5話 クレピオス
着ぐるみの集団の正体は異形のモンスターだった。
その中で正体が見つかってしまったクレピオス。
彼はエリドゥの「私達の事を知った以上、こいつを帰す訳にはいかないわ。」という言葉に震え上がった。
クレピオスは目の前の異形の集団に自分は殺されてしまうのかと思った。
それだけ周りの被験者達の姿が人ならざる者に見えたのだ。
しかも、『帰すことが出来ない』と言われたのである。
殺されると思っても仕方が無い事だった。
しかし、アルル達の説明によってその誤解はすぐに解けた。
次にクレピオスは自分のお尻をコンパスの針で刺したと言うエリドゥに目を奪われた。
その少女はクレピオスの目の前で下半身が魚の様に変わった。
『人魚だ』
そう思った。
麗しい程に美しい人魚そのものだった。
なのに、ちっとも優しさを感じられない。
人魚が優しいというのも偏見かもしれないがこの子からは殺気の様なものすら感じられた。
お尻を刺した事に特に悪びれる様子もない彼女にクレピオスは少し不満を覚えていた。
そこで少し牽制を試みるが。。。
クレピオス「それにしてもコンパスで刺すのは酷いですよ。。」
エリドゥ「ふん、スパイかと思って試しただけよ。」
クレピオス「こんなひ弱なスパイがいますか?」
エリドゥ「あなたのお尻、トーフの様に柔らかったわ。チーズちゃんじゃなくてトーフちゃんにでも名前変えたら?」
クレピオス「勘弁して下さいよ。。」
と、こんな感じでとにかく感じが悪い。
クレピオスはトーフというものを知らなかったが取り敢えず苦笑いでごまかすしかなった。
それに比べてアルルは紳士的だ。
丁寧に事情を説明してくれた。
クレピオス自身、軟禁状態ではあったが同時に彼らの境遇に深く心を痛めた。
T-SHOCKが作り上げた『難病』という名の壮大な人体実験に医療関係者として本当に腹が立ったのだ。
それがすべての始まりだった。
話をする程にクレピオスの中で被験者達への感情が高まっていく。
クレピオス「許せない。。。こんな事がまかり通っていい筈がない。」
アルル「ご理解、感謝します。」
クレピオス「事情は解りました。私も病院側の人間としてあのニュースは変だと思っていたんです。」
アルル「おお、それでは医療関係者ならこの誤解を晴らせる可能性があるのでしょうか?」
クレピオス「いえ、それは難しいでしょうね。。。殆どの病院の上層部はT-SHOCKと癒着していますし。。。個人ではとても。。。」
アルル「そうですか。。。」
クレピオス「。。。お力になれずすいません。」
アルル「いえ、貴方が謝ることではないですよ。むしろ巻き込んでしまって申し訳ない。」
クレピオス「また戻ることが出来たら難病科の知人に感染拡大しない証明を作って発表できないか相談してみます。正義感の残っている医療機関もきっとどこかにある筈です。」
アルル「ありがとうございます。協力者になって貰えるならなるべく早く貴方を戻せる様にイシュタル様に相談してみます。」
そう言われてようやく少しホッとしたクレピオスは話題を変える。
クレピオス「それで。。。ここは何処なんですか?」
アルル「詳しいことは言えませんが81区です。」
クレピオス「81区!?まさか!?」
クレピオスは又も心の底から驚いた。
移動したと言ってもせいぜい歩ける位の距離だろうと思っていたからだ。
クレピオス「ち、地球の裏側まであの一瞬で移動したというのですか?」
開いた口が塞がらない様子のクレピオスにエリドゥやウンマは得意げだ。
そこにまた誰も望まないニュースが飛び込む。
「アルル!大変だ!T-SHOCKが感染者リストを発表したぞ!」
アルル「何!?そ、そんな馬鹿な!?発表された感染者の人権はどうなるんだ?まさか皆の家族も!?」
「いや、それが。。。とにかく今から特別記者会見をするらしい!」
アルル「すぐつけてくれ!!」




