ「フィッフィフィーじゃあない!!」


エルヴィン「じゃ、じゃあ何?なんのこと?」


ナズィ「何って。。。その。。。あれよ!」


エルヴィン「あれって何?」


ナズィ「。。。。ンセよ」


エルヴィン「。。。は?」


ナズィ「だから!その。。。わたしの。。。ィアンセのことよ!」


エルヴィン「イアンセキュアノット?」


ナズィ「はぁ?何それ?」


エルヴィン「こっちが聞きたいよ。」


ナズィはこの時、フィアンセと言いたかったがその一言がなかなか大きな声で言えない程に彼女の心は純心だった。


氷河期の中でカプセル生活を強いられているこの時代、人口増加は命取りだった。


きちんとした婚姻関係にあるか正式に婚約関係になっていなければ恋愛自体が不謹慎な事とされていた。


婚姻届や出生届の受理も条件や制限がありそれを満たしていないと受理されない。


すべて区の許可が要るのだ。食料不足が続く中、刑も厳しい。違反すれば区を追放になりかねない。


カプセルからの追放、それはすなわちそれは、死を意味した。


それだけにこの時代の男女は皆そろって純心であった。


そんなナズィの話を一通り聞いてからエルヴィンはナズィをなだめた。


エルヴィン「まあ、落ち着けって。冷静に考えてみろよ。」


ナズィ「落ち着いてなんかいられないわ!私もイシュタルみたいに助けに行きたいの!」


エルヴィン「拘束されているかいないかわからないじゃないか。」


ナズィ「だって探した時ラフム先生どこにもいなかったわ。。。絶対捕まってるのよ。」


エルヴィン「どこに?」


ナズィ「。。。軍?ウルク孤児院の人達もそうだったし。」


エルヴィン「それは違うんじゃないかな?」


ナズィ「どうしてよ?」

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